じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。
11-1 打ち上げ
11-1 打ち上げ
それからの二週間は、あっという間に過ぎていった。
朝起きて、みんなの現場を回り、時にはもめ事を仲裁して、くたくたになって眠りにつく。気づいたら朝になっていたし、気づいたら夜になっている。これを何度も繰り返しているうちに、あっという間に時間は過ぎた。
最初はトラブルばかり起こしていた仲間たちだけど、周囲の態度は少しずつ変わっていった。
ライラに意地悪ばかりしていた魔術師たちは、最終的には、どう頑張ってもライラにはかなわないという事実を受け入れたらしい。そして振り出しに戻って、何とかライラをギルドに引き込もうと躍起になり始めた。見事な手のひら返しっぷりに、俺もライラも呆れたもんだ。アルルカには最後までお呼びがかからず、ずっと不貞腐れていた。
フランとエラゼム、とくにフランには、最初はからかいの声も多く飛んだ。が、大人顔負けの力を発するフランや、重い鎧を着ているのにどれだけ働いても疲れないエラゼムを見て、次第に恐怖の感情のほうが勝っていったらしい。最後の方は、誰も二人にちょっかいを掛けようとはしなかった。それが賢明な判断だろうと、俺も思う。
一方で、城からの評判は良かった。百人力の仲間たちによって、王都の復興は予定の何倍も速く進んだからだ。エドガーは優秀な人材を連れてきたということで、周囲から大変もてはやされたらしい。満面の笑みでやってきては、何度も俺の背中を叩いて激励を飛ばしていった(どんどん頑張れよ!お前たちが頑張れば、私の評判がどんどん上がるからな!)。本当にありがたくて、涙が出そうだ。ちくしょう。
あと、知らぬ間に、俺の評価が侍女たちの間で爆上がりしていた。どうやら俺は、「すごく器用な子」として認知されていたらしい。いわく、部屋にいるかもわからないのに、普通の人の何倍も作業が早いとのこと。そりゃそうだ、実際は疲れを知らないウィルがやっていたんだからな。俺は侍女たちに、ぜひその腕前を披露してくれとしつこくせがまれたが、頑なに断り続けた。ひとりでに出来上がっていくポプリを見られたら、どんな噂が立つか分かったもんじゃないよな。
かくして、俺たちの初めての労働は終わった。そして今日この日、俺たちは待望の、給料日を迎えたのだった。
「そら、お前たちの給料だ。ご苦労だったな」
エドガーがじゃりんと、重そうな袋をテーブルに置いた。俺はごくりとつばを飲み込んで、袋の口を開く。中からは、まばゆいばかりの黄金のコインが、キラキラと顔をのぞかせていた。
「お前たち全員分、しめて金貨七十枚分だ」
「七十枚……!」
当初の予定の七十五枚には少し足りていないけれど、それくらいなら手持ちで十分補える量だ。ってことは、つまり……
「やったーーーー!」
これにて、目標達成だ!俺は飛びついてきたライラと一緒に、部屋の中をくるくると舞い踊った。
「あれ、待てよ。でも、俺たち賠償金があるんじゃ……」
しまった、忘れていた。王都に来たその日、俺たちは家を何軒か壊してしまったのだ。そのぶんを差し引いたら、だいぶ金貨が減っちゃうんじゃないか……?しかし、エドガーは、顔を曇らせた俺にかぶりを振った。
「いいや。それはすでに差し引いてある。その分は正真正銘、お前たちに渡す給金だ」
「え?そ、そうなの?」
「ああ。あの後、魔術師ギルドの連中を問い詰めてな。参加者に対して事前に警告を発していない、などの過失が認められた。よってギルド側が受け持つ賠償額がずいぶん増えた、というわけだ」
「じゃあ俺たちの賠償額は、思ったよりも減ってたのか。はー、よかった。じゃあ、ほんとに万々歳でいいわけだな?」
「おう。こちらとしても助かったしな。おぬしたちのおかげで、復旧作業もずいぶん進んだ」
「へへ、そんならよかった。世話んなったな」
思い返せば、こんなに長く一つ所に留まったのは初めてだった。この部屋ともこれで最後かと思うと、少し名残惜しい気もするな。
「お前たちは、もう発つのか?確か、北へ向かうとか言っていたな。雇用関係が終わった以上、あまり城内に留めておくこともできんが」
「そうだなぁ。町で買い出しだけして、そしたら出発かな」
「そうか。まあ、一日くらいならいても構わんぞ。今日一日ゆっくりして、明日にでも出ていくといい」
「へー……なんだよ、ずいぶん親切だな。どういう風の吹き回しだ?」
俺がからかうと、エドガーは日に焼けた肌をかっと赤らめた。
「なっ……この、いつまでも口の減らん小僧め!えーいもういい、とっとと行ってしまえ!」
エドガーは荒っぽくドアを開けると、足をどすどす踏み鳴らして出て行ってしまった。彼がが出て行った戸口を見て、俺たちは声を立てて笑った。
