人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

天使の降臨祭・2日目

 あっという間に夜は過ぎていき日が昇り、2日目を迎えた。ケラースの街は相も変わらず活気を見せているが昨日の様な人があふれているという事はない。どうやらメイアちゃんの言うとおりらしい。俺達は昨日の晩に話していたように演劇を見に行く。メイアちゃんの案内のもとやってきたのはとある広場でそこには演劇のセットが置かれており誰でも見られるようにと椅子が並べられている。
 始まる直前だった為か椅子が空いてあるところはなく仕方なく後ろの方で立って眺める事になった。
 前日に話は聞いていたが旅人が偶々立ち寄った町の裕福な娘と愛を育むという内容だが想像していたよりも何倍も面白かった。笑わせたいところは思わずクスリ、と笑ってしまいそうになるものから声を上げて笑いそうになる場面と言った風にきっちりと笑いを取っていた。逆に悲しいシーンでは本当に泣いてしまうのでは、と思うほどだった。メイアちゃんは号泣しているしナタリーも無表情の中に大量の興味の感情を浮かばせてみている。よほどこの劇が気に入ったようだ。

「ありがとうございました!」

 最終的に様々な試練を乗り越えた二人は愛を誓いあいながら旅だって行くというエンディングで劇は終了した。誰でも簡単に見られる劇の割には随分と作り込まれていて演じる役者もまるで本人かの様な迫力があった。セリフにも感情が乗り棒読みな部分は全くなかった。

「中々良かったな」
「初めて見た」
「私もこういう演劇は初めて見ました!」

 演劇が終わり観客たちがそれぞれ解散していく中俺は右腕をナタリーに、左腕をメイアちゃんに捕まれながら歩く。まさに両手に花と言う状況だが恋人と言うよりも兄妹に見えてしまうな。それでも十分に美少女と言える二人と並ぶ俺に対して嫉妬の視線が飛んでくる。昨日のように相手を見る余裕もないくらい道が混んでいるわけではないからな。

「次は何をしますか?どこでも案内しますよ」
「んー。俺は明日のメインイベント以外で見たいものは今のところないし……。ナタリーは何か見たいものがあるか?」
「ない」

 ナタリーの即答で行き先が決まらなくなった。メイアちゃんは毎年見ているし今更行きたい場所もないだろうし俺とナタリーはそこまで興味があるわけではない。つまり、ただただ散歩のように歩くしか出来ないという訳だ。

「ま、まぁ。街を見て回るというのも面白いかもしれませんよ?」
「そうか?ならそうするか」

 俺たちはゆっくりとケラースの街並みを見て歩く。この日はこれに終始したが中々楽しめた。今更だがここがファンタジーの世界なんだと思えてくる光景だった。

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