人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

天使の降臨祭・メインイベント前編

【皆さん!今年も天使の降臨祭のメインイベントの時間がやってまいりました!】

 毎年メインイベントの司会を行っている男の声が広間中に響く。風の魔法を用いた疑似的な拡声器の様な状態で喋り始めた。司会の言葉に広間の熱気は一気に上昇する。皆このイベントを楽しみにしている人たちであり中にはどんな娘が出るのか?去年の○○も今年は出場するのか?美人がいたらそいつを応援しよう。などと言った声があちこちから聞こえてくる。中には出演者を描きたいのか絵を描く準備を完了させて今か今かと待っている者もいる。
 広間の熱気を諸に感じる司会は長引かせるのは酷だなと思い早速今年の出場者を発表する。

【それでは!早速今年の出場者に登場していただきましょう!どうぞ!】

 司会の言葉と共に音楽が鳴り、一人ずつ姿を現していく。一人、また一人と姿を現すたびに広間の観客たちの歓声が上がっていく。
 そして最後の一人が出て来た時、観客たちはおおぉ!と言う驚きと歓声の入り混じった声を上げた。それだけ美人いや、美少女だったからだ。漆黒の髪を肩の所で無造作に切られているがそれで本人の美貌を損なわせる事は無くむしろ整えられた髪には出せない美しさを出している。髪とは反対に白く、シミ一つない肌は見ているだけで触り心地が素晴らしいと感じさせ、紫と黄色と言う珍しいオッドアイは見る者全ての意識を吸い込みそうな不思議な感じを出している。
 すらりと伸びつつも小さな体躯、引っ込むところは引っ込んでいるが出ている所はほとんどない平坦な体は彼女に幼い雰囲気を与えている。もし、ここに小児性愛者ペドフィリアがいれば大興奮をしていただろう。例え居たとしてもこの広間の中で認識するのは困難であろう事は容易に想像が出来た。

【観客の皆さん方の熱気もドンドン上がってきていますね!では、競技の前に軽く自己紹介をしていただきましょう!1番の方からお願いします!】
「はい!1番、りエナと言います!ケラース郊外のヴァネ村から来ました!特技は……」

 1番の人から順に自己紹介を行っていき遂にナタリーの番となった。観客たちの視線が一斉に向けられるがナタリーは全く動じた様子を見せずに言った。

「……8番、ナタリー。優勝、する」

 名前だけ言い、優勝宣言するナタリーの発言はまさに宣戦布告と同時に観客たちの興奮を上げるには充分な効果を上げるのだった。

【……今年の参加者は面白い者もいるようですね。では参加者の自己紹介も終わったタイミングですが一応知らない人もいると思うので当イベントについて説明させていただきます】

 自己紹介を終え司会はイベント開始前に様々な説明を行う。

【まず、参加者は女性限定で毎年ランダムに選出される競技をこなしてもらいます。基本的に個人戦で手を組む事は禁止されていませんが命を脅かす行為を行った際には即時失格とさせていただきます。競技は一回行われます。その優勝者が今年の天使となり時計塔より魔道具を用いて飛翔していただきます!今年の参加者は皆見た目麗しい女性ばかりです。誰が優勝しても素晴らしい姿を見ることが出来るでしょう!】

 司会の言葉に観客たちの完成は更に大きくなった。司会の言うとおり今年の参加者はナタリーを筆頭に美女、美少女が集まっていた。観客たちは、それぞれの姿を思い浮かべながら誰に優勝してほしいのかを決めていく。しかし、この中では飛びぬけて美人であるナタリーが一番の人気であった。
 観客たちの興奮が高まっていくのを目元のみを隠した仮面越しに司会は確認した。そして、そろそろ始めようと考えると声を張り上げた。

【それでは!早速競技を発表しましょう!今年は!これだ!】

 司会のその言葉と同時に地響きが鳴る。そして、ステージに様々な木材や石で出来たモニュメントの様な塔が出来上がった。天辺はまっすぐには伸びておらず、時計塔へと延びていた。

【今年は例年とは違いこの塔を登っていただきます。ゴールは見ての通り時計塔、そう!優勝者はそのまま魔道具を用いて飛翔してもらうのです!例年は時計塔を登るのに時間が掛かっていましたが、今年は熱気を覚ます余裕もなく飛翔が始まるのです!】

 例年には見られない競技に観客はざわめくがその意図を知り歓声が上がる。時計塔に向かって伸びる都合上、観客のいる広間の上を通る事になる。必然的に参加者たちの雄姿をしたから眺める形になるのである。例え落ちたとしても風魔法を使える魔道具を持ったスタッフが待機しているほか、間に合わなかったとしても観客たちが肉のクッションとなれる。観客の大半も美女を助ける事が出来て名誉の負傷と言えるだろう。

【さぁ!準備は完了しました!私の合図とともにスタートです!】

 司会は光るボールのような物を生み出す。参加者たちは直ぐにでも動けるように構える。その瞬間、誰もが開始の合図を今か今か、と待つ。
 そして、

【それでは……、スタートぉっ!】

 光るボールを上空に投げるとパンと言う乾いた破裂音と共に少し眩しい光が広間に降り注ぐ。それを確認した参加者たちは一斉に走り出した。

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