人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

魔帝国の建国

『我が配下の魔族たちよ!』

 この日、魔王であるルグスはラ=サルヴァーグにある魔王城のバルコニーから演説を行っていた。魔王城の周りにはたくさんの魔族と魔物の姿があり人間が見れば顔を青どころか白にしかねない光景が広がっていた。
 魔王の後ろには十の席が用意されており魔王軍の中でも絶大な権力を保有する幹部たちが座っていた。数日前に戻ってきたばかりのエイザ=ルートに目元のみを隠せる仮面をつけた工作員を率いる女性、ヤノト。そして何処か楽し気に椅子を後ろに倒しゆらゆらと前後に揺れているギ・ハなど……。見るだけで圧倒的な圧を感じさせる魔王軍の幹部が勢ぞろいしていた。

『千年前、偉大なる初代魔王は大陸を統一したが人間の卑劣なる裏切りに遭い死去した……。我ら魔族に取ってはかけがえのない人を失ってしまったのだ』

 その言葉に魔族は悲し気な顔になり中には泣いてしまう者もいた。ルグスも悲痛な顔をしており悔し気な気持ちが混じった言葉を話す。

『その後我らはこの大陸を追われ当時我らを庇ってくれたミスラムへと逃げる事を余儀なくされた。
しかし!我らは千年と言う時をかけここに復活した!
長い年月をかけて我らは交わり互いの弱点をなくし部族間の争いを完全に消した!千年前には共通の敵を作る事で協力した我らはそんな事がなくとも協力できる関係になった!
今こそ!今こそ我らの悲願を叶える時である!初代魔王陛下が望まれた”魔族の理想郷”を!
故に我はここに宣言する!千年前の偉大なる”魔国”!それの正統なる後継国家”魔帝国”の建国を!
魔族たちよ!立ち上がれ!裏切り者の人間をみなごろしにして悲願を叶えるのだ!』

「「「おおぉぉぉぉぉっ!!!」」」

『我ら魔族に勝利を!』

「「「「「我らに勝利を!人類に終末を!」」」」」

 この日、12大国のど真ん中に一つの国家が建国された。魔族の国家の建国はあっという間に各国に伝わり驚愕させた。しかし、それだけではなかった。
 この建国宣言より一日遅れてタウラス公国はレオル帝国の全土併合を宣言すると同時に千年前に存在した国家”ゼルビア帝国”の皇族であるアレクサンドルス2世を皇帝とする”神星ゼルビア帝国”となる事を宣言したのである。それに加えて魔帝国と同盟を結ぶと宣言した。
 これにより各国は警戒を上げ国境を接する二重帝国、ポラリス伯国、スコルピオン帝国、サジタリア王国は国境の軍勢を増員する事を決定するのだった。

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