婚活アプリで出会う恋~幼馴染との再会で赤い糸を見失いました~
お付き合い(5)
「どうして、そのことを……?」
「人事の子が教えてくれて。小田君が里穂の写真を見せてたらしいよ」 
その言葉に、公園で撮った写真を思い出し、冷や汗が出てきた。
急いで休憩室を出ると、小田さんへメッセージを送る。
『私たちがつき合ってることを、社内の人に話しましたか?』
まるで連絡を待っていたかのように、すぐ返信が届いた。
『ごめん。そんなつもりじゃなかった。人事で飲み会があって、付き合ってる子がいるって話したら、写真見せてくれって大騒ぎになって。上手くごまかしておくから、大丈夫』
いくらせがまれたって、この会社ではあっという間に噂が広まる。
マッチングを売りにしている会社なのだから、社内恋愛は一番興味がある話題だ。
どうしよう…………。
これからのことを考えると、気が重い。
午前中の仕事は、全然気合いが入らないうちにお昼になった。
社内で食べるのもつらいし、食欲も湧かない。
気晴らしに外の空気でも吸おうと、エレベーターに乗り込んだ。
1階に到着し、ドアが開く。
エントランスの自動ドア付近で数人が談笑しているのが見えた。その中に遥斗がいることに気づく。
嫌なタイミング。
目を合わさないよう俯き加減で傍を通り過ぎ、自動ドアをくぐり抜けた。
こんなみじめな気持ちの時に、遥斗になんて会いたくもない。
大通り沿いに出ようとした時、後ろから急に腕を掴まれた。
「里穂!」
「なっ、何するの?」
遥斗が追いかけてきて、私の腕を掴んだ。
「どうした? 元気が無さそうだ」
「そんなことないよ」
「俺に会えなくて、寂しかったんじゃないか?」
久しぶりに見る遥斗の顔が凛々しく、そして頼もしく思えた。
このままがっしりとした腕に引き寄せられたら、一緒について行ってしまいそう。
「遥斗って……自信過剰だよ」
「いや、これが普通だ。俺は里穂と会うためにずっと時間をかけて努力してきたからな」
こんな風に会話を続けたら、いつもの手慣れた遥斗の言葉に惑わされそう。
「付き合ってる男と、上手くいってないのか?」
言葉がズキンと胸に突き刺さる。勘が良すぎて怖いぐらい。
「ちっ、違うよ。もうすぐイベントが近くて、仕事のことで頭が一杯なの!」
適当にごまかそうと仕事の話を持ち出した。
「もう戻らないと」
訝し気に見つめる遥斗を残して、その場を立ち去った。
足早にエントランスへ戻ると、待ち構えていたかのように小田さんが目の前に現れた。付近に誰もいないのを確認して、こちらへ近づいて来る。
ついさっき遥斗と別れたばかりなのに、一緒にいた姿を見られてしまったのかと、少し心配になった。
「里穂ちゃん。今朝はごめん。一言謝りたくて」
「いきなりのことで、びっくりしました。まさか小田さんが他の人に話すとは思わなくて……」
「僕も教えていいか迷ったんだけど、でも……結果的に良かったと思ってる」
――えっ……? 良かったって、どういうこと?
「でも、小田さんだって、社内に知られてしまうと迷惑なことが――」
「人事の子が教えてくれて。小田君が里穂の写真を見せてたらしいよ」 
その言葉に、公園で撮った写真を思い出し、冷や汗が出てきた。
急いで休憩室を出ると、小田さんへメッセージを送る。
『私たちがつき合ってることを、社内の人に話しましたか?』
まるで連絡を待っていたかのように、すぐ返信が届いた。
『ごめん。そんなつもりじゃなかった。人事で飲み会があって、付き合ってる子がいるって話したら、写真見せてくれって大騒ぎになって。上手くごまかしておくから、大丈夫』
いくらせがまれたって、この会社ではあっという間に噂が広まる。
マッチングを売りにしている会社なのだから、社内恋愛は一番興味がある話題だ。
どうしよう…………。
これからのことを考えると、気が重い。
午前中の仕事は、全然気合いが入らないうちにお昼になった。
社内で食べるのもつらいし、食欲も湧かない。
気晴らしに外の空気でも吸おうと、エレベーターに乗り込んだ。
1階に到着し、ドアが開く。
エントランスの自動ドア付近で数人が談笑しているのが見えた。その中に遥斗がいることに気づく。
嫌なタイミング。
目を合わさないよう俯き加減で傍を通り過ぎ、自動ドアをくぐり抜けた。
こんなみじめな気持ちの時に、遥斗になんて会いたくもない。
大通り沿いに出ようとした時、後ろから急に腕を掴まれた。
「里穂!」
「なっ、何するの?」
遥斗が追いかけてきて、私の腕を掴んだ。
「どうした? 元気が無さそうだ」
「そんなことないよ」
「俺に会えなくて、寂しかったんじゃないか?」
久しぶりに見る遥斗の顔が凛々しく、そして頼もしく思えた。
このままがっしりとした腕に引き寄せられたら、一緒について行ってしまいそう。
「遥斗って……自信過剰だよ」
「いや、これが普通だ。俺は里穂と会うためにずっと時間をかけて努力してきたからな」
こんな風に会話を続けたら、いつもの手慣れた遥斗の言葉に惑わされそう。
「付き合ってる男と、上手くいってないのか?」
言葉がズキンと胸に突き刺さる。勘が良すぎて怖いぐらい。
「ちっ、違うよ。もうすぐイベントが近くて、仕事のことで頭が一杯なの!」
適当にごまかそうと仕事の話を持ち出した。
「もう戻らないと」
訝し気に見つめる遥斗を残して、その場を立ち去った。
足早にエントランスへ戻ると、待ち構えていたかのように小田さんが目の前に現れた。付近に誰もいないのを確認して、こちらへ近づいて来る。
ついさっき遥斗と別れたばかりなのに、一緒にいた姿を見られてしまったのかと、少し心配になった。
「里穂ちゃん。今朝はごめん。一言謝りたくて」
「いきなりのことで、びっくりしました。まさか小田さんが他の人に話すとは思わなくて……」
「僕も教えていいか迷ったんだけど、でも……結果的に良かったと思ってる」
――えっ……? 良かったって、どういうこと?
「でも、小田さんだって、社内に知られてしまうと迷惑なことが――」
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