婚活アプリで出会う恋~幼馴染との再会で赤い糸を見失いました~
お礼とお詫び(7)
「私がしたことで、遥斗のこと、沢山傷つけちゃったかなって……」
「俺は逆に感謝してる。あの時、里穂にからかわれてなければ、鍛える努力もしなかっただろうし。こうして里穂に会うこともなかったから」
遥斗らしいセリフだけど、変な発想。
「それじゃあ……幼稚園時代、園庭で転んで大ケガしたこと。覚えてる?」
「あぁ、手を痛めた時か。大泣きしたことは覚えてる」
「手に包帯グルグル巻きで……あれって、私が遥斗を置き去りにしちゃったから……ケガするところも見てたのに、先生にも言えなくて。それで……ずっと……申し訳ないなって……」
当時のことを思い出し、何かがこみ上げ、視界がぼやけてしまう。
すると遥斗は急に席を立ち、座っている私の背後に回ると、後ろから抱きしめてくれた。
「もう気にするな。覚えているのは泣いてる場面だけだ。今は鍛えたおかげで、もっと強く里穂を抱きしめることができる。それから、こんなことも」
背後から遥斗の手が伸びて、テーブルにあるチョコを掴んだ。もう片方の手で私の顔を後ろに向けさせ、唇を重ねてきた。
遥斗が食べたチョコのかけらを、私の口へそっと押し込む。舌を絡めながら、肩を掴まれ、椅子から引き上げられるように立たせられた。
お互い立ったまま、私の口の中で溶けたチョコレートを遥斗の舌でかき混ぜられる。
「はうっ……」
甘く溶けていくチョコと、痺れ始めた体に蕩けそうになりながら、必死で遥斗の体を押し戻した。
「もう、やめてっ」
「もっと欲しそうな顔してるけど?」
「……遥斗、お願いがあるの。しばらくは、あなたの傍にいるから、その代わりこういう関係は……もうやめて欲しい」
いつも以上に真剣な態度が伝わったのか、遥斗がフッと力が抜けたように顔を緩ませた。
「――――わかった。里穂への復讐は、そろそろ終わりにするよ」
遥斗の低音が耳の奥まで響いて伝わる。
口の中にはとろとろに溶けたチョコの味と、遥斗の甘い感触がいつまでも消えなかった。
それから部屋で暖炉に薪をくべながら、他愛のない話をした。
しばらくのんびり過ごした後、チェックアウトして、車は都心へと向かう。
「せっかくだから、もう少しどこかへ寄ってから帰ろうか?」
「明日はお互い仕事でしょ。遅くなるから、もう帰ろう」
遥斗はさっき交わした約束も、気まずさも、まるで何もなかったかのように、自然に接してくる。
一方、私はすっかり意気消沈して、黙り込んでいた。
私が遥斗を拒否したことで、きっとこの関係は間もなく終わりを告げる。
車内では遥斗が気を利かせて、静かめなピアノ曲を掛けてくれていた。
レジデンスが見えて来た交差点で、赤信号になり停車すると、膝に置かれた私の手に、遥斗の手が重ねられる。
「里穂、俺の体はいつでも空いてるから、寂しくなったら甘えろよ」
「なっ!! 寂しくなんてならないし!」
突っぱねて断言すると、重ねてきた手を振りほどいた。
「無理するな。きっと俺が欲しくなる時が来るさ」
「なんて自信家なの!」
遥斗はニヤニヤしながらハンドルを切り、レジデンスの駐車場へと向かった。
「俺は逆に感謝してる。あの時、里穂にからかわれてなければ、鍛える努力もしなかっただろうし。こうして里穂に会うこともなかったから」
遥斗らしいセリフだけど、変な発想。
「それじゃあ……幼稚園時代、園庭で転んで大ケガしたこと。覚えてる?」
「あぁ、手を痛めた時か。大泣きしたことは覚えてる」
「手に包帯グルグル巻きで……あれって、私が遥斗を置き去りにしちゃったから……ケガするところも見てたのに、先生にも言えなくて。それで……ずっと……申し訳ないなって……」
当時のことを思い出し、何かがこみ上げ、視界がぼやけてしまう。
すると遥斗は急に席を立ち、座っている私の背後に回ると、後ろから抱きしめてくれた。
「もう気にするな。覚えているのは泣いてる場面だけだ。今は鍛えたおかげで、もっと強く里穂を抱きしめることができる。それから、こんなことも」
背後から遥斗の手が伸びて、テーブルにあるチョコを掴んだ。もう片方の手で私の顔を後ろに向けさせ、唇を重ねてきた。
遥斗が食べたチョコのかけらを、私の口へそっと押し込む。舌を絡めながら、肩を掴まれ、椅子から引き上げられるように立たせられた。
お互い立ったまま、私の口の中で溶けたチョコレートを遥斗の舌でかき混ぜられる。
「はうっ……」
甘く溶けていくチョコと、痺れ始めた体に蕩けそうになりながら、必死で遥斗の体を押し戻した。
「もう、やめてっ」
「もっと欲しそうな顔してるけど?」
「……遥斗、お願いがあるの。しばらくは、あなたの傍にいるから、その代わりこういう関係は……もうやめて欲しい」
いつも以上に真剣な態度が伝わったのか、遥斗がフッと力が抜けたように顔を緩ませた。
「――――わかった。里穂への復讐は、そろそろ終わりにするよ」
遥斗の低音が耳の奥まで響いて伝わる。
口の中にはとろとろに溶けたチョコの味と、遥斗の甘い感触がいつまでも消えなかった。
それから部屋で暖炉に薪をくべながら、他愛のない話をした。
しばらくのんびり過ごした後、チェックアウトして、車は都心へと向かう。
「せっかくだから、もう少しどこかへ寄ってから帰ろうか?」
「明日はお互い仕事でしょ。遅くなるから、もう帰ろう」
遥斗はさっき交わした約束も、気まずさも、まるで何もなかったかのように、自然に接してくる。
一方、私はすっかり意気消沈して、黙り込んでいた。
私が遥斗を拒否したことで、きっとこの関係は間もなく終わりを告げる。
車内では遥斗が気を利かせて、静かめなピアノ曲を掛けてくれていた。
レジデンスが見えて来た交差点で、赤信号になり停車すると、膝に置かれた私の手に、遥斗の手が重ねられる。
「里穂、俺の体はいつでも空いてるから、寂しくなったら甘えろよ」
「なっ!! 寂しくなんてならないし!」
突っぱねて断言すると、重ねてきた手を振りほどいた。
「無理するな。きっと俺が欲しくなる時が来るさ」
「なんて自信家なの!」
遥斗はニヤニヤしながらハンドルを切り、レジデンスの駐車場へと向かった。
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