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レッドサンブラックムーン -機密解除された第二次大戦における<異世界からの干渉>および<魔獣との戦闘>に関する記録と証言について-

弐進座

六反田少将(Warmonger) 4

「主目的とは? 魔獣との戦争ですか?」
「そう、そいつの解決という点においてね。あの儀堂大尉とオレは一致している」
「しかし、我々と彼とでは手段に乖離があるように思われますが?」

 矢澤も儀堂の経歴に一通り目を通していた。彼が経歴から受けた印象は生粋の魔獣殺しビーストキラーだ。

「我々は魔獣との戦争終結を講じてきました。それは魔獣の根絶と同義とは限りませんよ。聞けば、あのカプセルの鬼は日本語を話したとか?」
「ああ。それもやんごとない言葉遣いで、流暢にな。正直、オレが一番驚いたのその点だよ。矢澤君、気づいているだろう? こいつは世紀の大発見だぜ。何せヤツラは話せる相手・・・・・だってことがわかったんだからな」
「ええ……全くです。話せるのならば当然、交渉も不可能ではない」

 矢澤は魔獣側との講和を視野に入れていた。六反田は手を振って否定した。

「講和なら今の段階では全く無意味だぞ。下手をしたら数十年先になる」
「もちろん今すぐは無理ですよ。しかし話の通じる相手ならば可能性はあるでしょう?」
「いいや、そうでもない。矢澤君、君はときどき妙なところで理想主義に傾倒するな。いいか。人類はまだこの戦いに飽きちゃいないんだ。それどころかますますのめり込んでおる。まあ、その話は今はいい。矢澤君、君にもう一働きしてもらうぞ」
「はあ……」

 矢澤は露骨に嫌そうな顔を浮かべた。この上官、これは徹夜させる気だ。

「明日の朝、すぐに海軍省へ向かう。そこで山本さん軍令部総長にこのペーパーを渡すつもりだ。君にはGFとEFに同じものを届けて欲しい」
 六反田はついさっきこしらえた上申書を手渡した。
「中を見ても?」
「構わんよ」

 矢澤は書類をめくり、ほどなく上官の正気を疑うこととなった。そこには儀堂大尉にある任務を課すよう申し送りが添えてあった。

「……暴挙にもほどがありませんか?」
 忌憚ない感想罵倒に六反田は吹き出した。
「酷い言いようだな。だが的確だ」
「こんなのGFの山口大将が許しませんよ。EFの了解もとれるかどうか――いくら何でも早急すぎます」
「だから、その上の軍令部総長山本さんに頼むんだよ」
「何をそんなに急がれているんです?」
「北米だよ」

 六反田は低い声で言った。

「……何かあるのですか?」
「米英軍の大反攻作戦だ。連中、東海岸を取り戻すつもりらしい。だがオレは手痛く失敗すると思っている。それも取り返しのつかんほどの大敗北を喫してな。矢澤君、君も北米のレポートは読んだだろう。せいぜい今の戦線を維持するのが手一杯のはずだ。それなのに攻勢に出たら……ま、この先はいわずともわかるな。そうなる前にオレ達日本がこの戦争の主導権を握る必要がある」
「そんなまさか……連中だって莫迦じゃないでしょう? なんでまたそんなことを……?」
「国内世論に押されてやむなくというところだな。合衆国は特にそうだ。まあ無理はなかろう。国土の東半分がわけのわからん魔獣の巣にされたのだからな。彼等にとり、国土の回復レコンキスタ明白な命題マニフェストデスティニーなのさ。あとほら、特に英国はもうすぐ選挙だろう? 両国ともとかく民衆の声がでかい。その点、我が国は良くも悪くも慎ましいもんだが」
「民意が兵を殺すのですか?」
「その通り。麗しき近代国家の美徳ヴィルトゥスだよ。我が国とて例外ではないぞ。何せ合衆国相手に戦争をふっかけようとしていたのだからな。君には身に染みてわかっているはずだ」

 矢澤は気を落ち着かせるため、紫煙で肺を満たすと、大きくはいた。

「……作戦開始はいつなんですか?」
「今年の春だ。遅くとも4月には開始される」

 矢澤は絶句した。3ヶ月もないではないか。

「わかっただろう? だから、あの儀堂大尉には人柱になってもらうほかないのさ」


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