青春クロスロード
波乱の再会 その2
次の日も2年5組の教室ではドタバタの勉強会がいつもの女子4人で繰り広げられていた。
「全然駄目だ~、どうしよう、本当にさっぱりわからないよ~。私には無理だったんだよ~」
必死に教えるエリカの横で三佳が早くもお手上げ状態で泣き言を叫んでいた。
「三佳、がんばりなさい。大会出場のためにも気合いを入れて!」
「まだまだ始まったばかりだから諦めずに頑張って!」
すみれと忍も三佳に発破を掛けつつも、破滅的なまでの三佳の学力に半ば諦め状態になっていた。
「はぁ、どうしたら、この子に数学をうまく教えることが出来るのよ。神よ、どうか私をお助け下さい」
すみれと忍が三佳の尻を叩く一方で、開始二日目にして、実際に勉強指導に当たっていたエリカが天を仰ぎながら涙目で神頼みを始めたことを確認していた二郎に後ろから声がかかった。
「二郎、今日も相変わらず徘徊するのか」
二郎の学校で唯一の男友達である一ノ瀬一が声をかけた。
「おう、そうだけど、徘徊じゃないって、見回りだよ。俺はボケ老人じゃないんだからさ。一も今日はもう帰るのか」
二郎は訂正を求めるように返答した。
「わりぃわりぃ、そうだな、見回りだな。俺はこのあとちょっと生徒会の用があってな。まぁそんなにかからないと思うけどさ」
「そうか、そりゃご苦労様だわ。まぁ一はテストの心配もいらないだろうし、部活もないんだから、たまにはゆっくりしろよ。普段はいつも忙しくしてんだからさ」
「そんなことないさ。俺は出来ることだけやってるだけだよ。でもまぁ、ありがとうさん。お前も人の心配ばかりしてないで、たまには息抜きしろよな」
二人はなんだかんだ言いつつも、お互いを気遣う事が出来る良い友達だと思いながら共に教室を出て行った。
二郎は例のごとく校内の見回りを始めると2年1組の方から数人の男子の声が聞こえてきたのに気づき、こっそりその様子を伺ったところ野球部の数名の男子が教室で話をしていた。
少し様子を見ても誰かまでは顔が見えなかったが、見たところ友人同士の会話だと判断し、問題ないだろうと思い教室から離れようとしたところで思わぬ単語が聞こえてきた。
「そういえばさ、お前ら2年4組でいつも放課後に一人で勉強している女子のこと知ってるか」
野球部所属で2年3組の五十嵐瞬が、仲間の男子達に話題を替えて問いかけた。
「なんだ、そりゃ、知らねーよ。なんかあんのか」
興味がなさそうに一人の男子が返事をした。
「なんだよ、知らねーのか。結城四葉っていう地味っ子なんだけどさ。聞いたことないか」
「あー、確かメガネでいつもマスクしているあいつか。間違いなく学年一の地味で根暗の女子だな。俺、一年の時に同じクラスだったけど、彼女の声を聞いた覚えがないし、正直顔すらちゃんと見たことないわ。それがどうしたんだ」
野球部男子達が四葉についてあれこれ話しているのに気がついた二郎はこっそりと聞き耳を立てて話の続きを待った。
「実は俺さ、彼女に告白しようと思ってさ」
「マジかよ、正気か。どんな趣味してんだよ、お前」
「お前らは知らないかもしれないけど、実は彼女、結構美人で可愛いんだぜ。この前、頭痛くて昼休みに保健室行った時に彼女がいてさ。そのときメガネとマスクを外して先生と話しをしてたのを横から見たんだけど、すげー可愛かったんだよな。多分、学年でも10本指、いや5本指に入るレベルだと俺は思うぜ」
瞬がその時の事を思い出しながら興奮した様子で四葉の事を話した。
「それ盛りすぎだろ。頭痛くておかしくなってたんじゃねーの」
「いきなり、告ったって振られるのが落ちだぞ」
友人達は瞬の無謀な特攻をあきれたようにあしらった。
「それはどうかな。多分学校じゃほとんど友達もいなさそうだし、結構強めに押せばすぐに付き合えそうな気がしてさ。ああいうぼっちの子って、普段友達がいないから、誘えばすぐに落ちそうだし、楽勝だろ。このテスト準備期間中に隙を見つけて、告る予定だぜ。お前ら邪魔すんなよ」
「うわー。マジか、もしかしたらテスト明けには瞬も彼女持ちになるのかよ」
「彼女で来たら、紹介してくれよな」
「俺は振られる方にジュース1本だ」
「お、いいね。俺は振られて平手打ちされる方にジュース5本な」
「お前ら勝手に賭け始めてんじゃねーよ。しかも、振られる方ばかりじゃねーか」
野球部男子達が恋バナで盛り上がる一方で、二郎は気づかれぬように教室を後にした。
(人の恋路を邪魔する権利は俺にはない。あの野郎が結城さんに告るのは自由だし、結城さんが付き合うかどうかも俺には関係ない。だけど、あの野郎どもの言っていた通りだと、本気で彼女を好きで告白するわけじゃなさそうだし、もしあの野郎と彼女が付き合うとなったら、彼女が傷つくような気もするし、でもやっぱり俺の出る幕はないし、くそ。何を悩んでるんだ俺は)
答えが出ないまま、二郎は言葉に出来ないモヤモヤする思いを抱きながら一日中悩むのであった。
