世界に轟け中華の声よ

鈴木颯手

第三十七話「杏共内戦~制圧~」

 挺と苑が行った後方かく乱が成功している事に誰も気づかないまま反抗作戦が開始された。兵の数で勝る共産勢力に対し大杏帝国軍はロシアからレンドリースされた武器で武装し質の面で優位に立ちながら戦線を押し込んでいった。ロシア帝国も前回の時以上の武器を大量に供給し始めていた。大杏帝国軍が充足率で共産勢力に劣る事は今後現れないだろう。
 更に、モンゴル国も新疆軍閥領へと大きく前進を果たしており昔ながらの騎兵部隊による速度を生かした機動戦を行っていた。新疆の中心地であるウルムチへたどり着くのも時間も問題と言えた。
 一方、共産勢力は優勢から劣勢へと切り替わってきていたが各軍閥の連携は全く取れていなかった。攻勢に出る時は連携などほとんど必要なかったが防衛はそうはいかなかった。結果、各軍閥は連携の無さを付かれて連戦連敗が続いて行った。

「大杏帝国の勝利は間違いないだろう」

 それは杏共内戦を正確に把握している国家や組織はそう確信するくらいには戦況は一方的なものになりつつあった。そしてその結果様々な国が大なり小なり行動を起こす事になった。

 ロシア帝国では共産勢力の残党が大杏帝国へ供給する武器を輸送中に襲撃したり小規模な蜂起を起し始めた。ロシア帝国はそれらの対応に追われる事となり大杏帝国への物資の供給も予定より大幅に減少せざるをおえなくなった。現状では唯一の共産国家であるフランス共産国家……フランス・コミューンは義勇軍やレンドリースを考えているがブリテン連合や神聖フランス共和国が海上封鎖を行いフランス本土に閉じ込めていた。両国ともにこれ以上共産国家を増やしたくはないという思いがあった。
 しかし、それならばとフランス・コミューンはベルギーやドイツ帝国で共産主義のキャンペーンを開始した。亡命政府が本国に帰還して間もないベルギーや降伏したばかりのドイツ帝国では未だに不安定な状況が続いておりそんな中での平等を訴えるフランス・コミューンのキャンペーンは効果絶大だった。両国では以後共産主義者が大頭していく事になる。

 そして、一番大きく動きを見せたのは海杏軍閥だった。海杏軍閥は中立を破棄して大杏帝国軍側で参戦を表明するとがら空きの背後から一斉に襲いかかった。更には海杏軍閥に囲まれて手を出せなかった上海にも攻撃を行いあっという間に制圧を行っていた。
 このように全方位から攻撃を受ける事となった共産勢力は呆気なく制圧された。後に第一次案日西紛争と合わせて1920年騒動と呼ばれるようになる一連の騒動は大杏帝国の勝利という形で終息を迎えるのだった。

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