じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

11章 モンスター・用語辞典

●11章 モンスター図鑑

この図鑑は、ギネンベルナ王室が編纂した、全国に生息するモンスターの特徴、生態、戦う際の注意事項などを記したものである。これを読めば、読者諸君は危険なモンスターに対する最低限の知識を得る事が出来るだろう。ただし、留意しておいてほしい。ここに記されているのは、あくまでも多種多様なモンスターの一側面に過ぎない。諸君が実際に剣を握り、モンスターと相対する際には、必ずしも本に書かれた知識だけが全てでない事を忘れないで頂ければ幸いだ。

“危険度”について
そのモンスター一体のみに対して、人間が戦いを挑む場合の脅威の指針。

S……生物の頂点に位置する種族。人間が大軍を成したとしても、討伐は極めて困難。ドラゴン種などが該当。

A……非常に凶暴。人間単体では歯が立たず、屈強な戦士たちによる軍隊の形成が必要。オーガ、ゴーレムなどが該当。

B……危険だが、熟達した知識と技量があれば討伐可能。ただし一人では苦戦を強いられるであろう。ライカンスロープ、トロールなどが該当。

C……単体では弱く、一人前の戦士なら十分応戦可能。だがこのランクのモンスターは群れを成すことが多く、個としての弱さを補っているので注意されたし。オーク、ゴブリンなどが該当。

D……極めて脆弱、もしくは危険性のない生物群。

・モンスター詳細

フリア
魔族目 蛇淫魔科 危険度B+
蛇の姿に似た悪魔の一種。
額に大きな第三の目を持ち、その眼力をもって獲物に強力な催眠を掛ける為、戦う際は絶対にフリアの目を見てはならない。他の魔族にも言える事だが、銀製の武器が弱点である。
正確な生息地は不明だが、暗所や夜間での遭遇例が多い事から、暗がりを好むと考えられている。そこで獲物を待ち伏せ、催眠を掛けて自由を奪う。フリアの催眠は強烈な性的興奮をもたらし、それに負けて劣情を抱くと、フリアの体内への侵入を許してしまうとされる。その後は数時間ほどで勝手に体外へ抜け出していく。獲物となった動物は死ぬ事はないが、必ず生殖機能を喪失している事から、精巣及び卵巣を餌としている可能性が示唆されている。この事から、かつては子を望めぬ体質の人を「フリアの抜け殻」と呼ぶ差別用語が存在した。戒めとしてここに記すが、決して他者に使おうなどとは思わないように。

バジリスク
無翼鱗目 蛇王科 危険度A+
蛇の王とも称される大蛇。
眼に強力な呪いの力を持つ。両目を見てしまうと全身の感覚を喪失し、動けなくなってしまう。目を見ない、もしくは側面から攻撃し、両目を見ないように心がけるべし。また、牙には致死性の毒があるため、これも要注意。
深い洞窟、特に地底湖を好んで根城にする。大変な長寿であり、死ぬまで成長を続ける。大きな個体は全長百キュビットにも達し、洞窟全体にとぐろを巻く姿はまさに王たる風格である。本種もヒキガエルに托卵する習性があり、卵は地上に産み落とされ、幼蛇はしばらくは地表で生活する。
産卵は一生の内に一度だけ行われる。繁殖期が近づくと、養分を得ようと地上を這い回る事が多くなる。この時、同種以外の無翼鱗目、つまり蛇を積極的に捕食する傾向にあり、これが蛇の王と呼ばれる所以でもある。この時期になると森から蛇が姿を消すので、繁殖期の到来はわかりやすい。またその際、生息域を同じとするエアレーに遭遇すると、激しく襲い掛かる。この理由は長年不明とされていたが、近年になって、エアレーが天敵バジリスクと勘違いして、他の蛇にも積極的に攻撃するという習性が明らかになった。この事から、餌となる蛇が居なくなる事を恐れてエアレーを襲うのではという学説が立ったが、しかしではなぜエアレーにそんな習性があるのかは未だに不明で、卵が先か鶏が先かという議論を招いている。

ワーム
多毛目 鬼沙蚕科 危険度A−
細長い体を持つ大型の虫型モンスター。
肉食。自分より小さな動物に積極的に襲い掛かる。目は退化しており、洞窟の微細な振動を全身の毛で感知する。そっと近づき一撃で仕留めるか、遠距離から魔法で攻撃しよう。とにかく巨大な為、ずるずるという移動音を聞き逃さないこと。
温暖な地域の洞窟に棲息。ムカデのように見えるが、陸生のゴカイの仲間である。生涯脱皮をし続け、死ぬまで成長を続ける。全長が二百キュビットを超えたという記録もあり、その大きさだけで危険度Aに分類されるモンスターでもある。体は柔らかいが、全身に副臓器を持ち、胴体が半分になっても死ぬことがない。さらに脱皮によって失った部分を再生する等の特徴から生命力の象徴とされ、特にワームの牙は、長寿の効用があると人気の珍品である。

