青春クロスロード
夏休み その2 三佳の陸上全国大会③
しばらく会場のトラック入り口周辺で待っていると赤いジャージの上着を羽織った三佳がゆっくりと歩いてきた。それに気づいたすみれが三佳に声を掛けた。
「三佳!お疲れ様。応援に来たよ!」
「あれ、すみれ!本当に来てくれたの、ありがとう」
「私だけじゃないよ」
「よう、三佳!スゴイ走りだったな、決勝進出おめでとうな」
「三佳ちゃん、コングラッチュレーションです、私感動しましたヨ!」
「三佳っち、おめでとう」
すみれが後ろに他の応援の3人がいることを知らせると、二郎、レベッカ、はじめの順に三佳に声を掛けた。
「皆どうしてここに、それに、あなたは4組のレベッカさんだっけ、一体どういうこと?」
「実は生徒会の関係で三佳っちの取材にきて、レベッカさんは写真部で協力してもらうために来てもらったんだよ。二郎には手伝いをお願いしたんだ」
一が代表して事の経緯を説明した。事情を理解した三佳は快くインタビューを受けてくれることになった。
三佳の少しの休憩の後でスタンドの日陰となっている場所に移動して、一達はインタビューを始めていた。一が三佳に話しを聞き、レベッカが写真を撮る形でインタビューは淡々と進められた。その様子を二郎とすみれは離れて見ていた。
「ねぇ、二郎君」
「なんだ、すみれ、あぁすーみんだっけか」
「いや、それは一君だけの特別な呼び方だから、二郎君が呼ぶのは止めてくれるかな。ってそんなことよりも、・・・一君って好きな子とかいるのかな」
「なんだ藪から棒に」
「うん、ふと一君ってどんな子が好きなのかなと思ってね」
「ほう、随分変わった思いつきだな。まぁ一の事が好きな女子なら山ほどいるけどな、あいつが好きな女子ってのは、そういえばあまり聞いたことがないな。なんか誰にでも優しいから近くにいても良くわかんねーんだよな、一は」
「そうなんだ、二郎君でも分からないんだね」
「そうだな、まぁ強いて言えば、あれかな。今見てる光景が一番、一らしくないというか何というか。前にあいつが言ってた事なんだけど、普段人と接するときは場を和ませたり、緊張をほぐしたり、冗談言ってすぐに初対面の人でも仲良くなるのが唯一の特技のつもりらしいけど、本当に自分が大事な人というか、好きな人とか、そういう相手には冗談とか言えず色々考えすぎて全然つまらない話ししか出来なくなるって言ってたぜ」
「それってどういうこと?」
「だから、あいつの様子が冗談抜きのくそ真面目に見えたら、一の気になる相手の可能性が高いって事だよ。ほら見てみな。あの三佳が真剣に真面目に答えているだろ。いつもなら巧みな話術で面白おかしくインタビューの一つや二つこなす一が、決まり文句の質問ばかりして淡々と話している感じがするだろう。あれは一が冗談を言える余裕がない時の顔だよ」
二郎は長年の付き合いから一の三佳への接し方が何やら違和感があるとすみれに解説した。
「それってつまり一君の好きな子は三佳ってことかな」
「まぁ本人に聞いてみないと分からんけどな。さすがに生徒会の仕事だから真面目にやっているだけかもしれないしわからんけど。でも、そんなこと知っても剛が好きなすみれには関係ない事だろ」
「え、あ、うん、そうだね」
すみれは剛への気持ちの変化をごまかすように答えた。
「なんだ、もしかして、あれから剛と連絡とかしてないのか。エリカに聞いて教えてもらえば良いのに。せっかく知り合って仲良くなったんだからもっと積極的にアピールしないと逃げられちまうぞ」
「そうだね、頑張るよ」
「おう、頑張れや。皆応援しているからうまくいったらなんか奢ってくれよ。あの日は皆で協力して二人になる時間を作ったんだぞ。忍も三佳もエリカも拓実も、もちろん一だって皆がすみれの味方だぜ!」
二郎はすみれと一の事の顛末を全く知らないため、当然すみれは剛が好きだと信じて、グッドサインを送った。
「あ、ありがとう、二郎君」
(二郎君って普段はフニャッとしてやる気の無い男子かと思っていたけど、仲良くなってみると結構友達思いのいい人だよね。でもそれが返って一君の事とかを黙っているのが心苦しいわ、はぁ)
「まぁいいってことよ」
すみれは二郎の話しを聞きながらも、三佳にインタビューする一の様子を見ずにいられなかった。
