人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

少女

「申し訳ございません。只今宿は満室でして……」
「え?」

 宿に付いた俺は女将さんからの言葉に俺は固まる。とは言えこうなる事はある程度予測できていた。というのも、この宿で五件目だからだ。最初の宿の人に満室と言われるのと一緒に聞かされた話だが、どうやらこの時期はケラースで祭りが行われるらしい。なんでも千年近く前から続く祭りらしい。その為いつも賑やかなこの都市も倍以上の人込みになっているらしい。
 そんなわけで祭りがもうすぐ始まるというこの時期は何処も満室だったという訳だ。俺は五件目の宿を出るとナタリーと顔を見合わせる。このままでは野宿が決定してしまう。どうしようかと悩んでいるとふと、横から声をかけられた。

「お兄さんたち!宿が取れなくて困っているのかい?」
「ん?」

 俺とナタリーは声の方を見るとナタリーと同じくらいの年頃の女の子がこちらを見ていた。その事もは俺が視線を向けた事で笑みを浮かべた。

「良かったら私の家に来ないかい?」
「君の家に?」
「うん!……まぁ、宿程キレイじゃないし少し狭いと思うけど野宿よりは良いと思うよ」
「ふむ……、値段は?」
「そうだね……。お兄さんたち二人ならこれくらいでどう?」

 そう言って少女が提示してきた額は王都で泊まった宿の何倍も安かった。ケラースの物価はそれほど安いのかそれともこの少女の家が貧乏なのかはわからないが恐らく後者だろうな。態々家に旅人を泊めるという行為をする時点で貧乏か、金を稼ぎたいか、ただの親切しかない。親切と言う訳ではなさそうだし金を稼ぎたいならもう少し高くてもいいくらいだ。つまり、この少女は貧乏という事になる。
 とは言え野宿に比べればマシだからな。ここは少女の提案に乗るとしよう。ナタリーの方を見れば頭を縦に振って賛同しているようだしな。

「分かった。取り敢えず一泊頼む」
「あれ?祭りは見ないのかい?祭りは明日から三日間続くよ」
「そうなのか?なら四日間お願いしようかな」
「本当!?それじゃ家に案内するよ!」

 上機嫌で歩く少女についていく。四日間泊っても王都より安い。家がどの程度なのかはわからないが場合によっては宿に泊まるより賢い選択だったかもしれないな

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