青春クロスロード
一日千秋⑦ ~ラスボスとおねだり姫~
そんなちょっとしたザワつきに気がついたブンさんが近づいてくると固まる二郎に声をかけた。
「あれ、二郎君どうしたんだ、何だか穏やかじゃ無いね。ザキさん何があったんだい?」
「いや、何が何だか我にもわからなくて」
困った表情で心配そうにするブンさんとザキさんを尻目に二郎は鬼の形相でこちらに睨み付けてくる相手の女を凝視した。
そこには思うように操作できないゲームに対してプンプンと怒りながら、背中まで伸びる綺麗な黒髪をブンブン振り悔しそうな表情を見せつつも隠しきれない品と優雅さを併せ持ち、なんといってもこのガチャガチャした騒がしい雰囲気のゲームセンターが全くと言って良いほど似合わない清楚で気品の溢れる女子高生が座っていた。
つまり凜だった。
「じーろーくーん!!やっと見つけたわよ!!」
「ほぉあ!!なんで凜先輩がここに?!」
最終ステージに登場する『ベガ』と負けず劣らずのオーラを放つ凜は二郎にとってはリアルのボスキャラ的存在であり、二郎にとってのオアシスとなりつつあるこのゲ-センに突如現れた凜のインパクトに二郎は度肝を抜かれていた。
「なんでじゃないでしょ。こんな所で何日も時間を潰して、今週ずっと部活にも行っていないらしいじゃない。昨日一君が私にこっそり二郎君がグレたって教えてくれたのよ。似合わないことしてないでいつも通りの生活に戻りなさいな」
ある程度の事情を一から聞いた凜は、元々数少ない友人から孤立し完全にぼっちとなったことで半ばヤケとなり、部活をサボり遊びほうけている二郎に若干呆れつつも、なんだかんだ心配して放課後駅周辺の学生が集まりそうな店を探しようやくここゲーセンで二郎を見つけ出したのだった。
そして二郎発見当初はさっさと声を掛けて二郎を外へ連れ出す算段だったが、ヤケに真剣にゲームをプレイする二郎を見てそれに興味をもった凜は勢いで対戦を挑みボコボコにされ今に至るのであった。
「別にグレてなんか無いですよ。て言うか、凜先輩には関係ないじゃ無いですか。まったく一の奴め、余計な事を先輩に話しやがって。と、とにかく凜先輩が心配するようなことは無いんすから大人しく帰って下さいよ」
二郎はある意味で一番頭が上がらない相手である凜を遠ざけるようするも凜が聞く耳を持つことは無かった。
「何をバカな事言っているの。二郎君みたいにやさぐれている子を心配してくれる友達がいるだけ幸せなのよ。バカな事ばかり言っているとそのうち誰も相手にしてくれなくなっちゃうのだから観念しなさい!」
バカな子どもを叱りつけるように言う凜に対して意地を張る二郎も今回ばかりは簡単には引き下がることは無かった。
「もうお袋みたいなこと言って。何を言っても今日の俺は帰りませんよ!」
「この分からず屋。二郎君のくせに生意気な事言って。私がわざわざあちこち探し回って見つけてあげたって言うのに~もう~」
なにやら不穏な空気を漂わせいがみ合う二人に対しブンさんが恐る恐る言葉を投げかけた。
「あの~取り込み中に申し訳ないけど、公衆の面前でケンカはよくないと思うなぁ。まぁとりあいず一度落ち着こうじゃないか。なぁ二郎君」
ブンさんのごもっともな意見に二郎も冷静を取り戻し言った。
「そうですね。すいません、急に驚かせてしまい」
なんとかケンカが収まったことに胸をなで下ろしながら、いまいち状況がつかめないブンさんは凜の正体が気になったのか二郎に答えを求めるように尋ねた。
「いやいや。分かってくれたならそれで大丈夫さ。ところで二郎君。こちらの可憐なお嬢さんは誰だい?」
「本当にすいませんでした。えっとこの人は俺の高校の・・」
「彼女です」
「は?!」
「「え!?」」
二郎、ブンさん、ザキさんの頭の上に多数の!?が浮かぶ中、凜は再度ハッキリと言ってのけた。
「私は二郎君の彼女です。バカな彼がご迷惑をおかけしてすいません」
「ちょっと、ちょっと、しれっと真顔で嘘つかないで下さいよ。この人はただの高校の先輩ですよ」
焦った様子で否定する二郎にザキさんとブンさんは温かい表情で言った。
「いやいやそんな隠す必要はござらんよ、山田氏。そんな我らに気を遣うこともありませぬ。なによりそんなに否定したら彼女さんが可愛いそうですぞ」
