人体強化人間の異世界旅路
対神聖ゼルビア帝国戦争Ⅲ~ライオネス街道野戦Ⅰ~
両軍陣形を形成し終えるとサジタリア王国貴族のベルン伯爵とマーグ侯爵が総大将を務めている軍勢が全身を始めた。両者ともに武闘派で知られる貴族でありマーグ侯爵に至っては息子と共に最前線で陣頭指揮を執っていた。とは言えそんな事をすれば敵に狙われるのは必須であり家臣たちは必死に止めたが効果はなかった。
対する神聖ゼルビア帝国は中央よりも後方に下がっていた右左翼が動き出した。両軍合わせて6万の軍勢が一斉に動き出したのである。
「こちらが動いたのは両翼1万ずつなのに敵は2万……。数の差をここで減らすつもりか?」
サジタリア王国左翼の一番右側にいた将軍ターレスはそう予測した。徴兵された農民たちを指揮する彼の役目はミュレイ率いる王国騎士団が抜かれた際にウィスター率いる直轄軍の援護をする事。その為左翼に属していながら役目は中央への対処ばかりであった。
「敵の動きに注意しろ! 敵がどのような行動を取っても対処できるようにするのだ!」
自分の家臣たちにそう指示を出し戦況を見守る。マーグ侯爵は既に敵とかち合う距離まで近づいておりあと少しすれば戦闘が始まるだろう。一方のベルン伯爵の方も進路を変更しつつ前進しあと少しすれば敵と戦闘になる距離に至っていた。
「(さて、神聖ゼルビア帝国と名を変えただけのタウラス公国が何処まで出来るのか見せてもらうぞ)」
「あれがサジタリア王国軍か」
神聖ゼルビア帝国の本陣でジュン・スギタニはそう呟いた。彼はの隣には名目上とは言え総大将であるペタールがいた。彼は元タウラス公国の大公の息子であり今年で13になるばかりだった。神聖ゼルビア帝国へと名を変え君主も変わった為彼らは大公の地位をはく奪されていた。とは言えこの事は前々からの計画であったためその後の役職や地位は保証されていた。彼も現皇帝アレクサンドルス2世の娘と婚姻を結び皇族の一員となり分家として支えていくことになっていた。
しかし、幼いという事もあり何か輝かしい功績が欲しいと思っていた時にサジタリア王国が攻めてきたのである。これ幸いと彼を総大将にして神聖ゼルビア帝国が迎え撃つ準備を行った。
「ジュン殿、こちらは7万ですが相手は10万。この数の差は後後にも響きますよ? よろしいのですか?」
「勿論だ」
大公の息子として育った彼は英才教育を受けており幼いながらに戦術を理解していた。とは言えそこには経験もなく知識も乏しい為ジュンが考案した今回の作戦に懐疑的であった。それでもジュンを信頼し自身の代わりに指揮を任せていた。
ジュンは不安そうなペタールの方を見ずに答える。
「この作戦は上手く行く。何しろそうなるように準備をしてきたのだからな」
その準備の中身をペタールは知らないが彼が言うのだから大丈夫だろうと思い不安を心の中に押し込み総大将として毅然とした態度で戦場を見る。
両軍の戦闘は始まっており両者互角の兵で戦っていた。更に敵に動きがありその数は合わせて2万にも上る。両者の間に兵力差はなくなり今後は一進一退の攻防が続いていくことになるのだろう。それでも、ジュンの表情には明らかに余裕があるのだった。
対する神聖ゼルビア帝国は中央よりも後方に下がっていた右左翼が動き出した。両軍合わせて6万の軍勢が一斉に動き出したのである。
「こちらが動いたのは両翼1万ずつなのに敵は2万……。数の差をここで減らすつもりか?」
サジタリア王国左翼の一番右側にいた将軍ターレスはそう予測した。徴兵された農民たちを指揮する彼の役目はミュレイ率いる王国騎士団が抜かれた際にウィスター率いる直轄軍の援護をする事。その為左翼に属していながら役目は中央への対処ばかりであった。
「敵の動きに注意しろ! 敵がどのような行動を取っても対処できるようにするのだ!」
自分の家臣たちにそう指示を出し戦況を見守る。マーグ侯爵は既に敵とかち合う距離まで近づいておりあと少しすれば戦闘が始まるだろう。一方のベルン伯爵の方も進路を変更しつつ前進しあと少しすれば敵と戦闘になる距離に至っていた。
「(さて、神聖ゼルビア帝国と名を変えただけのタウラス公国が何処まで出来るのか見せてもらうぞ)」
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ジュンは不安そうなペタールの方を見ずに答える。
「この作戦は上手く行く。何しろそうなるように準備をしてきたのだからな」
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両軍の戦闘は始まっており両者互角の兵で戦っていた。更に敵に動きがありその数は合わせて2万にも上る。両者の間に兵力差はなくなり今後は一進一退の攻防が続いていくことになるのだろう。それでも、ジュンの表情には明らかに余裕があるのだった。
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