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上杉山御剣は躊躇しない

阿弥陀乃トンマージ

第1話(2) 出逢いは億千万のから騒ぎ

「揃っているな」

 部屋に入った御剣は三人の女性が席に着いていることを確認すると、彼女たちの正面に立って話を始める。

「紹介しよう、彼が新隊員だ。名前は……」

 御剣が促していることに気付いた勇次は慌てて自分の名を名乗る。

「お、鬼ヶ島勇次だ、い、いや、で、です。よ、宜しく」

「何か質問は?」

「……姐御よぉ」

 勇次たちからは向かって右側の席に座っていた金髪のウルフカットの女性が頬杖をつきながら手を上げる。御剣が指名する。

「なんだ、千景?」

 千景と呼ばれた女性が立ち上がる。勇次と同じ位の身長である。御剣と同じく黒い制服姿だが、胸元は大胆に開けており、白いサラシが見える。勇次はそのサラシにきつそうに巻かれた豊満な胸と、黒のショートパンツと二―ソックスの間に見える、これまた豊満な太ももに一瞬目を奪われたが、すぐに目を逸らす。

「この隊に男を入れるってのか?」

「……別に女だけの部隊にすると決めたつもりは無いぞ。諸君らも重々承知の通り、妖絶講は万年人手不足だ。それこそ猫の手も借りているような状態だからな」

 そう言って御剣はドアの近くに座る又左に目をやる。

「が、それでも不十分だ。男手も無いよりあった方がマシだろう」

「姉様、フィギ……異議ありですわ」

 勇次たちから向かって左側の席に腰掛けている黒髪ロングの女性がゆっくりと立ち上がる。キッチリと揃えた前髪とキチンと着た制服と長いスカートが印象的な彼女は何故か、口に咥えていた棒付きの飴を取り出して、改めて話を始める。

「……古来より妖を退治する妖絶士ようぜつし……。その職は女性が多数を占めているという事実はよくご存知のはずでしょう?」

「水準以上の霊力を秘めたものが妖絶士になる。何故かは分からんが、女の方が霊力の高いことが多いからな……何が言いたい、万夜?」

「そちらの殿方……どこの馬の骨かは存じませんが、ちょっとばかり腕っぷしが強い位ではかえってわたくしたちの足を引っ張ることになりますわ」

 万夜と呼ばれた女性はわざとらしく小首を傾げながら、大袈裟に両手を広げてみせる。勇次は思わずムッとする。

「う、馬の骨ってなんだよ 」

「てめえみてえな訳分かんねえ奴のことだよ、どうやって姐御に取り入った?」

 千景が勇次を睨み付ける。

「と、取り入ったって……」

「霊力も大して感じねえ、そこのパッツンが言うように、ただのバカ力なら要らねえよ」

「わたくしの名前は万夜です! 全く……いくら前髪が揃っているからと言って、パッツンという安易なあだ名で呼ぶ単細胞丸出しな思考回路と、その粗野で下品な振る舞い……もう少し何とかなりませんこと?」

「常に飴玉しゃぶっているお子ちゃまに言われたくねえんだよ」

「ですから、これはのど飴だと何度も申し上げているでしょう? わたくしは喉を大事にケアする必要性があるんですの」

「そのピーピー煩え無駄口を減らせば良いんじゃねえのか?」

「貴女こそその無駄な脂肪を少しでも脳味噌にまわせば宜しいのではなくて?」

「んだと、コラ……」

「何ですの?」

 部屋の中央で千景と彼女より頭一つ小柄な万夜が激しく睨み合う。それをしばらく眺めていた御剣は力強く頷いて、こう話す。

「うむ! 喧嘩するほど仲が良い! 我が隊は今日も順調だな!」

「「だから、どうしてそう思える(んですの) 」」

 的外れな御剣の言葉に、千景と万夜は揃って抗議の声を上げる。二人を一旦落ち着かせて、改めて御剣が話そうとしたその時、勇次たちの前に座っていたピンク髪の三つ編みで度の強そうな眼鏡を掛けた小柄なパンツスタイルの女の子が手を上げて立ち上がる。