「そうだよ、二郎君。こんなに可愛い彼女がいるなんて驚いたけど、いいじゃないか。僕たちの事は良いから彼女と早く仲直りして今日は早く帰った方が良いと思うよ」
完全に勘違いをしている二人に再度否定を試みようと二郎が説明するも全て恥じらいを隠すための二郎の抗弁と受け取っていたブンさんとザキさんは二郎から凜に興味を移して話し掛けていた。
「いやぁこの度は彼を取ってしまって申し訳なかったですね、二郎君の彼女さん。どうか二郎君を許してあげてくださいね」
「いやはや、山田氏の彼女さんとは驚きました。我の大学にも貴女ほどの美女はなかなかいませんよ。羨ましい事限りなしですぞ」
完全に凜の言葉を鵜呑みにして凜を二郎の彼女と呼ぶ二人にすっかり気分をよくした凜は普段は中々見せない満面の笑みで二人の言葉に対して懇切丁寧に受け応えた。
「いえいえ、こちらこそウチの二郎がご迷惑おかけしてしまって申し訳ありませんでした。私、正直こう言った場所には不良の人が屯していると思っておりましたが、お二人のような知性的で話のわかる素敵な方々がいるとは思いもしませんでした。あの喉なんか渇きませんか?よかったら私、飲み物でも買ってきますのでお茶か何か飲みませんか」
「いやいや、そんな山田君の彼女さんにそんなことさせられないよ」
「そうですぞ。山田氏の彼女さんというなら寧ろ我が何かご馳走させて頂きますぞ」
「いえいえそんな」
「いやいやそんな」
そんな気の利く出来た彼女を演じる凜に歳上としての矜持を示そうとするブンさんとザキさんに対し諦めの表情をみせる二郎はとにかく話を進めようと大きなため息を付いた後、ジト目で凜に問いかけた。
「はぁ~もう何でもいいですよ。それで凜先輩は一体どうしてこんなところまで押しかけて来たんです?何が目的ですか?」
「だから一君に聞いたって言ったでしょ。ダブルデートでやらかして落ち込んでいる二郎君を笑いに、じゃなかった心配して探しに来てあげたのよ。クラスの子やレベッカさんとも絶交中でグレちゃった二郎君をからかいに来た、じゃなかったわ。慰めに来てあげたのよ。感謝しなさい」
凜は実際のところ本当に二郎を心配していたが、町中探し回りやっとこさ二郎に会えたことが思いのほか嬉しく、また二学期が始まって以来1ヶ月近く二郎とまともに会話をすることがなかったせいか舞い上がっている自分を隠すため、いつも以上に二郎をからかうような態度を見せると、二郎も二郎でまた凜のおふざけが始まったと誤解していつも通りの対応を見せた。
「いやいや、心配しているって言ったって、もうからかいに来たって言っちゃってますからね。はぁ~先輩も本当に物好きな人ですね。俺みたいな奴にからんで何が楽しんですか。先輩も受験生なんですから、生徒会が無いなら大人しく塾に行くか、家で勉強した方が良いと思いますよ」
二郎が自分の事を棚に上げて凜に諫言を言うと凜も負けじと言い返した。
「ご心配ありがたいけど、二郎君に言われるまでも無く夏期講習もしっかり行ったし、二学期が始まってからも日々の自習もバッチリやっているわよ。もちろん普段の授業も抜かりないし成績も心配されるようなことは一つも無いわ。それよりも毎日勉強、勉強で、たまには私だって息抜きしたいのよ。そうだ、今日はこれから私に付き合いなさい。二郎君も気晴らしがしたいならちょうど良いでしょ」
「だからなんでそこで俺が出てくるんですか。わざわざこんなところまで来て俺に絡む事は無いでしょ。折角の休暇日ならほのか先輩とか誰か友達を誘ってその辺のカフェでガールズトークでもしてくりゃ良いじゃ無いですか。こんな陰気くさい男達が集まるゲーセンなんてくること無いでしょうよ」
一向に凜の真意に気付かない二郎は偶然立ち寄ったゲーセンで自分と出くわし、暇潰しにからかいに来たのだと思っているため面倒事はゴメンだと凜をあしらうように応えた。
そんな二郎の言い分にもの申したのは凜では無く割と本気で冷たい視線を送るブンさん、ザキさんの二人だった。
「二郎君、それはいくら何でも酷いじゃないか。せっかく心配して来てくれた彼女さんにそんなこと言っちゃダメだぞ。人間心配されているうちが華だよ。ちゃんと謝って仲直りしないと、ほらほら早く」
