格闘チャンプの異世界無双 〜地球最強の男、異世界で更なる高みを目指して無双する〜

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

53話 ゴブリンエンペラーの奥の手

 ゴブリンエンペラーとやらと交戦中だ。
 キングよりも少し強いが、まだまだ物足りない。
 俺は再び間合いを詰めると、今度は腹に蹴りを放つ。

「グゲェェッ!!」

 ゴブリンエンペラーは苦悶の表情を浮かべた。
 俺はそのまま回し蹴りで頭部を狙う。

「ゴアッ!?」

 ゴブリンエンペラーは慌てて腕でガードしようとするが、間に合わない。
 俺の蹴りはゴブリンエンペラーの右目を潰した。

「ギィヤアアァッ!!」

 ゴブリンエンペラーは耳障りな声を上げた。

「ほらどうした? かかってこい」

 俺は挑発するように、手招きをする。

「ゴアアァッ!!!」

 ゴブリンエンペラーは苦し紛れに再び突っ込んでくる。

「芸のない奴め」

 俺は軽くステップを踏むと、ゴブリンエンペラーの攻撃を回避して、カウンターで膝裏にミドルキックを放った。

「ギャフゥッ!!」

 ゴブリンエンペラーはバランスを崩す。
 俺は素早く背後に移動すると、後ろから首筋に手刀を打ち込んだ。

「ウガッ!!」

 ゴブリンエンペラーはそのまま地面に倒れ伏す。
 だがすぐに起き上がり、洞窟の奥へと逃げていく。
 まだ生きているのか。しぶとい魔物だ。

 逃がさんぞ。
 俺は後を追っていく。
 するとそこには、大量のゴブリンの死体が転がっていた。

「これは一体……」

 俺は首を傾げる。

「ギャオオォッ!!!」

 死体の中心に立つゴブリンエンペラーが雄たけびをあげる。

「ふむ? これは……。生命力を吸収しているのか?」

 ゴブリンの死体から発生しているエネルギーのようなものをゴブリンエンペラーが吸収していく。
 今のままでは俺に勝てないと判断して、仲間を殺してパワーアップを図ったわけか。

「強さを追い求める覚悟は認めよう。だが……」

「ギャオオォッ!!!」

 ゴブリンエンペラーがこちらに向かってくる。
 手には巨大な剣。
 この部屋に安置されていたものだろうか。

 生命力の吸収と巨大な剣。
 これらにより、奴は先ほどまでも一回り強くなっているはずである。
 さしずめ、奥の手といったところか。
 しかし……。

「その程度で、この俺を超えられると思うな」

 俺は振り下ろされる剣を、片手で受け止めた。

「ふむ。粗雑な造りだが……。なぜか切れ味はいいようだな」

 これも魔力や闘気とやらが関係しているのだろうか。
 この世界の物理法則はまだまだ掴みきれていない。
 剣を受け止めた俺の手先に、一筋の血が垂れる。
 俺の鍛え抜かれた体に傷を付けるとは、大したものだ。
 それがわずか1ミリにも満たない程度の浅い傷だろうとな。

「ギャオッ!?」

 ゴブリンエンペラーは驚愕の声を上げる。
 そして、咄嵯に距離を取ろうとする。
 しかし……。

「ギャオオオォッ!?」

 剣が俺の手から離れない。
 一度俺に掴まれておいて、簡単に引き戻せるとは思わないことだ。

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