格闘チャンプの異世界無双 〜地球最強の男、異世界で更なる高みを目指して無双する〜

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

83話 襲撃

「ふんっ! ふんっ!! ふんっ!!!」

 俺は筋トレを続けている。
 心地良い疲労感とともに、体の奥底から力が湧いてくるようだ。
 俺が満足感に浸りつつ、次に腹筋や背筋のトレーニングを考えているときだった。

(へへっ。お前が心配するから、これだけの増援を集めてきたぜ。さっさと片付けちまおう)

 扉の向こうから、ささやき声が聞こえてきた。
 俺が昼寝と筋トレをする前に、天井裏に潜んでいた奴の声だな。

(でもよぅ。あいつはタダモノじゃないぜ? この人数でも勝てるかどうか……)

 心配げな声が上がる。
 こっちは、同じく天井裏に潜んでいた奴のうち、俺と目が合った方の声だな。

(お前は心配しすぎなんだよ。この人数で負けるはずがねぇ)

(…………)

(それに、あれから2時間は経過した。間違いなく、痺れ毒も効いているはずだ。そうだろ?)

(だが、念には念を入れて確認した方が……)

(もうそんな時間はなくなっちまった。増援を集めるのに時間を使っちまったからな。これ以上遅れれば、領主様から怒られちまうよ。ほら、突撃するぞ! 野郎共、準備をしろ!!)

 男たちはそんなことを呟く。
 この2人の他、増援とやらが数人以上いるようだな。
 確かに、普通に考えれば向こうが負けるはずがない。
 部屋の中にいるのは、自称腕自慢のCランク冒険者とはいえ、痺れ毒で倒れているはず。
 そこに、応接室という密室で多人数で囲むわけだからな。

(だが、残念。自分で言うのもなんだが、俺は普通の男とは違うぞ? ふふふ、楽しみだな)

 俺はそんなことを考えつつ、荷重付きの片足スクワットを続けていく。
 心地良い疲労感とこれからの戦闘への期待感で、ハイになっちまいそうだぜ。
 俺が今か今かと待ち構えていたときだった。
 ガチャリ……。
 扉が静かに開いた。

(む? てっきり、突撃してくるのかと思ったが……)

 いや、そうか。
 奴らの考えでは、俺は痺れ毒で倒れているはずだったんだ。
 場合によってはそのまま眠っている可能性も考慮したのだろう。
 眠っている者を起こさないように静かに入るのは、合理的な判断だ。

 しかしもちろん、俺は眠ってなどいない。
 絶賛筋トレ中である。

「ふんっ! ふんっ!! ふんっ!!!」

「「「…………」」」

 突入してきた数名の男達は呆然と立ち尽くしている。
 おそらく、俺が元気にスクワットをしているから驚いてしまったのだろう。
 俺は彼らに視線を向ける。

「ようこそ、俺の部屋へ。後少しでキリのいいところなんだ。少し待っていてくれ」

「……え? あ、ああ。はい……」

 襲撃者のリーダー格の男は、動揺しながらも何故か丁寧語でそう返答したのだった。

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