「山田氏。何バカな事を言っているのですか。こんな美人の彼女を差し置いて我らとゲーム三昧とは正気ですか?悪いこと言わないですから、彼女さんとちゃんと話をせねばいけませんぞ!」
思いも寄らない二人からの言葉に二郎は怯んでいた。というもの短い期間であったが、ブンさんとザキさんは二郎にとって師匠、兄弟子のような関係となっており、実際に年上の二人から真剣な口調で諭された事で戸惑いを見せつつ何とか口を開いた。
「いや、でも、さっきも説明しましたが、凜先輩は俺の彼女でもなんでもないんですが・・・」
二郎がしどろもどろになりながら言葉を取り繕っているとそれを遮るように凜が言った。
「もう良いんです。ブンさん、ザキさんありがとうございます。言葉で言ってもわからないなら、もう実力行使よ。私が勝ったら私の言うことを何でも聞きなさい」
「なんですと!?」
「だからこのゲームで勝負して私が勝ったら私の言うことを聞きなさいって言ったのよ」
「なんすか、急に。まぁ別に良いですけど、言っておきますが100回やっても今のままじゃ俺には勝てませんけど良いんですか」
「もちろん良いわよ。それじゃ約束よ。私が勝ったら何でも言うこと聞く、それで良いわね」
「はいはい、わかりましたよ。まぁ5回もやれば無理だと分かるでしょうよ」
二郎は荒唐無稽な凜の提案を鼻で笑うように言っていると、凜はふと振り返り両手を祈るように交わし、高校ではまず絶対に見せないようなおねだりをするような可愛らしい口調で言い放った。
「そう言うことなので、ブンさん、ザキさん、どうか私を勝たせて下さい。私頑張りますから訓練をお願いします」
凜の必殺おねだりを目の前で喰らった二人はすでに凜の従順な僕と化していた。
「も、もちろんですとも。打倒二郎君!絶対に勝ちましょう、彼女さん」
「なんと!姫からの直々の勅命とは!!ここは男を見せねばなりませんな。悪鬼山田氏を必ずや退治して見せましょう」
すっかりやる気なった二人に二郎が唖然とする中で、凜はくすりと笑みを浮かべながら翻弄される男子達を見やるのであった。
「あれ、二郎君どうしたんだ、何だか穏やかじゃ無いね。ザキさん何があったんだい?」
「いや、何が何だか我にもわからなくて」
困った表情で心配そうにするブンさんとザキさんを尻目に二郎は鬼の形相でこちらに睨み付けてくる相手の女を凝視した。
そこには思うように操作できないゲームに対してプンプンと怒りながら、背中まで伸びる綺麗な黒髪をブンブン振り悔しそうな表情を見せつつも隠しきれない品と優雅さを併せ持ち、なんといってもこのガチャガチャした騒がしい雰囲気のゲームセンターが全くと言って良いほど似合わない清楚で気品の溢れる女子高生が座っていた。
つまり凜だった。
「じーろーくーん!!やっと見つけたわよ!!」
「ほぉあ!!なんで凜先輩がここに?!」
最終ステージに登場する『ベガ』と負けず劣らずのオーラを放つ凜は二郎にとってはリアルのボスキャラ的存在であり、二郎にとってのオアシスとなりつつあるこのゲ-センに突如現れた凜のインパクトに二郎は度肝を抜かれていた。
「なんでじゃないでしょ。こんな所で何日も時間を潰して、今週ずっと部活にも行っていないらしいじゃない。昨日一君が私にこっそり二郎君がグレたって教えてくれたのよ。似合わないことしてないでいつも通りの生活に戻りなさいな」
ある程度の事情を一から聞いた凜は、元々数少ない友人から孤立し完全にぼっちとなったことで半ばヤケとなり、部活をサボり遊びほうけている二郎に若干呆れつつも、なんだかんだ心配して放課後駅周辺の学生が集まりそうな店を探しようやくここゲーセンで二郎を見つけ出したのだった。
そして二郎発見当初はさっさと声を掛けて二郎を外へ連れ出す算段だったが、ヤケに真剣にゲームをプレイする二郎を見てそれに興味をもった凜は勢いで対戦を挑みボコボコにされ今に至るのであった。
「別にグレてなんか無いですよ。て言うか、凜先輩には関係ないじゃ無いですか。まったく一の奴め、余計な事を先輩に話しやがって。と、とにかく凜先輩が心配するようなことは無いんすから大人しく帰って下さいよ」