「全然駄目だ~、どうしよう、本当にさっぱりわからないよ~。私には無理だったんだよ~」
必死に教えるエリカの横で三佳が早くもお手上げ状態で泣き言を叫んでいた。
「三佳、がんばりなさい。大会出場のためにも気合いを入れて!」
「まだまだ始まったばかりだから諦めずに頑張って!」
すみれと忍も三佳に発破を掛けつつも、破滅的なまでの三佳の学力に半ば諦め状態になっていた。
「はぁ、どうしたら、この子に数学をうまく教えることが出来るのよ。神よ、どうか私をお助け下さい」
すみれと忍が三佳の尻を叩く一方で、開始二日目にして、実際に勉強指導に当たっていたエリカが天を仰ぎながら涙目で神頼みを始めたことを確認していた二郎に後ろから声がかかった。
「二郎、今日も相変わらず徘徊するのか」
二郎の学校で唯一の男友達である一ノ瀬一が声をかけた。
「おう、そうだけど、徘徊じゃないって、見回りだよ。俺はボケ老人じゃないんだからさ。一も今日はもう帰るのか」
二郎は訂正を求めるように返答した。
「わりぃわりぃ、そうだな、見回りだな。俺はこのあとちょっと生徒会の用があってな。まぁそんなにかからないと思うけどさ」
「そうか、そりゃご苦労様だわ。まぁ一はテストの心配もいらないだろうし、部活もないんだから、たまにはゆっくりしろよ。普段はいつも忙しくしてんだからさ」
「そんなことないさ。俺は出来ることだけやってるだけだよ。でもまぁ、ありがとうさん。お前も人の心配ばかりしてないで、たまには息抜きしろよな」
二人はなんだかんだ言いつつも、お互いを気遣う事が出来る良い友達だと思いながら共に教室を出て行った。
二郎は例のごとく校内の見回りを始めると2年1組の方から数人の男子の声が聞こえてきたのに気づき、こっそりその様子を伺ったところ野球部の数名の男子が教室で話をしていた。
少し様子を見ても誰かまでは顔が見えなかったが、見たところ友人同士の会話だと判断し、問題ないだろうと思い教室から離れようとしたところで思わぬ単語が聞こえてきた。
「そういえばさ、お前ら2年4組でいつも放課後に一人で勉強している女子のこと知ってるか」
野球部所属で2年3組の五十嵐瞬が、仲間の男子達に話題を替えて問いかけた。
「なんだ、そりゃ、知らねーよ。なんかあんのか」
興味がなさそうに一人の男子が返事をした。
「なんだよ、知らねーのか。結城四葉っていう地味っ子なんだけどさ。聞いたことないか」
「あー、確かメガネでいつもマスクしているあいつか。間違いなく学年一の地味で根暗の女子だな。俺、一年の時に同じクラスだったけど、彼女の声を聞いた覚えがないし、正直顔すらちゃんと見たことないわ。それがどうしたんだ」
野球部男子達が四葉についてあれこれ話しているのに気がついた二郎はこっそりと聞き耳を立てて話の続きを待った。
「実は俺さ、彼女に告白しようと思ってさ」
「マジかよ、正気か。どんな趣味してんだよ、お前」
「お前らは知らないかもしれないけど、実は彼女、結構美人で可愛いんだぜ。この前、頭痛くて昼休みに保健室行った時に彼女がいてさ。そのときメガネとマスクを外して先生と話しをしてたのを横から見たんだけど、すげー可愛かったんだよな。多分、学年でも10本指、いや5本指に入るレベルだと俺は思うぜ」
瞬がその時の事を思い出しながら興奮した様子で四葉の事を話した。
「それ盛りすぎだろ。頭痛くておかしくなってたんじゃねーの」
「いきなり、告ったって振られるのが落ちだぞ」
友人達は瞬の無謀な特攻をあきれたようにあしらった。
「それはどうかな。多分学校じゃほとんど友達もいなさそうだし、結構強めに押せばすぐに付き合えそうな気がしてさ。ああいうぼっちの子って、普段友達がいないから、誘えばすぐに落ちそうだし、楽勝だろ。このテスト準備期間中に隙を見つけて、告る予定だぜ。お前ら邪魔すんなよ」
「うわー。マジか、もしかしたらテスト明けには瞬も彼女持ちになるのかよ」
「彼女で来たら、紹介してくれよな」
「俺は振られる方にジュース1本だ」
「お、いいね。俺は振られて平手打ちされる方にジュース5本な」
「お前ら勝手に賭け始めてんじゃねーよ。しかも、振られる方ばかりじゃねーか」
野球部男子達が恋バナで盛り上がる一方で、二郎は気づかれぬように教室を後にした。
(人の恋路を邪魔する権利は俺にはない。あの野郎が結城さんに告るのは自由だし、結城さんが付き合うかどうかも俺には関係ない。だけど、あの野郎どもの言っていた通りだと、本気で彼女を好きで告白するわけじゃなさそうだし、もしあの野郎と彼女が付き合うとなったら、彼女が傷つくような気もするし、でもやっぱり俺の出る幕はないし、くそ。何を悩んでるんだ俺は)
答えが出ないまま、二郎は言葉に出来ないモヤモヤする思いを抱きながら一日中悩むのであった。
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