人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

試練で得た実力

 身体強化の魔法を使って飛び上がった俺はまず初めに左側にいた吸血鬼を殴りつける。強化された俺の腕力は何倍にも跳ね上がっており、殴りつけた吸血鬼の顔面を粉砕するには充分だった。吸血鬼は首の骨が折れ、肉がちぎれて頭部が吹き飛んだ。

「なっ!? きさ……!」

 起きるはずがないと思っていた俺がいきなり飛び上がった事から硬直する残り二人の吸血鬼のうち、俺に殺意を向け今にも殺そうとしていた男の首に向けて回し蹴りを放つ。確かな感触を一瞬感じた後に俺は外した時のように遠心力で体がぐらついてしまう。避けられたのかと思ったが違った。蹴りを喰らった吸血鬼は首の所を抉り取られ、頭部と胴体を分断されていた。一瞬だけ感じた感触は首に当たった者だったようだ。

「くっ! よくも同志を!」

 最後の一人は怒りで顔を真っ赤にしつつ俺に向かって魔法を放つ。吸血鬼軍団と戦った時にも受けた炎の球体だ。確かにあれは強かったがそれは試練を受ける前までだ。俺は炎の球体に対して氷の盾を作り上げて防御する。瞬間感じる少し押される感じと急激に蒸発する事で発生した白煙。一瞬にして部屋を煙で満たしたことで吸血鬼の視界から俺が消えた。その隙を見逃すことなく一気に懐に潜り込むとその腹部に向けて一撃を放つ。今の俺に出せる、最大の威力だ。

「が、あぁぁっ!!」

 一撃を受けた吸血鬼は腹部こそ貫く事はなかったが周囲の内臓や骨を粉砕した感触があった。今から治療してもまず助からないだろう。更に吸血鬼は扉を粉砕してその奥へと吹き飛んでいった。

「ったく、目を覚ましてすぐにこれかよ」

 そう言いつつ部屋を出れば更に二人の吸血鬼がいる。そのうち一人は明らかに別格と思われる服装をしている。この吸血鬼どものリーダー各だろう。

「さて、神の試練で得られた力を試すには絶好の相手だな。お前らが何かは知らないが、襲い掛かってきた以上、俺の敵だよな?」

 俺はそう言うと、その吸血鬼たちに向け構えを取るのだった。

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