青春クロスロード

Ryosuke

人の噂も七十五日② ~エリカの噂の真相究明24時~

 すみれが遙達三人から新学期早々広まる噂に関して話しを聞いていた頃、エリカも美術部で似たような話を部活友達から聞かされていた。

「ねぇねぇエリカ、あの噂って本当?」

「噂って何のことよ。いきなり何の話をしているのよ」

 エリカに話し掛けたのは2年2組の同じ美術部員の山崎敦子だった。

「エリカまだ聞いてないの。エリカのクラスの友達の噂が広まっているみたいよ。なんでも夏休みのどこかの夏祭りの時に告白したとか、振られたとか、二股だか三股を掛けていたとか、なんか色々と話しが出ていて本当の話かどうかよく分からないけど、とにかく凄い噂が広まっているみたいだよ」

「なにそれ、一体どんな噂が出ているのよ、ちょっと教えてよ」

 エリカは敦子の話を眉唾物と思いつつも、ひとまず話しの内容だけでも聞いておいて方が良いと思い、コンクールに向けて準備していた絵画のレイアウトの作業を止めて小休止する事にした。

 敦子から出た話は概ねすみれが遙達から聞い内容と同じだった。三佳と忍の告白話。二郎の三股疑惑。そして、一の正体不明の女子との一悶着の件だった。

 話を聞いたエリカは頭を抱えながら、自分が参加しなかった花火大会の1日でどうしてここまでバラエティに富んだ出来事が同時に起こったのか理解できないという思いで大きなため息をついた。

「はぁ、これ本当に同じ日の出来事なの?ここまで私の周囲の人間の話しばかりとはさすがに思わなかったわ。でもこんな話をあっちゃんは誰から聞いたのよ」

「それは翔太郎君からだよ。エリカ、一年の時に同じクラスだった宮本君のこと覚えている?私は今年も彼と同じクラスで結構仲良くしているんだけどさ。昨日の始業式が終わった後ホームルームで少し先生が来るまで時間があって、その時に夏休みにその現場を見た友達から話を聞いたって言われてさ。エリカと私が仲の良いのを覚えていて本当かどうか聞いてみたらどうか言われたんだ。私も学年の有名人達のことだから気になっちゃってさ」

 敦子は事の経緯を詳細に語り、エリカがいる5組の友人達の噂の真相を確かめて欲しいとお願いするように言った。
 
「宮本君って野球部の彼だっけ。彼も2組なんだね。全く面倒な噂を広めてくれたわね、宮本君も。それに有名人って確かにまぁそうだけどさ・・・」

 エリカは余り気が乗らないように返事をするも敦子がかぶせるように迫った。

「だって相手はサッカー部エースの工藤君にバスケ部部長の中田君だよ。それに難攻不落の一ノ瀬君の恋愛話なんてほとんど出たことないし、もう一人の山田君については正直どんな人か分からないけど、三股するくらいだから山田君もイケ面で凄いモテる人なんでしょ。馬場さんと成田さん、それに一ノ瀬君に加えて謎のイケメン山田君、5組はタレント揃いだよね」
 
 敦子は芸能人のゴシップネタに興奮する芸能レポーターのように学年内の大物達の恋愛の行方に興味津々と言った様子でエリカに詰め寄った。

「確かにみんな学年内の知名度が高いメンバーだけど一つだけ訂正させて。二郎君はあっちゃんが言うようなイケ面ではないわよ。確かに普通にしていたら背もまぁまぁ高いし、顔もそこそこには整っていて平均以上かもしれないけど、それを大きくマイナスに引き下げるやる気の無い表情と死んだ目、それに加えて猫背に何事も斜に構えるあまのじゃく的な性格が手伝って、いわゆる陰キャの代表格みたいな地位を5組内では欲しいままにしている男子だよ。実際に友達になってみると意外と気配りも出来て、若干口が悪いけど、ちゃんと相手のことも考えて行動してくれるから人だから、友人としては私は好きだけど、まぁとりあいず一君のような優しいイケメンを想像していると後で後悔するとだけは言っておくわ」

 エリカは敦子の持つ幻想を完膚なきまでに打ち砕きつつも、二郎をけなしているようで少し褒めつつも、やはりそれは違うとはっきりと断言するように説明した。

「へ~、そうなんだ。なんかものすごいキャラが立っている男子じゃん。違う意味で会ってみたくなったわ。それにそんな男子に三股疑惑が立つって一体どういうことなんだろうね。実は裏では女垂らしのチャラ男だったらある意味で凄いよね。とにかく噂の真相突き止めてよ。エリカだって友達の変な噂が間違いだったらそれを否定したいでしょう。そのためにも真相究明しなきゃ何も始まらないじゃん」

 しばらく頭をひねらせて熟考した後、エリカは敦子の言い分も一理あるかもと考えを改めて、渋々ながら了解の返事をした。

「わかったわ。私も何処まで話を聞けるか分からないけど、とりあいず皆に話を聞いてみるわ。でも、聞いた話を何でもあっちゃんに話す訳じゃないからね。それはわかるでしょ」

「えぇ~、エリカのケチ。ズルいよ、一人だけ知っているなんて、私にもこっそり教えてよ。お願いします、お母様~」

「何がお母様よ。今まで一度もそう呼んだこともないのにこんな時だけ言っても駄目よ。それに私だって真相全部が分かるとは限らないしね」

 エリカは敦子を黙らせつつ、さてどうやって話を聞き出すかと考えていた。

(まず初めは三佳からかな。この前みたいに学校帰りに喫茶店にでも誘って話を聞いてみようかな。まぁ結果は聞かなくても剛が振られたことは間違いないけど、他にもあの日何が起こったのか色々聞いてみたほうがいいよね。それに忍もすみれも余り花火大会の事は話してこないし、きっと面倒な事が色々あったんだろうな。はぁ大事にならなければ良いけど。そうだ、剛の事も含めて拓実に相談してみよっと♪)

 エリカはあれこれ考えながら、夏休みに晴れて恋人同士になった剛の親友である拓実に相談して今後の事を考えようと思い至るのであった。

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