人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

王都滞在・Ⅴ

 裏路地は予想以上に治安が悪いようだ。あれから四回も襲われた。その度に無力かしていったがあまりにもしつこい為いい加減にしてくれと思っていた。

「ここまでしつこいなら表通りに出るか」
「……賛成」

 ナタリーも鬱陶しかったようで静かに同意した。その結果俺たちは再び人の多さに辟易する事となったが裏路地で何度も襲われるよりはマシだと思うようにした。
 そして、表通りに出たおかげで襲われることはなくなり俺とナタリーは王都アポロンを巡り楽しいひと時を過ごすことが出来たのだった。
















「強いな……」

 王都アポロンの裏路地、数年前から”ラセツ通り”と呼ばれるようになったその通りに面するとある建物の中。そこでは数人の男がテーブルに座っていた。彼らの目の前には光輝く水晶から投影される映像を覗き込んでいた。映像には先ほどまで襲ってくる物とりを返り討ちにしている和人たちの姿があった。
 その映像を見て一言呟いた男、レンは和人を警戒するように目を細めている。レンの周りにいる者達、彼の部下たちはそれぞれの意見を言う。

「あいつらは下っ端の下っ端だったがそこまで完封されるとは……」
「あいつらがここにいる以上計画を送らせるべきでは?」
「それは出来んぞ!王国騎士団の半数と団長代理である小娘がいないというこれほどの好条件は次何時訪れるのか……」
「だが奴らが妨害してきたらどうする?あの強さだ。俺たちでは相手にならないぞ」
「確実に敵になるとは限らないだろ」

 様々な想定を話す部下たちにレンが右手を上げて制する。瞬間部下たちの話し声はぴたりと止みレンの方を見る。部下たちを制したレンは静かに話し始める。

「……我らがここまで来るのに6年掛かった。俺がこの計画を立ててから考えれば10年だ。これ以上待ってもいずれ王国に気付かれるだろう。今やるしかない」
「しかし、あいつらの強さは見ての通りですが……」
「強いといってもたかが・・・二人だろう。王都全てが対象となる我らの計画を阻止することな出来まい」

 レンの言葉に「確かに……」や「その通りだな」と言った賛同の声が上がる。それを聞いたレンは勢いよく立ち上がった。

「諸君!我らの計画『サジタリア王国の転覆』の時は来た!全ての支持者に連絡せよ!日が昇ると同時に計画を実行する、とな!」
「「「「「おう!」」」」」
「さぁ、今こそ我らの国を作ろうではないか」

 そう言ってレンは笑みを浮かべるのだった。

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