人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

人体強化人間VS闇の勇者その1

「困ったぁ……」

 和人はベアード砦にある自室にて頭をかいていた。その理由は弾薬の不足である。和人はある程度弾薬を消費した状態でこの世界に来ていた。そして5000の兵を倒すのにも弾薬を消費したためライフルの弾薬はほぼ空でデザートイーグル改は十数発、スナイパーライフルに至っては5発しか残っていなかった。刀については手入れを欠かしていないため特に刃こぼれとかは今のところないがこのままという訳にもいかない。故に何処か鍛冶屋に修理をしてもらう必要があるがここは異世界である。刀を修理できるのか分からなかった。

「せめて行き来が出来ればいいんだが……」
「何処を行き来したいの?」

 聞きなれない女性の声。それを聞いた和人の動きは早かった。刀を振り向きざまに抜刀しそのまま切りつける。強化された和人の居合は常人なら避ける事すら出来ないだろう。
 しかし、声の主は軽々と飛びのいて避けて見せた。まるで重力が低いかの様な動きを取る女性、侵入者に和人の警戒は更に上がる。

「いきなり、危ない、よ?」

 侵入者は女性、それも少女と言える体躯であった。現代なら高校生、いや中学生くらいであろうか?紫と黄色に輝く両目で和人を珍しそうに観察している。だが、決して油断できないのは先ほどの動きで分かっている。……和人はゆっくりと刀を構える。
 一方の少女は不思議そうに和人を見ていたがやがて納得したような表情を取る。と言っても無表情なので分かり辛いが。

「……あ、もしかして戦うの?」
「そうだが、お前は違うのか?」
「んー、そう?違う?分からない」
「……なら何でここにいるんだ?」
「お仕事?命令?」
「命令?一体何を命令されたんだ?」

 要領を得ない少女の言葉に若干の苛立ちを感じつつ和人は情報を得ようと話しかける。少女は迷ったようにうねりながら言葉を出していく。

「ここの人たちの捕縛?殺戮?が命令」
「……つまりお前はレオル帝国の人間か」
「うん、ナタリー・ダークネス。闇を司る勇者」
「……マジかよ、とんだ大物だな」

 と言いつつも和人は勇者の存在を知らなかった。後でレナードさんに聞いてみようと思いつつ敵だと認識したナタリーに刀を向ける。

「敵だというなら容赦はしない。覚悟しろ」
「戦闘?試合?は苦手、なんだけど」

「人体強化人間の異世界旅路」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く