「さて。それじゃ、隊長さんのお言葉に甘えて、町でゆっくり買い物でもするか」
王都の市は、ラクーンに負けず劣らずにぎやかで、逸品珍品の宝庫だった。絶対に燃えないサラマンダー製のマントと、常に刀身が燃えているスルトの剣は、俺の少年心を猛烈にくすぐった(値段を見て諦めた。たぶん五年は城で働くことになるだろう……)。そしてそれにもまして目を引くのは、道行く人々の華やかさだ。
「はー……」
思わずため息をついてしまった。いつしかアニが言っていたけれど、ほんとうに王都は美男美女が多い。つややかな髪を複雑に結い上げ、メリハリのついた体に上等なドレスを着た乙女。がっしりとした筋肉に、高い鼻ときりっとした眉毛の青年。かと思えば、男と見まごうほど長身で筋肉質な女性や、逆に華奢でなで肩の男性もいる。これほどまで、ありとあらゆるタイプの美形が揃っているとは、恐るべしや王都。普通の道が、モデルたちのファッションショーに見えてくるぜ。
しかーし!だからと言って、俺はみじめには感じなかった。俺が美形だから、というわけじゃないぜ。なぜなら、今の俺には仲間がいるからな。
銀色の髪を美しくたなびかせるフランは、王都の乙女にも負けていない。ごついガントレットは顔に不釣り合いだったが、そのアンマッチさが、かえってミステリアスな彼女の魅力を引き立てている。俺はフランとすれちがった兄ちゃんが、思わず見とれて人とぶつかるのを二回も見た。
「くっくっく……」
「?」
俺が声を押し殺して笑うのを、フランが不思議そうに見ていた。
そんな時、俺はウィルが、すれ違った人の恰好を見て、寂しげにため息をついた事に気づいた。どうにも、自分の恰好に引け目を感じているようだ。まぁ確かに、フランの服は修道女のそれだし、聖職者は派手なおしゃれとは無縁だろうしな。
(とはいえ、ウィルもなかなかだよな?)
金色の髪はサラサラで、上質な金糸を束ねたようだ。黄金色をした垂れ目がちな瞳は、長いまつ毛に縁どられている。目元が優しい印象を与えるせいで、大人びて見えるんだよな。そして、本人は気にしているが、十分スタイルもいいと思う。その……上半身が豊かなせいで、着ぶくれしがちなんだろう。彼女の姿が見えていれば、間違いなくフラン同様、人目を引いただろうに……なんて、実際に口にはしないけどさ。口下手な俺が言っても、またオトメゴコロが分かっていないと怒られてしまうだろう。
(あ、ウィルと言えば……ちょっと前から、様子が変だったな?)
忙しさにかまけて忘れていたが、王都に来てからのウィルの表情は、曇りがちだった。最近彼女の笑った顔を見たのは、いつだっただろうか?せっかく目標を達成したんだし、今日くらいは明るく楽しんでもらいたいもんだけど……
「あ、そうだ。なあみんな、打ち上げをしないか?」
「打ち上げ?」
俺の提案に、フランが首をかしげる。
「何かを打ち上げるの?」
「いやいや、そうじゃなくて。こう、お疲れさまーっていう、お祝いみたいな?みんなよく働いたんだし、パーっとやろうぜ、みたいな」
「祝賀会、ということですかな?」とエラゼム。そうそう、それが言いたかったんだ。
「それってなにやるの?」とライラ。はて、何をやるんだろう……具体的な打ち上げに、そういえば参加したことなかったな。昔、運動会とかの後に、クラスの連中が行っていたような気がするが……誘われるわけないので、内容までは知らなかった。
「えーっとだな……」
俺が頭を悩ませていると、ウィルがぼそりとつぶやいた。
「お酒……」
「酒?」
「え?」
つぶやいた本人のウィルが、きょとんとしている。どうやら、口に出ていると思ってなかったみたいだ。
「私、何か言いました?」
「うん、お酒って。けど、そういや前にも言ってたな。セイラムロットの酒場で出た酒が美味そうだったって」
「ああ、よく覚えてますね。でも、別にそこまでってほどじゃ」
「いや、けどいいんじゃないか?酒場で乾杯なんて、いかにも打ち上げっぽいだろ。ついでに飯も食えるし……あ、でもそれだと、みんなが楽しめないか」
俺は、ご飯が食べられない系アンデッドの、フランとエラゼムの方を見た。
「吾輩は、一向に構いません」
エラゼムは胸に手を当てると、礼をするように頭を下げた。
「吾輩にとっては、今日この日を迎えられたことこそが、最大の褒章でございます。吾輩の剣のために、皆さまに尽力をしていただいた事、感謝の念に堪えません。これ以上に望むものなど、ありませぬ」
実にエラゼムらしい、真面目な回答だった。そしてフランもまた、こくりとうなずいた。
「わたしも別に。そんなに大変でもなかったし」
「そうなのか?」
「うん。それに、いっぱい……」
「……いっぱい、なんだ?」
「……なんでもない」
フランはふいっと視線を逸らすと、ガントレットのはまった手で自分の髪を撫でつけた。なんなんだろう?
