青春クロスロード
夏休み その4 花火大会④ ~情熱と沈黙の先に~
   一方、勢いで大和の手を取って一の前から逃げ出した巴は自分の言動に顔を真っ赤にして俯いていると、思わぬ巴の行動に戸惑っていた大和がとにかく状況を確認するため声を掛け落ち着かせようと引き留めた。
「ちょ、ちょっと待って宮森さん。少し落ち着いて。何があったか知らないけど、ひとまず落ち着こうよ」
「え、私、ごめんなさい。あれ、どうして私こんなこと。えっと、急にゴメンね。小野君」
巴は正気を通り戻したのか、自分の身勝手な行動を素直に謝った。
  周囲を見ると二人は人混みから少し離れた広場と公園内の林の境目まで移動していた。
「まぁそんな謝る必要はないさ。それに落ち着いたみたいで良かったよ。それよりも何かあったのか、少し様子が変だけど、まさか一に何かされたのか」
「いや、そんなことないよ。一君は何も悪くないから、気にしないで大丈夫だから、ね」
巴は動揺する気持ちを抑えてあくまで何もなかったことを強調したが、大和にとってはそれが余計に心配を増長させた。
「一に限って何か嫌なことをするとは思わないけど、何か困ったことがあればいつでも俺に言ってくれよ。一応一年の頃はそれなりに仲良くしていた間柄なんだし、一ほど頼りになるかわからんけど、宮森さんが困っていることがあれば俺は必ず手を貸すからさ」
「ありがとう、小野君。そんな風に言ってくれて嬉しいよ。ふふふ、小野君は一年の時と全然変わらないね。いつも私と一ノ瀬君がクラス委員の仕事をしているときもよく手伝ってくれたし、なんだかんだでいつも3人で一緒にいたよね。最近クラスも変わってあまり会うこともなくなったけど、変わらず優しい小野君で私嬉しいよ」
大和の言葉に少し驚きながらも、変わらず優しく接してくれる大和に巴は笑顔で感謝を伝えた。
「そんなこと当たり前だよ。困っている宮森さんをほっとけるわけないよ」
大和は周囲に人気が無いことを確認すると、まさに告白にはぴったりの状況であると察して、真剣な表情で巴を見つめながら言った。
「小野・・君?」
巴は大和の声の雰囲気が急に変わったことに気づき大和の顔に視線を移した時、大和は一年以上もの間ため込んだ巴への気持ちを一気に爆発させた。
「宮森さん。俺は君が好きだ。一年の頃からずっと好きだったし、クラスが変わった今でも変わらず君の事ばかり考えている。宮森さんにとって俺は一のおまけくらいにしか思っていないかもしれないけど、俺にとっては君が一番なんだよ。もしかしたら宮森さんは一のことが好きなのかもしれない。でも、アイツは誰にでも優しくする分、誰もアイツの一番にはなれないと思うんだ。俺よりも長い時間一緒にいる宮森さんなら、俺以上にそう感じることがあるんじゃないかな。でも、俺なら君を一番に想うし、何よりも大切にする。絶対に困らせたり、泣かせたりしないよ。必ず君を大切にするから、だから、俺と付き合って下さい。お願いします」
大和の度直球の告白に巴は息をすることを忘れて、大和の顔を凝視して今放たれた言葉を理解しようと努めた。
それに対して告白を終えた大和はこの永遠とも思える数秒の沈黙を辛抱強く耐えて巴の返事を待った。
およそ十秒にも満たない沈黙を破って一番初めに発せられた言葉は大和の真意を確かめる巴の言葉だった。
「どうして、私なんか・・・」
「どうしてか、・・・どうしてかね。・・・いつだったか放課後の教室でさ、君が一人で泣いているのを見たんだ。そのとき君がいつも正しく、強く、何事にも恐れない態度でいるのは無理をしているんだって気づいたんだよ。俺の勘違いかもしれないけど、本当の君は誰よりも怖がりで、自分に自信が無い普通の女の子なのに、それでも自分が毅然とした行動を取ることがクラスの皆のため、そして自分自身の正義のためになると思い行動しているって感じてから、無性に君の事が愛おしくて、守ってあげたいと思うようになって、気づいたらどうしようもなく好きになっていたんだよ。こんなこと言われても訳わかんないよな」
「小野君・・・、いつも怒ってばかりで可愛げの無い私なんかをそんな風に思ってくれて、本当に嬉しいよ。ありがとう。でも、でもね・・・・」
巴は大和のまっすぐな想いを正面から受け止めて、その思いに真剣に答えようと顔を逸らさず大和を見つめて言葉を続けようとしたが、溢れる想いが涙となり巴の頬に一筋の光が輝いた時、巴は耐えきれず顔を伏せ言葉を続けた。
