世界に轟け中華の声よ

鈴木颯手

第十話「近親相姦なんて同人誌の中だけにしてください」

 次に大杏帝国の皇族について。大杏帝国の初代皇帝である僕のお爺ちゃんは伯国の皇女と結婚していたらしい。だから大杏帝国の建国は比較的スムーズに行われたそうだ。要は嫁ぎ先の家に交代した感じだけどそれでも反発はあったとの事。とは言えそれは想定よりも小さく数年で解決したとの事。伯国の皇族はまず皇帝と皇太子が死刑となった。第一皇女は大杏帝国の皇后になったから問題はないけど最後の第二皇女はそうはいかなかった。
 彼女は大杏帝国にいればいい様に使われると悟りなんと国外へ逃亡。逃亡先は関係が悪かった大日本皇国だったようでさすがのお爺ちゃんも手が出せなかったらしい。そして第二皇女は日本の老舗の和菓子店の次男と結婚してその和菓子店のお手伝いをする事になったらしい。ただ、長男びいきだったから嫁姑問題が凄くて数年で次男を連れて出て行ったらしい。
 そんな時にお爺ちゃんとそのお嫁さん、つまり第二皇女のお姉さんから手紙を受け取ったらしい。もう結婚もしているようだし政略結婚には使ったりしないから戻ってこないか?というもの。家も収入もなかった第二皇女は夫と相談して再び大杏帝国に戻ってきて皇族扱いで帝都で暮らし始めたとの事。
 第二皇女は男の子を一人産みその子は帝都に住んでいた少し裕福な商人の娘と結婚、二人の娘を設けその内の姉が皇帝に嫁いできた、との、事……で。

「え?紅花ちゃんって親族だったの?」
「そうですよ。ただ、大分血は薄まっていると判断しての事らしいですけど」
「いや、そう言う事じゃなくて」

 これって従姉と結婚したようなもんじゃん。あれ?この場合従姉って言わないんだっけ?って、今そんな事はどうでも良くて……!

「……紅花ちゃんは本当に良かったの?」
「家同士の決まりごとに良いも悪いもないと思うのですが……」

 あー、そうでしたね。まだ女性の社会進出がない時期でしたね。この世界が何時になるのかは知らないけど当分来ないだろうな。そんな気がするよ。

「ですが、少なくとも私は陛下の妃になれて良かったと思っています」
「……」

 ここに天使がいる。少し頬を赤めて恥ずかしそうにそう言ってくるのはずるいよ!僕には凄い衝撃だよ!駄目だ!もう紅花ちゃんの顔を見れない!

「……陛下?」
「ご、ごめん!今日はもう寝る!」
「あ、……」

 紅花ちゃんの呼び止める声が聞こえたけど僕はベッドに入り毛布にくるまりそのまま目を閉じる。少しして眠気が襲ってきたのでそれに身を任せる。

「ふふ、陛下。おやすみなさい」

 僕の耳元にそうささやく紅花ちゃんの声が一瞬聞こえた気がするけど僕の意識は暗闇に落ちて行った。

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