「まぁいいや。それじゃ、とっとと買い物済ませちゃおうぜ」
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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それからの二週間は、あっという間に過ぎていった。
朝起きて、みんなの現場を回り、時にはもめ事を仲裁して、くたくたになって眠りにつく。気づいたら朝になっていたし、気づいたら夜になっている。これを何度も繰り返しているうちに、あっという間に時間は過ぎた。
最初はトラブルばかり起こしていた仲間たちだけど、周囲の態度は少しずつ変わっていった。
ライラに意地悪ばかりしていた魔術師たちは、最終的には、どう頑張ってもライラにはかなわないという事実を受け入れたらしい。そして振り出しに戻って、何とかライラをギルドに引き込もうと躍起になり始めた。見事な手のひら返しっぷりに、俺もライラも呆れたもんだ。アルルカには最後までお呼びがかからず、ずっと不貞腐れていた。
フランとエラゼム、とくにフランには、最初はからかいの声も多く飛んだ。が、大人顔負けの力を発するフランや、重い鎧を着ているのにどれだけ働いても疲れないエラゼムを見て、次第に恐怖の感情のほうが勝っていったらしい。最後の方は、誰も二人にちょっかいを掛けようとはしなかった。それが賢明な判断だろうと、俺も思う。
一方で、城からの評判は良かった。百人力の仲間たちによって、王都の復興は予定の何倍も速く進んだからだ。エドガーは優秀な人材を連れてきたということで、周囲から大変もてはやされたらしい。満面の笑みでやってきては、何度も俺の背中を叩いて激励を飛ばしていった(どんどん頑張れよ!お前たちが頑張れば、私の評判がどんどん上がるからな!)。本当にありがたくて、涙が出そうだ。ちくしょう。
あと、知らぬ間に、俺の評価が侍女たちの間で爆上がりしていた。どうやら俺は、「すごく器用な子」として認知されていたらしい。いわく、部屋にいるかもわからないのに、普通の人の何倍も作業が早いとのこと。そりゃそうだ、実際は疲れを知らないウィルがやっていたんだからな。俺は侍女たちに、ぜひその腕前を披露してくれとしつこくせがまれたが、頑なに断り続けた。ひとりでに出来上がっていくポプリを見られたら、どんな噂が立つか分かったもんじゃないよな。
かくして、俺たちの初めての労働は終わった。そして今日この日、俺たちは待望の、給料日を迎えたのだった。
「そら、お前たちの給料だ。ご苦労だったな」
エドガーがじゃりんと、重そうな袋をテーブルに置いた。俺はごくりとつばを飲み込んで、袋の口を開く。中からは、まばゆいばかりの黄金のコインが、キラキラと顔をのぞかせていた。
「お前たち全員分、しめて金貨七十枚分だ」
「七十枚……!」
当初の予定の七十五枚には少し足りていないけれど、それくらいなら手持ちで十分補える量だ。ってことは、つまり……
「やったーーーー!」
これにて、目標達成だ!俺は飛びついてきたライラと一緒に、部屋の中をくるくると舞い踊った。
「あれ、待てよ。でも、俺たち賠償金があるんじゃ……」
しまった、忘れていた。王都に来たその日、俺たちは家を何軒か壊してしまったのだ。そのぶんを差し引いたら、だいぶ金貨が減っちゃうんじゃないか……?しかし、エドガーは、顔を曇らせた俺にかぶりを振った。
「いいや。それはすでに差し引いてある。その分は正真正銘、お前たちに渡す給金だ」
「え?そ、そうなの?」
「ああ。あの後、魔術師ギルドの連中を問い詰めてな。参加者に対して事前に警告を発していない、などの過失が認められた。よってギルド側が受け持つ賠償額がずいぶん増えた、というわけだ」
「じゃあ俺たちの賠償額は、思ったよりも減ってたのか。はー、よかった。じゃあ、ほんとに万々歳でいいわけだな?」
「おう。こちらとしても助かったしな。おぬしたちのおかげで、復旧作業もずいぶん進んだ」
「へへ、そんならよかった。世話んなったな」
思い返せば、こんなに長く一つ所に留まったのは初めてだった。この部屋ともこれで最後かと思うと、少し名残惜しい気もするな。
「お前たちは、もう発つのか?確か、北へ向かうとか言っていたな。雇用関係が終わった以上、あまり城内に留めておくこともできんが」
