婚活アプリで出会う恋~幼馴染との再会で赤い糸を見失いました~

春乃未果

ほどけない糸(1)

イベント当日の土曜日、ステージのある大規模なイベント会場を貸し切り、参加予定総数は500名を超えた。

第一部では、出会いを提供するお見合いパーティーを行い、マッチングを促進する。

第二部では、カップリングした人達が参加して楽しめる、アトラクション的なイベントやステージをもよおす。

イベントでは、協賛会社提供によるワインのテイスティングや、AIによる詳しい相性診断など、盛りだくさんの企画を予定している。
そしてステージでは、私にとって頭の痛いアプリの体験談発表などもある。

緊張の一日が始まった。
朝からイベントのスケジュール調整に追われたり、参加者にアプリの宣伝を行ったり、一息つく暇も無い。

実のところ、会社側は第1部のお見合いパーティーで、イベントを盛り上げるため、社員によるサクラを数組紛れ込ませている。
多少なりともカップルが成立しなくては困るのだ。
裏側を知ってしまうと、お見合いイベントも信用ならないとは思うけど、それ以上に結婚まで辿り着くカップルも数多く存在する。
こうしてアプリの宣伝に携わっているのだから、多くのカップルを結婚まで導きたいとは思っている。この部署に来たのも、そんな理由があったから。


休憩室で簡単なお昼を済ませ、午後からは、いよいよステージイベントの時間が迫ってきた。
顔を隠すため、頭からすっぽりと被るパンダの被り物が準備してあった。
司会は専門業者に依頼してあるから、あとは進行通りに話せばいい。

まだ開始まで1時間近くあるのに、動悸がして落ち着かない。
緊張からか、指先が冷たくなってきた。

ステージ上には椅子が3つ並べられ、座った状態で幕が上がる。
インタビュー形式で進行し、私ともう一人の女性社員が体験談を話す。その後、小田さんたち男性二人が話すことになっているらしい。
軽く打ち合わせをしたが、本番が近づき、緊張して全然頭に入らなかった。

いよいよ開演の時間になり、司会の女性が、張りのある声で挨拶を始めた。
幕が上がり、沢山の人がステージ前に足を止めているようだ。

「それでは、お一人ずつお話を伺ってみましょう」

マイクを向けられ、仮名を名乗ると、アプリの経緯を話した。

「お二人とも登録して初回で、素敵なお相手と出会われたんですね。やはり、AIによるマッチング率の効果でしょうか。うらやましいですね! 
このアプリの特徴は登録してすぐに行われるデータ入力をAIが独自に解析し……」

アプリの宣伝文句を、司会の女性が上手くまとめていく。

「それでは最後に、これから出会う人へアドバイスを一言お願いします!」

「きっと素敵な人はすぐ近くにいると思いますので、軽い気持ちで使ってみてください」

決められたセリフをこなし、幕がりた。

――――はぁっ……。

終った瞬間、一気に緊張感から解き放たれた。

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