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レッドサンブラックムーン -機密解除された第二次大戦における<異世界からの干渉>および<魔獣との戦闘>に関する記録と証言について-

弐進座

太平洋の嵐(Pacific storm) 10

【オアフBM内部 駆逐艦<宵月>】

『その声……衛士か!?』
「まさか……寛か?」
『なんで、ここにいる?』
「それは、こっちの台詞だね。まあ、いい。君なら話は早い。君から見て8時方向に、<宵月>は航行している」
『航行中? そりゃどういう意味だよ。こんなところに海はねえぞ』
「ああ、うん。その話は後にしてくれ。もう燃料が無いんだろう? どこかへ不時着しろ。こちらから拾いに行く」
『何だか知らんが、わかっ――』
『ギドー! あやつ、まだ生きておるぞ!』
 ネシスに会話を遮られた直後、烈風へ向って赤い球が放たれるのが艦橋から見えた。
「寛、避けろ!!」

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『寛、避けろ!!』
 反射的に、戸張は操縦桿を押し込んだが、やや遅かった。火球は烈風の尾翼の一部を掠め、尾翼の一部を焼失させた。
 機関が止まり、失速しかけていた烈風にとって十分すぎる致命打になった。
 戸張は全神経を稼働させ、機体を操ったが、安定性の維持は困難を極めた。
 やがて帝国海軍の最新鋭機は錐揉み状態になりながら、BM中心部の柱、その根元へ墜落・・した。

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 目前で親友の機体が柱に突っ込むのを儀堂はただ見届けるしか無かった。
 艦橋内が、いたたまれない沈黙へ包まれる中、冷え切った声が響き渡った。
「全砲門、開け。目標、敵獣。完全に沈黙させろ」
 何事も無かったように、儀堂は命じた。間もなく<宵月>の全力射撃によって、要望通りの沈黙が訪れた。
「ネシス、あの柱へ艦を向けてくれ」
『よかろう。近くへ寄れば良いのだな』
「そうだ。頼む」
『わかった。しばし、待つがよい』
 <宵月>はBM中心部の柱へ飛行を開始した。怪訝な顔の副長へ、儀堂は向き直った。
「どうされるのですか?」
「決まっているよ。遭難者の救助だ」
「救助? その、言いにくいのですが――」
 控えめに考えても、あの搭乗員戸張の生死は絶望的に思えた。
「すぐに陸戦隊を組織してくれ。あと、すまないが、君に頼み・・がある」
「頼み……ですか?」
「ああ、しばらく<宵月>の指揮を君に委任する」
「委任? 艦長はどうされるのですか?」
 儀堂は不可思議なものを見るように言った。
「友人を迎えに行く。少なくとも、私にはその義務がある。例え彼がどういう状態でも・・・・・・・・・、こんなところに置いていくわけにはいかないんだ」
 結果がどうあれ、儀堂にはその事実を伝える相手がいた。あの搭乗員には、兄を慕う妹がいるのだ。

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 <宵月>は、高度を下げ柱の根元に船体を着底させた。<宵月>を中心に赤い方陣が描かれ、艦が傾斜しないよう水平に保たれている。
『ギドー、一つ頼みがあるのじゃ』
「なんだい?」
『妾も、あの柱へ連れて行ってくれぬか?』
「……説明してくれるな」
『もちろんじゃ。妾はあそこへ行かねばならぬ。道すがら、お主に話そう』
「わかった。一応聞くが、君がここを離れても、この艦にかけた魔導は維持できるのか?」
 ネシスが展開している方陣が解かれた場合、<宵月>は横倒しになってしまうだろう。それだけ避ける必要があった。横倒しになった軍艦など、まな板の上の鯉に等しい。
『案ずるな。妾が離れても術は解かれぬ。それに万が一があっても、大丈夫だろう』
「それは、どういう意味だ?」
『そのうちわかろう。とにかく妾も行くぞ』
 数十分後、甲板に十名あまりの武装した兵員が集合した。
 舷から縄梯子が降ろされ、彼等と共に儀堂とネシスは月面・・へ降り立った。
 彼等は人類初の一歩を歩み出した。

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