格闘チャンプの異世界無双 〜地球最強の男、異世界で更なる高みを目指して無双する〜

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

33話 三馬鹿を撃破

 冒険者ギルドの修練場で、三馬鹿と戦っているところだ。
 彼らの戦いはジックリと見させてもらった。
 身のこなしは期待外れだった。

 しかし、何やら木剣に気を込めるという技術を持っているようだ。
 気とやらは、盗賊団の頭領も使っていたな。
 俺はその技術を見極めるため、彼らの動きを観察する。

「気術も知らねえ素人かよ!」
「けっ! Cランクである俺たちに勝てると思うな!」
「くたばれやあああぁ!」

 三馬鹿が最後の一撃とばかりに、多めの気を木剣に込めて攻撃してくる。
 そのまま受けてもいいし、回避してもいい。
 だが、ここはーー。

「よっと」

 俺は1人の木剣をうまく受け止め、そのまま奪う。
 力任せに奪ったのではない。
 勢いを完全に殺し、相手に気取られないように奪った。
 柔の技だ。

「えっ? あれ?」

 木剣を奪われた三馬鹿の1人は、不思議そうな顔をしている。
 いつ木剣を奪われたのかわからなかったのだろう。

「この盗人があああぁっ!」
「恥を知れやボケエエェッ!」

 残りの2人が、再び俺に斬りかかってくる。
 第三者である彼らは、俺が木剣を奪う様子をちゃんと見ていたのだろう。
 先ほどのは技巧寄りの技で、特に高速というわけでもなかったしな。

 カンカンカン!

 俺は奪った木剣で彼らの攻撃をいなしていく。
 俺はあらゆる格闘技を極めているが、武器の取り扱いにも一通り精通しているのだ。

 カンカン!
 キンキンキン!
 俺と男たちの剣戟が続く。

「へっ! なかなかやるようだが、気術を使えねえお前には限界があるぜ」
「ギャハハハハ! そろそろ、その木剣は折れそうだなあ?」

 2人がそう言う。
 彼らの木剣は、気術とやらで強化されている。

 一方で、俺は気術とやらを使えない。
 先ほどまで使っていた男によって込められていた気の残滓も、そろそろ尽きそうだ。
 このままでは少しマズイ。

 別に木剣がなくとも、肉体で戦えばこんなやつら瞬殺ではある。
 それなのにわざわざ木剣を奪ったのは、理由がある。
 この実戦で、木剣に気を込める気術とやらを習得してみようというわけだ。

 先ほどから、みようみまねで試している。
 そして、ついにーー。

「ふむ。こうか?」

 バッ!
 俺の持つ木剣から、大きなオーラが発せられたような気がした。

「なっ!? バ、バカな……」
「なんだこの気の量は!?」
「てめえ、気術を使えねえのは嘘だったか!」

 三馬鹿が何やら動揺している。
 先ほどまで使えなかったので、嘘ではないのだが。

「だいたいコツは掴めた。お前たちは用済みだが……。気術の見本を見せてもらった恩があるな。せっかくだ。少しだけ全力を出してやろう。はああああぁ……!」

 俺は力を開放する。
 バッ!
 ギュインギュイン!
 木剣から立ち上る気がどんどん増していく。

「や、やめろ!」
「ただの木剣に、そこまでの気を込めるんじゃねえ!」
「や、やばいぞ! 逃げろ!」

 三馬鹿が何やらうろたえ、俺に背を向ける。
 何がどうしたというんだ?

 俺は疑問に首をかしげる。
 その答えは、すぐに現象となって現れた。

 パーン!
 ドドドドド!
 木剣が突如弾け、修練場に衝撃波が響き渡る。

「うおっ!?」
「「「ぎゃあああぁっ!!!」」」
「きゃっ!?」
「わっ!?」

 俺、三馬鹿、受付嬢。
 エミリーたち一家。
 それぞれが衝撃波からダメージを受ける。

 もっともダメージが大きかったのは三馬鹿か。
 逃げるのが間に合わず、そこそこ近くから衝撃波を受け止めてしまったようだ。
 三人とも、目を回してひっくり返っている。

 受付嬢は少し離れたところに位置していたので、さほどのダメージは受けていない。
 しかし、衝撃にビビって尻餅をついている。
 足を少しM字に開いた状態で、放心している。

 ……ん?
 何か、股のところが湿っているような……。
 いや、彼女の尊厳に関わることだし、追及はしないでおこう。

 しかし、それほど先ほどの件が怖かったのか?
 少し悪いことをしたな。

 エミリーたち一家は、受付嬢よりもさらに遠くから観戦していたので、無事なようだ。
 目を丸くして、驚いたような顔はしているが。

「やれやれ。まだまだ調整が必要だな……」

 俺はそうつぶやく。
 気術とかいう新しい技術を手にして、舞い上がってしまった。
 修練用の木剣のような脆弱な武器に気を込めすぎてしまうと、武器側が耐えきれずに弾けてしまうわけか。

 ちなみに、俺はもちろん弾けた木剣からの衝撃波を至近距離から受けている。
 しかし、ダメージは大して受けていない。
 俺の鍛え抜かれた体は、あの程度の衝撃波でどうにかなるものでもない。

 俺の気術の練度はまだまだだろうしな。
 もっと練度を上げてからであれば、自分の気によってもう少しダメージを受けることもあるかもしれない。
 自分の気による攻撃力と、鍛え抜かれた肉体防御力の、どちらが高いかという程度の話だ。

 さて。
 思わぬ事故はあったが、三馬鹿との模擬試合は無事に勝てたといってもいいだろう。
 この場を収めて、新人冒険者として活動を再開しないとな。

 まずは、呆然としている受付嬢に声を掛けることにしよう。

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