二郎はある意味で一番頭が上がらない相手である凜を遠ざけるようするも凜が聞く耳を持つことは無かった。
「何をバカな事言っているの。二郎君みたいにやさぐれている子を心配してくれる友達がいるだけ幸せなのよ。バカな事ばかり言っているとそのうち誰も相手にしてくれなくなっちゃうのだから観念しなさい!」
バカな子どもを叱りつけるように言う凜に対して意地を張る二郎も今回ばかりは簡単には引き下がることは無かった。
「もうお袋みたいなこと言って。何を言っても今日の俺は帰りませんよ!」
「この分からず屋。二郎君のくせに生意気な事言って。私がわざわざあちこち探し回って見つけてあげたって言うのに~もう~」
なにやら不穏な空気を漂わせいがみ合う二人に対しブンさんが恐る恐る言葉を投げかけた。
「あの~取り込み中に申し訳ないけど、公衆の面前でケンカはよくないと思うなぁ。まぁとりあいず一度落ち着こうじゃないか。なぁ二郎君」
ブンさんのごもっともな意見に二郎も冷静を取り戻し言った。
「そうですね。すいません、急に驚かせてしまい」
なんとかケンカが収まったことに胸をなで下ろしながら、いまいち状況がつかめないブンさんは凜の正体が気になったのか二郎に答えを求めるように尋ねた。
「いやいや。分かってくれたならそれで大丈夫さ。ところで二郎君。こちらの可憐なお嬢さんは誰だい?」
「本当にすいませんでした。えっとこの人は俺の高校の・・」
「彼女です」
「は?!」
「「え!?」」
二郎、ブンさん、ザキさんの頭の上に多数の!?が浮かぶ中、凜は再度ハッキリと言ってのけた。
「私は二郎君の彼女です。バカな彼がご迷惑をおかけしてすいません」
「ちょっと、ちょっと、しれっと真顔で嘘つかないで下さいよ。この人はただの高校の先輩ですよ」
焦った様子で否定する二郎にザキさんとブンさんは温かい表情で言った。
「いやいやそんな隠す必要はござらんよ、山田氏。そんな我らに気を遣うこともありませぬ。なによりそんなに否定したら彼女さんが可愛いそうですぞ」
「そうだよ、二郎君。こんなに可愛い彼女がいるなんて驚いたけど、いいじゃないか。僕たちの事は良いから彼女と早く仲直りして今日は早く帰った方が良いと思うよ」
完全に勘違いをしている二人に再度否定を試みようと二郎が説明するも全て恥じらいを隠すための二郎の抗弁と受け取っていたブンさんとザキさんは二郎から凜に興味を移して話し掛けていた。
「いやぁこの度は彼を取ってしまって申し訳なかったですね、二郎君の彼女さん。どうか二郎君を許してあげてくださいね」
「いやはや、山田氏の彼女さんとは驚きました。我の大学にも貴女ほどの美女はなかなかいませんよ。羨ましい事限りなしですぞ」
完全に凜の言葉を鵜呑みにして凜を二郎の彼女と呼ぶ二人にすっかり気分をよくした凜は普段は中々見せない満面の笑みで二人の言葉に対して懇切丁寧に受け応えた。
「いえいえ、こちらこそウチの二郎がご迷惑おかけしてしまって申し訳ありませんでした。私、正直こう言った場所には不良の人が屯していると思っておりましたが、お二人のような知性的で話のわかる素敵な方々がいるとは思いもしませんでした。あの喉なんか渇きませんか?よかったら私、飲み物でも買ってきますのでお茶か何か飲みませんか」
「いやいや、そんな山田君の彼女さんにそんなことさせられないよ」
「そうですぞ。山田氏の彼女さんというなら寧ろ我が何かご馳走させて頂きますぞ」
「いえいえそんな」
「いやいやそんな」
そんな気の利く出来た彼女を演じる凜に歳上としての矜持を示そうとするブンさんとザキさんに対し諦めの表情をみせる二郎はとにかく話を進めようと大きなため息を付いた後、ジト目で凜に問いかけた。
「はぁ~もう何でもいいですよ。それで凜先輩は一体どうしてこんなところまで押しかけて来たんです?何が目的ですか?」
「だから一君に聞いたって言ったでしょ。ダブルデートでやらかして落ち込んでいる二郎君を笑いに、じゃなかった心配して探しに来てあげたのよ。クラスの子やレベッカさんとも絶交中でグレちゃった二郎君をからかいに来た、じゃなかったわ。慰めに来てあげたのよ。感謝しなさい」
