人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

神の試練~ダンジョン攻略②~

 このダンジョンはとても恐ろしい。それを目の前の光景を見て改めて感じた。オーガを倒し前へと進み始めた俺に対してオーバーキルとも言える程の罠やモンスターが襲い掛かってきた。
 最初にブラフ付きの落とし穴。落とし穴を回避したと思った先で発動する斧が付いた振り子。部屋に閉じ込めたと思ったら床に設置された停止用のボタンを押すまで下がり続ける天井。そして、その先で待ち構えていたモンスターハウス。見る限りゴブリンにオーガ、オークと様々な魔物がいる。総数は50を超えているだろうか。かなり広い部屋なのに手狭に感じる程敷き詰められている魔物たちに俺は苦笑いしか出来ない。
 既に入って来た道は天井から降りてきた石によって封鎖されている。出られそうな通路は丁度反対側にある。この魔物の波をかき分けて進むしか道はなさそうだ。そう思っていると早速近くのゴブリンが攻撃を仕掛けてくる。

「ギャァッ!!」
「フッ!」

 振り上げた棍棒が俺に届く前に曲刀で腹部を切り裂く。横なぎに払った曲刀は背骨にあたるギリギリまで深く切り裂き内臓を破壊し、致命的な傷を負わせた。しかし、俺はそのゴブリンに止めを刺すことなく別の魔物に視線を向ける。この一撃で再び襲い掛かって来る事は無いだろう。今は止めを刺す手間すら惜しい。敵はまだまだいるのだから。

「せやぁ!」
「ギッ!?」

 続いて槍を構えて突進してきたゴブリンの首を切り落とす。前のめりに倒れ込んでくる死体から槍を奪い取ると刃こぼれした剣を振り下ろしてくるゴブリンの首に突き刺す。次は一番近くに接近してきていたオーガの足を切り裂くと一旦距離を取る。痛みのあまりゴブリンと同じデカさを誇る棍棒を振り回すため周囲のゴブリンが面白い様に吹き飛んでいく。あのオーガは暫く動けないだろう。その間に別の奴に切りかかる。
 そうした動きを何十と繰り返していき気づけば俺の他に部屋で生きている者はいなくなっていた。部屋に充満する魔物の血の匂い。俺は直ぐに部屋を出るべく曲刀に付いた血を振り払い、通路へと足を踏み入れた。
 宝箱で手に入れた曲刀。これはとてもすごかった。今のところ刃こぼれ一つしていない。硬いオーガの骨や分厚い脂肪で覆われたオークを切り裂いているというのに、だ。流石は神が作りしダンジョン産の武器だ。この調子なら刃こぼれによる劣化は無いだろう。叩き折れないという保証もないが。
 そんな事を思っていると物々しい雰囲気の扉へと到達した。見るからにボス部屋だな。ゲームならここで回復やデータのセーブを行うのだろうがここにそんな機能はない。故に俺は扉を開け中へと入る。

「さて、一体何が出るのやら」

 俺はそう言うと同時に扉は閉まりただの壁へと変化した。それと同時に地響きが起こり地面から何かが上がってきているのが分かった。俺は何が起きてもいい様に曲刀を構えそれに備えるのだった。

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