人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

暴風の勇者ハバト・マケイラ その1

 この世界にきて三人目の強者にしてサジタリア王国の勇者であるハバト・マケイラ。まさかこんなところで会う事になるなんてな。俺は何時でも動けるように体制を取る。相手は勇者だ。最悪レオル帝国の勇者であるナタリーと一緒に行動しているから殺そうとして来る可能性もある。
 ナタリーも無表情を崩し眉を顰めて攻撃態勢を整えている。俺との時でも構えなかったナタリーが構えるという事は少なくともナタリーを警戒させる実力は持っているという事だ。

「おいおい。俺は別に争いに来たわけじゃないぞ」
「いきなりそんな圧を出しておいてその言葉は信じられないな」
「まぁ、そりゃそうか」

 ハバトはそう言って肩をすくめる。俺は何時でも動けるように身構えているがそれは相手も同じようだ。おどけた様子だが何時でも動けるように構えこそしていないがすぐに行動できるようにしている。もしここでとびかかればすぐに対処しそれどころか反撃を受ける可能性すらあった。上着の左胸の後ろに銃がしまってあるが取り出し銃口を向ける間に接近を許されそうだ。ほかの武器は全て宿に置いてきている。とてもじゃないが今のままでは勝てないし逃げきれるかどうかも分からないな。

「……それで?要件はなんだ?」
「それはこっちのセリフだよ。敵国レオル帝国の勇者がこんなところで何をしているんだ?」
「む……、レオル関係ない。辞めて、きた」
「へ?」

 ナタリーの言葉にハバトは拍子抜けしたように間抜けな声を出し次いで大声で笑い始めた。近くにいた人達が怪訝な様子でこちらを見るもすぐに目を逸らしていく。おそらくかかわりあいたくないのだろう。

「ま、まさか勇者を辞めてきたとか。こ、こんの予想できるわけないじゃん!ジェーン聞いたか?」
「はい。まさか勇者を辞めているとは思いませんでした」

 ハバトの隣に何時の間にか女性が立っているがどうやらハバトの従者のようだ。爆笑するハバトの隣で相槌を打ちながら口元が引くついている。おそらく笑うのを我慢しているのだろう。

 こうして俺とハバト・マケイラの初対面はなんとも言えない形となったのだった。

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