「ごめんなさい。小野君の気持ちには応えられない。私・・・一ノ瀬君が好きなの。小野君が言うとおり一ノ瀬君にとって私は多数いる友人の一人に過ぎないで、どんなに頑張っても気持ちは届かないかもしれないけど、だけど、だからといって私が一ノ瀬君を好きでいる事を諦める理由にはならないの。だから、ごめんなさい」
大和はゆっくりと目を閉じて巴の言葉を噛みしめていた。
「そっか。ありがとう。正直な気持ちを話してくれて。・・・はぁ、まったく一の野郎。こんなにも宮森さんに想われているってのに、何を考えているのかね、アイツは。でも、俺は振られて当たり前だな。絶対に泣かせないって言ったそばから、もう君を泣かせてしまったんだから、立つ瀬が無いよ。・・・勝手な話だけど、これからも俺は君の友人としていて良いのかな」
大和は巴の正直な気持ちを聞き、せめて格好だけはつけたいと落ちついた様子を装って会話を続けた。
「もちろんだよ、ズルいのかもしれないけど、私も小野君とはこれからも友人でいてほしいと思っているよ」
巴は大和の言葉にホッとした思いで返事をした。
すると先程までの重苦しい空気は消え去り、自然と二人の顔からは緊張が抜け、柔らかい表情がそこにはあった。
「あの、小野君、その本当にありがとう。私誰かに真剣に告白されたのなんて初めてだったから、本当にその気持ちは嬉しかったの。本当だよ。だから私も自分の気持ちに正直なろうって思えたの」
「そうか、そんな風に思ってくれたなら俺も勇気を出して告白して良かったよ。どんな結果になるか分からないけど、宮森さんの気持ちも一に届くと良いね」
「うん。私も勇気を出して自分の気持ちをちゃんと伝えるよ」
巴は自分に言い聞かせる様に決意をもって言った。
「そうか、応援しているよ。・・・はぁ、ゴメン、俺ちょっとこの辺を一周してから皆のところに戻るから、先に戻っていてくれるかな。場所はわかる?」
「うん、大丈夫だと思う。一人で戻れるよ」
「そうか、それじゃ」
大和は何かに耐えるように奥歯を噛みしめながら人混みを避けるように林の奥へ向かっていった。それを見ないように巴は人混みに戻りながら、涙で赤くした瞳と高ぶった心を落ち着かせるため、しばらくの間、夏祭りに浮かれる群衆の波にその身を漂わせるのであった。
「ちょ、ちょっと待って宮森さん。少し落ち着いて。何があったか知らないけど、ひとまず落ち着こうよ」
「え、私、ごめんなさい。あれ、どうして私こんなこと。えっと、急にゴメンね。小野君」
巴は正気を通り戻したのか、自分の身勝手な行動を素直に謝った。
  周囲を見ると二人は人混みから少し離れた広場と公園内の林の境目まで移動していた。
「まぁそんな謝る必要はないさ。それに落ち着いたみたいで良かったよ。それよりも何かあったのか、少し様子が変だけど、まさか一に何かされたのか」
「いや、そんなことないよ。一君は何も悪くないから、気にしないで大丈夫だから、ね」
巴は動揺する気持ちを抑えてあくまで何もなかったことを強調したが、大和にとってはそれが余計に心配を増長させた。
「一に限って何か嫌なことをするとは思わないけど、何か困ったことがあればいつでも俺に言ってくれよ。一応一年の頃はそれなりに仲良くしていた間柄なんだし、一ほど頼りになるかわからんけど、宮森さんが困っていることがあれば俺は必ず手を貸すからさ」
「ありがとう、小野君。そんな風に言ってくれて嬉しいよ。ふふふ、小野君は一年の時と全然変わらないね。いつも私と一ノ瀬君がクラス委員の仕事をしているときもよく手伝ってくれたし、なんだかんだでいつも3人で一緒にいたよね。最近クラスも変わってあまり会うこともなくなったけど、変わらず優しい小野君で私嬉しいよ」
大和の言葉に少し驚きながらも、変わらず優しく接してくれる大和に巴は笑顔で感謝を伝えた。
「そんなこと当たり前だよ。困っている宮森さんをほっとけるわけないよ」
大和は周囲に人気が無いことを確認すると、まさに告白にはぴったりの状況であると察して、真剣な表情で巴を見つめながら言った。
「小野・・君?」
巴は大和の声の雰囲気が急に変わったことに気づき大和の顔に視線を移した時、大和は一年以上もの間ため込んだ巴への気持ちを一気に爆発させた。