それからしばらくしてインタビューを終えた三佳は陸上部の仲間の元へ戻ると言って会場内に戻っていった。
その背中をじっと見つめる一の眼差しがすみれの心に一本の棘となって深く突き刺さる事となった。
「三佳!お疲れ様。応援に来たよ!」
「あれ、すみれ!本当に来てくれたの、ありがとう」
「私だけじゃないよ」
「よう、三佳!スゴイ走りだったな、決勝進出おめでとうな」
「三佳ちゃん、コングラッチュレーションです、私感動しましたヨ!」
「三佳っち、おめでとう」
すみれが後ろに他の応援の3人がいることを知らせると、二郎、レベッカ、はじめの順に三佳に声を掛けた。
「皆どうしてここに、それに、あなたは4組のレベッカさんだっけ、一体どういうこと?」
「実は生徒会の関係で三佳っちの取材にきて、レベッカさんは写真部で協力してもらうために来てもらったんだよ。二郎には手伝いをお願いしたんだ」
一が代表して事の経緯を説明した。事情を理解した三佳は快くインタビューを受けてくれることになった。
三佳の少しの休憩の後でスタンドの日陰となっている場所に移動して、一達はインタビューを始めていた。一が三佳に話しを聞き、レベッカが写真を撮る形でインタビューは淡々と進められた。その様子を二郎とすみれは離れて見ていた。
「ねぇ、二郎君」
「なんだ、すみれ、あぁすーみんだっけか」
「いや、それは一君だけの特別な呼び方だから、二郎君が呼ぶのは止めてくれるかな。ってそんなことよりも、・・・一君って好きな子とかいるのかな」
「なんだ藪から棒に」
「うん、ふと一君ってどんな子が好きなのかなと思ってね」
「ほう、随分変わった思いつきだな。まぁ一の事が好きな女子なら山ほどいるけどな、あいつが好きな女子ってのは、そういえばあまり聞いたことがないな。なんか誰にでも優しいから近くにいても良くわかんねーんだよな、一は」
「そうなんだ、二郎君でも分からないんだね」
「そうだな、まぁ強いて言えば、あれかな。今見てる光景が一番、一らしくないというか何というか。前にあいつが言ってた事なんだけど、普段人と接するときは場を和ませたり、緊張をほぐしたり、冗談言ってすぐに初対面の人でも仲良くなるのが唯一の特技のつもりらしいけど、本当に自分が大事な人というか、好きな人とか、そういう相手には冗談とか言えず色々考えすぎて全然つまらない話ししか出来なくなるって言ってたぜ」
「それってどういうこと?」
「だから、あいつの様子が冗談抜きのくそ真面目に見えたら、一の気になる相手の可能性が高いって事だよ。ほら見てみな。あの三佳が真剣に真面目に答えているだろ。いつもなら巧みな話術で面白おかしくインタビューの一つや二つこなす一が、決まり文句の質問ばかりして淡々と話している感じがするだろう。あれは一が冗談を言える余裕がない時の顔だよ」
二郎は長年の付き合いから一の三佳への接し方が何やら違和感があるとすみれに解説した。
「それってつまり一君の好きな子は三佳ってことかな」
「まぁ本人に聞いてみないと分からんけどな。さすがに生徒会の仕事だから真面目にやっているだけかもしれないしわからんけど。でも、そんなこと知っても剛が好きなすみれには関係ない事だろ」
「え、あ、うん、そうだね」
すみれは剛への気持ちの変化をごまかすように答えた。
「なんだ、もしかして、あれから剛と連絡とかしてないのか。エリカに聞いて教えてもらえば良いのに。せっかく知り合って仲良くなったんだからもっと積極的にアピールしないと逃げられちまうぞ」
「そうだね、頑張るよ」
「おう、頑張れや。皆応援しているからうまくいったらなんか奢ってくれよ。あの日は皆で協力して二人になる時間を作ったんだぞ。忍も三佳もエリカも拓実も、もちろん一だって皆がすみれの味方だぜ!」
二郎はすみれと一の事の顛末を全く知らないため、当然すみれは剛が好きだと信じて、グッドサインを送った。
「あ、ありがとう、二郎君」
(二郎君って普段はフニャッとしてやる気の無い男子かと思っていたけど、仲良くなってみると結構友達思いのいい人だよね。でもそれが返って一君の事とかを黙っているのが心苦しいわ、はぁ)
「まぁいいってことよ」
すみれは二郎の話しを聞きながらも、三佳にインタビューする一の様子を見ずにいられなかった。
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