「どうした億葉?」

「え、えっと、ですね……拙者の作った、この『霊力妖力測定器』なんですけど……」

「そ、それは 」

 勇次が驚いた声を上げるが、慌てて口を塞ぐ。

「その玩具がなんだって?」

「自由研究の発表ならよそでやってもらえるかしら?」

 御剣が茶々を入れる二人をたしなめる。

「待て、千景、万夜……億葉、話を続けろ」

「は、はい。この測定器なんですが、先日誰かに持ち出されてしまったようでして……」

「にゃんと  それはにゃんともまた、悪いことをする奴がいるもんだにゃあ~」

 又左がわざとらしく大声を出す。御剣はそれを冷ややかな目で見ながら、億葉と呼ばれた女の子に話を続けるように促す。

「それで?」

「は、はい。それでこの測定器が無事に戻ってきたんです」

「そ、それは良かったにゃ~解決したわけだにゃ~」

「い、いえ本題はむしろここからでして……この測定器、直近の記録者、測定者がだれか分かるようになっているんです!」

「「 」」

 驚く勇次と又左をよそに、御剣が結論を尋ねる。

「それで、測定の結果はどうなった?」

「こちらの鬼ヶ島勇次さん、霊力がほぼゼロに近い代わりに、妖力が極めて高い『半妖』だという事実が判明しました! つまりですよ、御剣氏……貴女は『半妖』という存在を、妖を絶やす為に戦う我が隊に迎え入れようとしている……これは一体全体……」

「「「どういうことなんでしょうか(なんだよ)(なんですの) 」」」

 三人同時に詰め寄られて御剣はやや気押された様だったが、すぐに答えを返す。

「最初に言う。問題は無い」

「し、しかし、半妖を部隊に加えるというのはいささかリスキーでは?」

「知っての通り、今まで前例が無い訳では無い。そして極めて珍しい種族の半妖だということだ、その力を上手く活用せよと上からの命令だ。それには従わざるを得ない」

「高い妖力を持っているということですが?」

「現在は不思議なことに妖力のコントロールが出来ているようだ。恐らく偶然だろうが。とにかくこのままならば特に心配は要らないだろう」

「妖力が暴走した場合はどうするんだよ」

「そうならないように指導するし、常に目を光らせる。それでも運悪く暴走してしまった場合は……私が責任を持って処断する……それで今日の所は納得してくれないか」

 御剣の言葉に三人は渋々ながらも引き下がった。御剣は力強く頷く。

「理解を得られて嬉しく思う。それじゃあ改めて三人も彼に名前を教えてやってくれ」

「アタシは樫崎千景かしざきちかげだ。この上杉山隊の特攻隊長をやらせてもらっている。アタシの足引っ張るんじゃあねえぞ……!」

「わたくしは苦竹万夜にがたけまやです。以後お見知り置きを。この上杉山隊の副隊長を務めさせて頂いております。精々足手まといにはならないで下さいましね」

「拙者は赤目億葉あかのめかずはです。この隊の技術開発研究主任を請け負っております。武具のことなどお気楽に御相談下さい。半妖の力、非常に興味あります。ドゥフフフ……」

「あ、ああ、宜しく頼む」

「名前を覚えたり、呼ぶのが面倒だったら『億千万トリオ』とでも呼べば良い」

「だからその雑なくくり止めろよ!」

「適当な扱いに抗議致しますわ!」

「せ、拙者は結構気に入っていますけど、ドゥフフフ……!」

 次の瞬間、作戦室に警報が鳴り響いた。御剣が叫ぶ、

「出動だ!」

「し、出動って?」

「無論、妖退治の為だ」

 何を言っているのかといった様に、御剣は勇次の疑問に答え、億葉の方に向き直る。

「億葉、画面に映せるか?」

「了解……」

 億葉の操作によって、部屋の壁が開いてモニターが現れ、地図が映し出される。

「新潟市のショッピングモールに数十体程、妖の反応が見られますね……」

「級種は?」

「ほぼ級……一部が漢字壬じん級の様ですね」

「ふむ……」

 億葉の報告に、御剣はほんの一瞬考えてから指示を出す。

「千景と万夜、それに鬼ヶ島、私について来い。億葉と又左は待機だ」

「ちょ、ちょっと待った、姉御! コイツも連れて行くのか?」

 千景は勇次を指差して、御剣に問う。

「ああ、新人研修の代わりになるだろう」

「ホントに役に立つのかよ?」

「何だと?」

 千景の物言いに勇次はムッとする。又左が口を挟む。

「この男は御剣の攻撃を三度、いや四度躱した、にゃみの身体能力では出来にゃい」

「! 姐御の剣を四度も 」

「ふん、どうよ」

 驚く千景に勇次は誇らしげな顔を見せる。

「……もっとも、御剣はにゃにゃ割程度の実力しか出していにゃかったがにゃ」

「な、7割  あれでかよ 」

「いや、6割5分位だな……」

「細かいことこだわるにゃ……」

 妙なプライドを見せる御剣に又左は呆れる。万夜が飴を取って、口を開く。

「まあその辺はどうでも良いですわ。研修の結果、あまりにも見込みが無いようならば、彼の入隊は考え直すということでしょう?」

「……そういうことになるな」

「とにかく出動致しましょう」

「よし、転移室に移動だ」

「転移室? あっ……」

 部屋を出ていく御剣たちと又左に、勇次は慌てて続く。作戦室の近くにその転移室があった。勇次が部屋に入ってみると、部屋のど真ん中に大きな六角錐状の鏡が置いてある。

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