「宮森さん。俺は君が好きだ。一年の頃からずっと好きだったし、クラスが変わった今でも変わらず君の事ばかり考えている。宮森さんにとって俺は一のおまけくらいにしか思っていないかもしれないけど、俺にとっては君が一番なんだよ。もしかしたら宮森さんは一のことが好きなのかもしれない。でも、アイツは誰にでも優しくする分、誰もアイツの一番にはなれないと思うんだ。俺よりも長い時間一緒にいる宮森さんなら、俺以上にそう感じることがあるんじゃないかな。でも、俺なら君を一番に想うし、何よりも大切にする。絶対に困らせたり、泣かせたりしないよ。必ず君を大切にするから、だから、俺と付き合って下さい。お願いします」
大和の度直球の告白に巴は息をすることを忘れて、大和の顔を凝視して今放たれた言葉を理解しようと努めた。
それに対して告白を終えた大和はこの永遠とも思える数秒の沈黙を辛抱強く耐えて巴の返事を待った。
およそ十秒にも満たない沈黙を破って一番初めに発せられた言葉は大和の真意を確かめる巴の言葉だった。
「どうして、私なんか・・・」
「どうしてか、・・・どうしてかね。・・・いつだったか放課後の教室でさ、君が一人で泣いているのを見たんだ。そのとき君がいつも正しく、強く、何事にも恐れない態度でいるのは無理をしているんだって気づいたんだよ。俺の勘違いかもしれないけど、本当の君は誰よりも怖がりで、自分に自信が無い普通の女の子なのに、それでも自分が毅然とした行動を取ることがクラスの皆のため、そして自分自身の正義のためになると思い行動しているって感じてから、無性に君の事が愛おしくて、守ってあげたいと思うようになって、気づいたらどうしようもなく好きになっていたんだよ。こんなこと言われても訳わかんないよな」
「小野君・・・、いつも怒ってばかりで可愛げの無い私なんかをそんな風に思ってくれて、本当に嬉しいよ。ありがとう。でも、でもね・・・・」
巴は大和のまっすぐな想いを正面から受け止めて、その思いに真剣に答えようと顔を逸らさず大和を見つめて言葉を続けようとしたが、溢れる想いが涙となり巴の頬に一筋の光が輝いた時、巴は耐えきれず顔を伏せ言葉を続けた。
「ごめんなさい。小野君の気持ちには応えられない。私・・・一ノ瀬君が好きなの。小野君が言うとおり一ノ瀬君にとって私は多数いる友人の一人に過ぎないで、どんなに頑張っても気持ちは届かないかもしれないけど、だけど、だからといって私が一ノ瀬君を好きでいる事を諦める理由にはならないの。だから、ごめんなさい」
大和はゆっくりと目を閉じて巴の言葉を噛みしめていた。
「そっか。ありがとう。正直な気持ちを話してくれて。・・・はぁ、まったく一の野郎。こんなにも宮森さんに想われているってのに、何を考えているのかね、アイツは。でも、俺は振られて当たり前だな。絶対に泣かせないって言ったそばから、もう君を泣かせてしまったんだから、立つ瀬が無いよ。・・・勝手な話だけど、これからも俺は君の友人としていて良いのかな」
大和は巴の正直な気持ちを聞き、せめて格好だけはつけたいと落ちついた様子を装って会話を続けた。
「もちろんだよ、ズルいのかもしれないけど、私も小野君とはこれからも友人でいてほしいと思っているよ」
巴は大和の言葉にホッとした思いで返事をした。
すると先程までの重苦しい空気は消え去り、自然と二人の顔からは緊張が抜け、柔らかい表情がそこにはあった。
「あの、小野君、その本当にありがとう。私誰かに真剣に告白されたのなんて初めてだったから、本当にその気持ちは嬉しかったの。本当だよ。だから私も自分の気持ちに正直なろうって思えたの」
「そうか、そんな風に思ってくれたなら俺も勇気を出して告白して良かったよ。どんな結果になるか分からないけど、宮森さんの気持ちも一に届くと良いね」
「うん。私も勇気を出して自分の気持ちをちゃんと伝えるよ」
巴は自分に言い聞かせる様に決意をもって言った。
「そうか、応援しているよ。・・・はぁ、ゴメン、俺ちょっとこの辺を一周してから皆のところに戻るから、先に戻っていてくれるかな。場所はわかる?」
「うん、大丈夫だと思う。一人で戻れるよ」
「そうか、それじゃ」
大和は何かに耐えるように奥歯を噛みしめながら人混みを避けるように林の奥へ向かっていった。それを見ないように巴は人混みに戻りながら、涙で赤くした瞳と高ぶった心を落ち着かせるため、しばらくの間、夏祭りに浮かれる群衆の波にその身を漂わせるのであった。
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