婚活アプリで出会う恋~幼馴染との再会で赤い糸を見失いました~
新しいプロジェクト(1)
遥斗にはお礼のつもりで、週末は家事を一切引き受けている。
家事の仕事は意外と奥が深い。
玄関をウェットモップで磨き、リビングのテーブルやイスをクロスで拭いて、キッチンのシンク回りやコンロ、換気扇の汚れ、お風呂の壁やバスタブの……。
とにかく、日曜日は朝から1日かけてピカピカに磨いた。
と言っても、遥斗は休日に自分で掃除をすることが多いせいか、ほぼきれいに保たれている。普段忙しく働いてるのに、自分で掃除するなんて、彼ってかなり律儀な性格なのかもしれない。
昔、躾けられたっていうけど……こんな風に育てた人なのだから、きっと素敵な親御さんなんだろうな。
遥斗のお母さんは、幼稚園時代に毎日会っているはずなのに、まるで記憶に残っていない。
出張中の遥斗が帰宅する前に、宅配された野菜やお肉を使い、肉じゃがと春きゃべつのみそ汁を作った。
夕方になってメッセージが届く。
『今夜は8時に戻る』
宣言通り、時間ピッタリに遥斗が帰宅。
お風呂に入り、さっぱりしたところで、一緒にダイニングテーブルの席に着いた。
「おっ、今夜は和食か!」
嬉しそうな声を上げる。
一日家事をしながら遥斗の帰りを待っていると、評価されるのはご飯の時ぐらいだから、どうしても感想が気になった。
肉じゃがを小皿によそると、箸でじゃが芋をひと口放り込み、ゆっくりと味わう。
「うまいよ。味がちゃんと染みてる」
「良かったぁ……。なんだか上司からジャッジされてる気分」
「そうか? それじゃ、里穂がキスでもしてくれたら、ボーナスでも支給するかな」
「また、そういうこと言う」
口をふくらませ、遥斗を睨む。
お互いが見つめ合い、つい一緒に笑い出した。
遥斗とこうして笑い合えるのも、あと少しなのかもしれない。そう思うと、じんわりと寂しさが募る。
「あれから、仕事は順調なのか?」
「うん。アプリをもっと安全に使いやすくするために、女子目線の企画を立ち上げることになったの。ここから少しづつ社内を変えて、働きやすい職場を目指そうと思って。
それより、このみそ汁、混合出汁で作ったんだよ。食べてみて」
遥斗はみそ汁を一口飲むと、真剣な表情で私に向き直った。
「里穂。以前話した新しいプロジェクトのことだが、今の仕事はそのまま続けてもらって構わない。
だから、3月3日の日曜、午前10時に正装をしてグランドパークホテルのロビーに来てくれ」
「えっ!? それって、もしかして他のスタッフとの顔合わせとか?」
「あぁ、そうだ」
「誰と会うの? それに、どんな仕事なの?」
矢継ぎ早に質問すると、遥斗は急に真顔になり、口を閉ざした。
「この件に関しては内密なことなんだ。だから何も教えられない」
仕事内容も秘密のまま、スケジュールだけ指定されるなんて。
遥斗が何を考えているのかよくわからない。
「そうだ。正装って、いったい何を着ればいいの?」
「服を用意するのは大変だろうから、俺が外商に頼んでおく」
「そ、そんなっ。私、高い物買う余裕なんて無い」
「プレゼントだから、気にするな」
ますます何を考えているのか分からない。
遥斗は澄まし顔で、テーブルに出した食事をきれいに平らげた。
家事の仕事は意外と奥が深い。
玄関をウェットモップで磨き、リビングのテーブルやイスをクロスで拭いて、キッチンのシンク回りやコンロ、換気扇の汚れ、お風呂の壁やバスタブの……。
とにかく、日曜日は朝から1日かけてピカピカに磨いた。
と言っても、遥斗は休日に自分で掃除をすることが多いせいか、ほぼきれいに保たれている。普段忙しく働いてるのに、自分で掃除するなんて、彼ってかなり律儀な性格なのかもしれない。
昔、躾けられたっていうけど……こんな風に育てた人なのだから、きっと素敵な親御さんなんだろうな。
遥斗のお母さんは、幼稚園時代に毎日会っているはずなのに、まるで記憶に残っていない。
出張中の遥斗が帰宅する前に、宅配された野菜やお肉を使い、肉じゃがと春きゃべつのみそ汁を作った。
夕方になってメッセージが届く。
『今夜は8時に戻る』
宣言通り、時間ピッタリに遥斗が帰宅。
お風呂に入り、さっぱりしたところで、一緒にダイニングテーブルの席に着いた。
「おっ、今夜は和食か!」
嬉しそうな声を上げる。
一日家事をしながら遥斗の帰りを待っていると、評価されるのはご飯の時ぐらいだから、どうしても感想が気になった。
肉じゃがを小皿によそると、箸でじゃが芋をひと口放り込み、ゆっくりと味わう。
「うまいよ。味がちゃんと染みてる」
「良かったぁ……。なんだか上司からジャッジされてる気分」
「そうか? それじゃ、里穂がキスでもしてくれたら、ボーナスでも支給するかな」
「また、そういうこと言う」
口をふくらませ、遥斗を睨む。
お互いが見つめ合い、つい一緒に笑い出した。
遥斗とこうして笑い合えるのも、あと少しなのかもしれない。そう思うと、じんわりと寂しさが募る。
「あれから、仕事は順調なのか?」
「うん。アプリをもっと安全に使いやすくするために、女子目線の企画を立ち上げることになったの。ここから少しづつ社内を変えて、働きやすい職場を目指そうと思って。
それより、このみそ汁、混合出汁で作ったんだよ。食べてみて」
遥斗はみそ汁を一口飲むと、真剣な表情で私に向き直った。
「里穂。以前話した新しいプロジェクトのことだが、今の仕事はそのまま続けてもらって構わない。
だから、3月3日の日曜、午前10時に正装をしてグランドパークホテルのロビーに来てくれ」
「えっ!? それって、もしかして他のスタッフとの顔合わせとか?」
「あぁ、そうだ」
「誰と会うの? それに、どんな仕事なの?」
矢継ぎ早に質問すると、遥斗は急に真顔になり、口を閉ざした。
「この件に関しては内密なことなんだ。だから何も教えられない」
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「そうだ。正装って、いったい何を着ればいいの?」
「服を用意するのは大変だろうから、俺が外商に頼んでおく」
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「プレゼントだから、気にするな」
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