恋愛ゲームの世界で電波な彼女を幸せにする話

soltier

EXTRA END

薄暗い自室。
俺は画面に向かっていた。
画面には可愛らしく描かれた少女。その下には彼女の言葉を表すテキストが表示されている。
そう、俺は恋愛シュミレーションゲーム、いわゆるギャルゲーをしていた。
俺は過去に数々のギャルゲーをし、いくつもの主人公とヒロインの恋愛を見てきた。
そして、このゲームとであった。

「あなたとワタシの恋の行く末」

通称とののく
単語と単語を繋ぐ語句だけを読む、少しありがちな略称だ。
ちなみにもうひとつの略称としてあわこゆというのもある。こっちは少数派だ。
最初はパッケージの絵柄を見て気になって買った。
R18版ということもあり、少しの期待をよせながら。
だが、俺の予想とは全く違う展開になった。

死んだのだ。主人公が、いとも簡単に。
俺は目を疑った。意味がわからなかった。
その時点でゲームを辞めようと思ったが、せっかく買ったのと、ストーリーが気になり、続けることにした。

選択肢が多く、ひとつでも間違えるとすぐに主人公が死んでしまう。中にはヒロインも含めて多くの人が亡くなる場合もある。

それでも、俺はゲームをやめなかった。ここまできたらもう意地になっていた。
そしてついに、最初のヒロインを攻略することが出来た。
それまでに死んだ人は沢山いた。何度も理不尽な死を経験し、鬱な展開も乗り切った。
最終的にはHappyEND
俺は感動して涙を流していた。

それから俺は全てのヒロインを攻略、全てのエンディングを見た。全ての選択肢を試した。
一度全部プレイしてもまたやりたくなるほど、俺はとののくにハマった。

とののくのヒロインは全部で4人。
同級生で幼なじみの
山下 すみれ

先輩で活発な
めぐり ゆうか

後輩で大人しい
涼城 いのり

そして、隠しヒロイン
さかえ リアン

それぞれ個性的でどのルートも素晴らしいものだった。
だけど、どのルートも数々のBADENDが存在した。

ENDの数はとてつもなく、総エンディング数は25個もあった。
そのほとんどはBADで序盤から後半まで色々なBADENDが用意されていた。

ストーリーのあらすじは
特にすることも無く、退屈していた主人公内川 そらがある日、不思議な少女と出会う。
その日を境にそらの周りで不思議な現象が起きるようになった。
変わっていく日常。新たな出会いと新たな恋。そして………世界は少しづつ歪んでいく

なんとも抽象的だが、これはパッケージの裏に書いてあったものだ。

とののくにはもうひとつの特徴がある。
誰かを攻略したセーブデータがあると、ヒロインのセリフが変わるのだ。
例えば、幼なじみのすみれの攻略したセーブデータがあると、もう一度すみれの攻略ルートになりやすいようにヒロイン達のセリフが変わる。(正解の選択肢がわかりやすくなる)
データを消すと元に戻る。
逆に全員の攻略データがあると全員の攻略ルートに行きやすいようになる。

だけど、一人だけ、少しおかしなキャラがいる。
それは隠しキャラの栄リアン。
リアンはあらすじに出てきた最初に主人公と出会う不思議な少女のことだ。
属性は電波キャラというやつで言動や行動が少しおかしい。
時々メタい話もする他のヒロイン達とはあきらかに違うヒロインだ。
そこまではいいのだが、リアンは攻略した後のセーブファイルを持っていても持っていなくても、ルートに入る度に少しセリフが変わるのだ。
ちなみにスキップ機能でスキップしても変わっているところもスキップされてしまう。
だからカチカチ自分で読む。何度も何度も読んだせいでそろそろ冒頭の部分は何も見なくても唱えられそうだ。
とはいえストーリーの変化は特になく、例に漏れずに選択肢をミスるとすぐにBADENDになってしまう。

俺は現在、この栄リアンの周回プレイをしていた。
やる度にセリフが変わる彼女。だけどゲームである以上それには限界があるはずだ。
変わる場所はまちまちでルートに入った直後からエンディング直前だけ変わることもあるから油断出来ない。
変化はランダムなのか、それとも順番なのか……何周目でなにか特別なことが起きるのか………それが気になってずっとリアンを攻略し続けている。
ちなみに他のヒロインでも注意深く見てみたけど、セーブファイルの有無で変わる以外には変化がなかった。

まだなにかとののくは俺に隠してるものがあるのか?

正直最初はここまでハマるとは思ってもいなかったが。今はとののくこそが人生で一番のゲームと言ってもいいほどだ。


そして、ある時、それは起こった。
いつも通り栄リアンを攻略していた。
彼女のルートは何度見ても理解出来ない、訳の分からない内容が多かった。
考察すればするほどわけが分からない。きっと制作側もそこまで深いことは考えていなさそうだがら色々考えてしまう。

お、今回は最後の方でセリフが変わった。

「やっと、やっと完成するなのです。ありがとうなのです!ソラ!」

ん?こんなスチル見たことないぞ。
これまでセリフが少しづつ変わるだけだった。今回は大きく内容が変わっていた。
もちろん選択肢は間違えていない。何度もクリアしてる俺はリアンの攻略なら見ないでもできるくらい内容を覚えている。どの選択肢でどういう結果になるとかも全て把握済みだ。

まさかこんなスチルを隠していたなんて。

「やっと、あなたに会える!」

ん?あれ?
俺はこのテキストに違和感を覚えた。リアンは普段主人公のことを名前で呼ぶ。
そしてこの言い方も変だ。いつもは電波キャラらしい語尾をつけている。

「まっててね、今からあなたに、逢いに行くから」

まるでこの俺自身に話しかけてくるように。
主人公ではなく俺を見つめてくる。

そして、その瞬間、俺の視界が真っ白になった。

「EXTRA END」

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