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上杉山御剣は躊躇しない

阿弥陀乃トンマージ

第9話(1) 忍びと忍び

                    玖

 上杉山隊の億千万トリオと武枝隊の面々が戦っているほぼ同時刻、武枝隊の二人の人物がある地点を歩いている。

「気配を掴んだのか?」

 短い茶髪の男性がもう一人に問う。

「……」

 問われたもう一人、長めの黒い前髪を顔の両側に垂らし、後ろ髪は短めのポニーテール風にまとめ、口元を赤布で覆っている中性的な雰囲気の男が無言で頷き指を二本立てる。

「二人か。ってか、口に出せよ」

「……忍びと巫女……まだ合流はしていない。北東と北西に分かれている。互いに気付いたかどうか、合流されると厄介だな……」

「どうする?」

「……北東の忍びは引き受ける。北西の巫女は任せる」

「お、女をやるのか? なんだか気が引けるな……」

 茶髪の男は戸惑い気味に答える。

「忍びは相性的にてこずると思うぞ。それとも二人で組んで一人ずつ潰すか?」

「い、いや、それは武枝隊の名折れだ! 分かった、女は俺がやる!」

「……」

「な、なんだよ」

「いや……さっさとケリをつけて互いの中間地点で合流だ」

 中性的な男が指を真っ直ぐ北に指し、茶髪の男が頷く。

「よし、分かったぜ!」

「ヘマするなよ、尾藤」

「俺は仁藤だ!」

 二人は勢いよくその場から走り出す。



(この対抗戦で私の最も優先すべき役目は傷ついた隊員を回復すること……ある程度近づけば、まだ未熟な私でも味方の霊力を感知出来る!)

 愛が走りながら考えを巡らす。その行く手を飛び出してきた茶髪の男が阻む。

「!」

「合流はさせないぜ!」

「……」

「なんだ、ビビッて声も出ないか。安心しろ、この仁藤正人にとうまさと、大怪我させるようなヘマはしねえ。ただ回復の術を持ったお前さんは厄介なんでな、多少痛い目は見てもらうが」

 仁藤と名乗った男はそう言って刀を構える。愛は無言でそれを見つめる。

「……」

「い、いや、なんか反応しろよ」

「……つまりこの先に私の味方がいるのですね」

「はっ! し、しまった! ええい、とっとと片付けさせてもらうぜ!」

 仁藤が愛に斬り掛かる。



「!」

 木々の枝を飛び移りながら移動していた黒駆が急停止し、横から飛び込んできた相手の苦無での攻撃を自身の持つ苦無で受け止める。

「ほう……なかなかの反応だな」

 中性的な男が体勢を立て直し、黒駆と相対する。二人は同じ位の身長であるが、黒駆の方がやや体格が良い。

「戦闘面だけはそれなりということか」

「だけは?」

 黒駆の問いに中性的な男は鼻で笑う。

「肝心の諜報活動がさっぱりだっただろう? 知っているぞ、貴様がここしばらく、我が隊の周辺を嗅ぎ回っていたことを。そして何の成果も得られなかったこともな」

「……返す言葉も無いが、ここでお前を倒して、少しでも隊に貢献してみせる!」

 黒駆は身構える。

「決意だけは立派だ―――な!」

「!」

「何 」

 黒駆は再び相手の繰り出した攻撃を受け止めてみせる。

「お前のことは知っている……朔月望さくげつのぞみ

「! 流石に同業者のことくらいは知っていたか」

「お前の流派のこともな……」

「ほう……ならば、確かめさせてもらうか!」

 朔月が三度仕掛ける。苦無を使って、速い連撃を繰り出すが、黒駆がそれをいなす。

「その技は知っている!」

「くっ!」

 黒駆が反撃に出る。朔月は咄嗟に躱す。

「お前と同じ流派のやつと何度か戦ったことがあるからな……」

 黒駆が苦無の先に引っ掛けた赤い布をヒラヒラとさせる。朔月がハッと口元を抑える。

「なかなか男前じゃないか、隠すのは勿体ないぞ」

「それは気に入っている奴だ、返してもらおう!」

 朔月が飛び掛かる。黒駆はこの周囲で一番大きい木の枝に飛び移ろうとするが、朔月はその動きをしっかりと捉えており、先回りする。

「速さではこちらに分がある!」

 朔月は苦無を太い木の幹に突き立てるが、そこには赤い布が残っているだけである。

「 」

「返したぞ、趣味じゃないのでな」

「何 」

 黒駆が朔月の背後に周り込み、体を羽交い絞めにする。

「確かに速さはお前の方が上だな、ならば力はどうかな 」

「ぐっ!」

 黒駆は朔月を抱えた状態のまま、上空に高く飛び、そこから真っ逆さまな体勢になり、きりもみ状に落下する。

「飯綱落とし!」

「ちっ!」

「! しまっ―――ぐおっ!」

 朔月が両手を叩いたその瞬間、強烈な違和感を覚えた黒駆は思わず、体を抑える手を緩めてしまう。その隙を逃さず、朔月は黒駆の腹に肘鉄を喰らわせ、羽交い絞めから逃れ、落下を避けることに成功する。着地した朔月は再び両手を叩くと、体勢を崩している黒駆に襲い掛かる。黒駆は朔月の連撃を受け止め切れずに、左肩、左腕、右膝、そして最後に右の脇腹を苦無で刺されてしまう。

「ぐおっ!」

「喰らえ!」

 追い討ちとばかりに朔月が繰り出した蹴りをまともに腹に受けた黒駆は後方に勢いよく吹っ飛ばされ、そのまま崖から転落してしまう。

「!」

 朔月が崖際に駆け寄り、状況を確認するが、既に黒駆の姿は見えない。

「受け身くらいは取っただろうが……しかし、あの傷では満足には動けまい。勝負は決した。流派を知っているくらいで良い気になるからだ……さて、尾藤と合流するか」

 踵を返した朔月は自らが指定した地点に移動する。しかし、そこには仁藤の姿は無い。

「ちっ、さっさとケリをつけろと言っただろうに!」

 舌打ちをして、朔月は再び動き出す。仁藤の気配のする所にたどり着くとそこで驚くべき光景を目にする。ボロボロになって倒れ込む仁藤とその傍らに平然とした様子で立つ愛の姿があったからである。

「なっ 」

 愛も朔月の姿を確認し呟く。

「黒駆さんかと思ったら、違いましたか……」

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