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レッドサンブラックムーン -機密解除された第二次大戦における<異世界からの干渉>および<魔獣との戦闘>に関する記録と証言について-

弐進座

対獣戦闘(Anti-beast warfare) 5

【北太平洋上空】
 1945年3月17日 昼

 戸張少尉は操縦桿を一気に引き起こした。艦上戦闘機、烈風は雄々しくエンジン音を響かせ、空へ駆け上がっていく。高度7000に入ったところで、水平飛行に戻す。もう間もなく彼の編隊は、不明飛行群を視界に捕らえるだろう。

「キヨセ1より、ほら、見ろ! オレが言ったとおりだろ!」

 烈風の操縦席で、戸張は歓喜の声を上げていた。無理もないだろう。17日目にして、ようやく彼は待望の敵にありついたのだ。

 <宵月>から不明飛行群の接近の報告を受け、第三航空艦隊司令部は、ただちに付近の直掩機を接触へ向わせた。その中には戸張の飛行小隊も含まれていた。

「貴様等、ちゃんと生きて戻れよ。これまでの賭けた金を回収させてもらうからな」

 嬉々として僚機に話しかける彼に対し、二人の曹長はため息とも同意ともつかぬ返事をした。

『こちらキヨセ2。隊長、増援を待った方がいいんとちゃいますか?』

 二番機の滝崎飛行曹長が、呆れた様子で言った。彼の隊長殿はただいまスロットルを全開にして、不明機の大群へ向っている。もう片方の高田飛行曹長も同じ意見だった。

『同じくキヨセ3。それに三航艦司令部の命令は、あくまでも偵察ですぜ』

 三航艦司令部は同時に迎撃機の出撃も進めている。旗艦の空母<大鳳>のみならず、同じく空母<雲龍>と<天城>からも烈風が飛び立っていた。まもなく戸張に追いつくだろう。

「わかってるよ! なんだ、貴様等ノリが悪いな。その言い草じゃ、まるでオレが戦闘莫迦みてえじゃねえか」
『…………』
『…………』
「おい、黙るなよ!! 何とか言え!!!」

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【北太平洋上 <宵月>よいづき

 同じ頃<宵月>の艦内でも戦闘配置が下命され、兵員が慌ただしく艦内を動き回っていた。
 儀堂は電測員からの報告を受けながら、迎撃のため最適な位置へ艦を移動させようとしていた。なるべく舷側(船の側面)を向けて、艦載火器の射界に捕らえるつもりだった。船団に到達する前に、一匹でも多く叩き殺しておきたかった。

『ギドー、奴ら真っ直ぐこちらに向っておる』
 ネシスが殺気だった声で、知らせてきた。
「敵獣のタイプはわかるか?」
『少し待つが良い……』

 魔導機関室、そのマギアコアの中でネシスは神経を集中させた。電探から流れ込んでくる反射波の影を自身の視界に投影させる。うっすらと灰色ががかったもやが徐々に凝集され、一つの影を結んだ。

『わかった。あやつは――』

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【北太平洋上空】

『キヨセ2よりキヨセ1へ。隊長、こいつは不味いですよ』
『キヨセ3より、すぐに司令部へ報告を――』
「わかってる! ド畜生が! 反則だろう!!」

 眼下に敵集団が見えている。彼等三人の網膜に映し出されていたのは、編隊を組む無数の巨大なワイバーン飛竜の群れだ。一個体で全長10~15メートル近い魔獣だった。ざっと300は越しているだろう。濃紺の翼の群れが一塊になって、大空を突き進んでいる。まさに魔の騎行シュヴォシェであった。

「キヨセ1より、オオトリ艦隊司令部へ。敵獣を目視す。タイプはワイバーン。大編隊だ。少なくとも300はいる。これよりキヨセは制空戦闘へ移行。終わり」

 すぐに僚機へ回線を切り替える。

「キヨセ1より、各機へ。これより敵獣編隊へ強襲をかける」

 僚機からそれぞれ了解の応答。

「ああ、それから……賭けはオレの負けだ」

――畜生。誰がどう見ても、あれはテングじゃねえ。空飛ぶ大トカゲだぜ。

「掛け金は払ってやる。ただし死人には払えん。三途の川の渡し賃を出すつもりはないからな。だから生きて返れよ」

 戸張は機体を大きく左旋回しつつ急降下させた。僚機の二人は咳き込むように笑いながら、後に続いた。

 三機の編隊はワイバーンの群体上後方、ちょうど死角になっているところから突っ込むかたちになった。光像式OPL照準器に翼を広げたトカゲの影が一杯に広がったところで、発射把柄トリガーを握った。
 赤い火線が伸びていき、胴体に銃弾の穴が穿たれる。たちまち紫色の血を噴き出し、3匹が散り散りになって落ちていった。

 撃墜3体、残敵は無数なり。

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