ラミア
無翼鱗目 人蛇科 危険度B+
女性の上半身を模した頭部を持つ蛇。
女性の声を出して獲物を誘う。人間を模した部分に油断して近づくと喉笛に噛みつかれる。洞窟や森の奥地など、不自然な場所で上裸の女を見かけた場合には、真っ先に本種の可能性を留意すること。また、男性を朦朧とさせるフェロモンを発するため、可能であれば女性が対処に当たるのが望ましい。
深い洞窟や薄暗い密林などの暗所を好む。本種の最大の特徴は、人間を擬態した頭部を持つ事である。見た目はかなり精巧で、眼球や腕などの細部まで稼働が可能で、さらに発声までやってのけるこだわりようである。この部位を疑似餌として利用し、知らずに近づいてきた人間の男性、または人間を捕食する他のモンスターを捕食する。ただし、具体的なコミュニケーションや、衣服をまとうなどのより人間らしい所作は行えない為、じっくりと観察すれば判別は可能である。この疑似餌部分は特殊なフェロモンを発していて、人間の男性の意識を混濁させる効果がある。獲物が近づいてくると、この疑似餌部分を左右に開き、その奥にある穴部から本当の頭部を出現させ、獲物を喰らう。
本種の疑似餌部分は、ラミアの年齢によって姿が変化する。若いラミアなら少女の姿に、年老いたラミアなら老婆の姿になる。孵化したばかりのラミアはこの部位を持たず、脱皮するにつれて頭部および肋骨が大きく発達し、四度目の脱皮で人の姿へと変容する。一説では、かつて女性魔術師が合成魔術の実験中に失敗し、蛇と結合してしまったことでラミアとなったと言われているが、信憑性に欠けるため、学会はこの説を否定している。

ミイラ
死霊目 木乃伊科 危険度C
乾燥した体を持つアンデッド。
実体を持つアンデッドの例に漏れず、動きは緩慢。火にも弱く、対処は容易な部類に入るだろう。物理攻撃で倒す場合は足を先に狙うと良い。
性質上乾燥地に多く、野垂れ死にした旅人の成れの果てである場合が多い。このミイラはゾンビに火という弱点を追加したようなものなので、見た目の恐ろしさを除けばそれほど怖いモンスターではない。自我は失われているが、生前の記憶が僅かに残っているようで、自分の故郷に帰ろうと荒野を彷徨う。一部地域ではミイラの腕を薬の材料として用い、高値で取引される為、専門のハンターが存在するほどである。ただし、古代の遺跡などでは全身を包帯で覆われた個体が出没する事が確認されている。これらの個体は通常のミイラよりも遥かに強い力を持つ事がある為、危険度A相当として対処しなければ、文字通りミイラ取りがミイラになる事だろう。

●11章 用語辞典

オリハルコン
希少なマナメタルの一種。魔力との親和性が高い緋色の金属。

呪い
人間や一部の生物が操る、超自然的な力。魔法の一種だと考えられているが、魔術師以外でも行使が可能なこともあり、未知の部分が多い。一般的には神殿で解呪をしてもらう。

星の記憶
アカシックレコード。魔法の行使を補助する法則性のこと。この法則性に従って、魔術師は呪文を唱える。

遺嶺道
一の国と二の国の国境付近にそびえる遺跡。何かの祭事に使われていた痕跡が見つかっている。

影結
死者と生者で子を成す儀式。古代の秘術であり、現在は一の国のごく一部にのみ伝えられている。

ウィゲル語
古代に使用されていた言語。ゲヘナの一部の遺跡にもこの言語が見られる。

●11章 魔法辞典

・(無属性)

フラッシュチック
黄色い閃光を生み出す。

キュアテイル
傷を治す。

パロットパローラ
自分と同じ言語を相手に刷り込む。

・(火属性)

ファイアフライ
小さな蛍光色の火の玉を複数飛ばす魔法。

フレイムパイン
燃え盛る柱を地面から生やす。

フレーミングバルサム
パチパチと爆ぜる火花を散らす。

ジラソーレ
大きな火球を飛ばす。

トリコデルマ
高温の赤い火の粉を撒き散らす。皮膚に触れると爛れ、吸い込むと肺を火傷する。

メイフライヘイズ
高熱を放ち、蜃気楼を発生させる。

・(風属性)

ストームスティード
疾風の速さで走る馬を呼び出す。

ウィンドローズ
世界のどこかで吹いている風を呼び出す。

・(氷属性)

スノウウィロウ
氷の鞭で打ち付ける。

メギバレット
氷の弾丸を撃ち出す。

アントルメグラッセ
冷気を操り、動く氷のオブジェを作る。

ゼロアベーテ
氷点下の空間を生み出し、広範囲を凍て付かせる。

バッカルコーン
無数の氷柱を発生させる。

・(水属性)

ポンドロータス
清らかな水を湧き上がらせる。

アメフラシ
空気中の水分を集め、雨のような雫を降らす。薬液などを混ぜることもできる。

ラストアルガ
霧状の水を吹き掛け、金属を腐食させる。

・(鉄属性)

メンタップリフレクト
魔法を反射する金属の盾を作り出す。

・(冥属性)

ソウルカノン
霊力の塊を飛ばす。アンデッド限定だが、凄まじい威力を誇る。

ディストーションハンド
右手を霊体化させ、アンデッドを使役する。

ディストーションハンド・ファズ
アンデッドの状態を巻き戻す。

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