凜は実際のところ本当に二郎を心配していたが、町中探し回りやっとこさ二郎に会えたことが思いのほか嬉しく、また二学期が始まって以来1ヶ月近く二郎とまともに会話をすることがなかったせいか舞い上がっている自分を隠すため、いつも以上に二郎をからかうような態度を見せると、二郎も二郎でまた凜のおふざけが始まったと誤解していつも通りの対応を見せた。
「いやいや、心配しているって言ったって、もうからかいに来たって言っちゃってますからね。はぁ~先輩も本当に物好きな人ですね。俺みたいな奴にからんで何が楽しんですか。先輩も受験生なんですから、生徒会が無いなら大人しく塾に行くか、家で勉強した方が良いと思いますよ」
二郎が自分の事を棚に上げて凜に諫言を言うと凜も負けじと言い返した。
「ご心配ありがたいけど、二郎君に言われるまでも無く夏期講習もしっかり行ったし、二学期が始まってからも日々の自習もバッチリやっているわよ。もちろん普段の授業も抜かりないし成績も心配されるようなことは一つも無いわ。それよりも毎日勉強、勉強で、たまには私だって息抜きしたいのよ。そうだ、今日はこれから私に付き合いなさい。二郎君も気晴らしがしたいならちょうど良いでしょ」
「だからなんでそこで俺が出てくるんですか。わざわざこんなところまで来て俺に絡む事は無いでしょ。折角の休暇日ならほのか先輩とか誰か友達を誘ってその辺のカフェでガールズトークでもしてくりゃ良いじゃ無いですか。こんな陰気くさい男達が集まるゲーセンなんてくること無いでしょうよ」
一向に凜の真意に気付かない二郎は偶然立ち寄ったゲーセンで自分と出くわし、暇潰しにからかいに来たのだと思っているため面倒事はゴメンだと凜をあしらうように応えた。
そんな二郎の言い分にもの申したのは凜では無く割と本気で冷たい視線を送るブンさん、ザキさんの二人だった。
「二郎君、それはいくら何でも酷いじゃないか。せっかく心配して来てくれた彼女さんにそんなこと言っちゃダメだぞ。人間心配されているうちが華だよ。ちゃんと謝って仲直りしないと、ほらほら早く」
「山田氏。何バカな事を言っているのですか。こんな美人の彼女を差し置いて我らとゲーム三昧とは正気ですか?悪いこと言わないですから、彼女さんとちゃんと話をせねばいけませんぞ!」
思いも寄らない二人からの言葉に二郎は怯んでいた。というもの短い期間であったが、ブンさんとザキさんは二郎にとって師匠、兄弟子のような関係となっており、実際に年上の二人から真剣な口調で諭された事で戸惑いを見せつつ何とか口を開いた。
「いや、でも、さっきも説明しましたが、凜先輩は俺の彼女でもなんでもないんですが・・・」
二郎がしどろもどろになりながら言葉を取り繕っているとそれを遮るように凜が言った。
「もう良いんです。ブンさん、ザキさんありがとうございます。言葉で言ってもわからないなら、もう実力行使よ。私が勝ったら私の言うことを何でも聞きなさい」
「なんですと!?」
「だからこのゲームで勝負して私が勝ったら私の言うことを聞きなさいって言ったのよ」
「なんすか、急に。まぁ別に良いですけど、言っておきますが100回やっても今のままじゃ俺には勝てませんけど良いんですか」
「もちろん良いわよ。それじゃ約束よ。私が勝ったら何でも言うこと聞く、それで良いわね」
「はいはい、わかりましたよ。まぁ5回もやれば無理だと分かるでしょうよ」
二郎は荒唐無稽な凜の提案を鼻で笑うように言っていると、凜はふと振り返り両手を祈るように交わし、高校ではまず絶対に見せないようなおねだりをするような可愛らしい口調で言い放った。
「そう言うことなので、ブンさん、ザキさん、どうか私を勝たせて下さい。私頑張りますから訓練をお願いします」
凜の必殺おねだりを目の前で喰らった二人はすでに凜の従順な僕と化していた。
「も、もちろんですとも。打倒二郎君!絶対に勝ちましょう、彼女さん」
「なんと!姫からの直々の勅命とは!!ここは男を見せねばなりませんな。悪鬼山田氏を必ずや退治して見せましょう」
すっかりやる気なった二人に二郎が唖然とする中で、凜はくすりと笑みを浮かべながら翻弄される男子達を見やるのであった。
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