「そうだなぁ。町で買い出しだけして、そしたら出発かな」
「そうか。まあ、一日くらいならいても構わんぞ。今日一日ゆっくりして、明日にでも出ていくといい」
「へー……なんだよ、ずいぶん親切だな。どういう風の吹き回しだ?」
俺がからかうと、エドガーは日に焼けた肌をかっと赤らめた。
「なっ……この、いつまでも口の減らん小僧め!えーいもういい、とっとと行ってしまえ!」
エドガーは荒っぽくドアを開けると、足をどすどす踏み鳴らして出て行ってしまった。彼がが出て行った戸口を見て、俺たちは声を立てて笑った。
「さて。それじゃ、隊長さんのお言葉に甘えて、町でゆっくり買い物でもするか」
王都の市は、ラクーンに負けず劣らずにぎやかで、逸品珍品の宝庫だった。絶対に燃えないサラマンダー製のマントと、常に刀身が燃えているスルトの剣は、俺の少年心を猛烈にくすぐった(値段を見て諦めた。たぶん五年は城で働くことになるだろう……)。そしてそれにもまして目を引くのは、道行く人々の華やかさだ。
「はー……」
思わずため息をついてしまった。いつしかアニが言っていたけれど、ほんとうに王都は美男美女が多い。つややかな髪を複雑に結い上げ、メリハリのついた体に上等なドレスを着た乙女。がっしりとした筋肉に、高い鼻ときりっとした眉毛の青年。かと思えば、男と見まごうほど長身で筋肉質な女性や、逆に華奢でなで肩の男性もいる。これほどまで、ありとあらゆるタイプの美形が揃っているとは、恐るべしや王都。普通の道が、モデルたちのファッションショーに見えてくるぜ。
しかーし!だからと言って、俺はみじめには感じなかった。俺が美形だから、というわけじゃないぜ。なぜなら、今の俺には仲間がいるからな。
銀色の髪を美しくたなびかせるフランは、王都の乙女にも負けていない。ごついガントレットは顔に不釣り合いだったが、そのアンマッチさが、かえってミステリアスな彼女の魅力を引き立てている。俺はフランとすれちがった兄ちゃんが、思わず見とれて人とぶつかるのを二回も見た。
「くっくっく……」
「?」
俺が声を押し殺して笑うのを、フランが不思議そうに見ていた。
そんな時、俺はウィルが、すれ違った人の恰好を見て、寂しげにため息をついた事に気づいた。どうにも、自分の恰好に引け目を感じているようだ。まぁ確かに、フランの服は修道女のそれだし、聖職者は派手なおしゃれとは無縁だろうしな。
(とはいえ、ウィルもなかなかだよな?)
金色の髪はサラサラで、上質な金糸を束ねたようだ。黄金色をした垂れ目がちな瞳は、長いまつ毛に縁どられている。目元が優しい印象を与えるせいで、大人びて見えるんだよな。そして、本人は気にしているが、十分スタイルもいいと思う。その……上半身が豊かなせいで、着ぶくれしがちなんだろう。彼女の姿が見えていれば、間違いなくフラン同様、人目を引いただろうに……なんて、実際に口にはしないけどさ。口下手な俺が言っても、またオトメゴコロが分かっていないと怒られてしまうだろう。
(あ、ウィルと言えば……ちょっと前から、様子が変だったな?)
忙しさにかまけて忘れていたが、王都に来てからのウィルの表情は、曇りがちだった。最近彼女の笑った顔を見たのは、いつだっただろうか?せっかく目標を達成したんだし、今日くらいは明るく楽しんでもらいたいもんだけど……
「あ、そうだ。なあみんな、打ち上げをしないか?」
「打ち上げ?」
俺の提案に、フランが首をかしげる。
「何かを打ち上げるの?」
「いやいや、そうじゃなくて。こう、お疲れさまーっていう、お祝いみたいな?みんなよく働いたんだし、パーっとやろうぜ、みたいな」
「祝賀会、ということですかな?」とエラゼム。そうそう、それが言いたかったんだ。
「それってなにやるの?」とライラ。はて、何をやるんだろう……具体的な打ち上げに、そういえば参加したことなかったな。昔、運動会とかの後に、クラスの連中が行っていたような気がするが……誘われるわけないので、内容までは知らなかった。
「えーっとだな……」
俺が頭を悩ませていると、ウィルがぼそりとつぶやいた。
「お酒……」
「酒?」
「え?」
つぶやいた本人のウィルが、きょとんとしている。どうやら、口に出ていると思ってなかったみたいだ。
「私、何か言いました?」
「うん、お酒って。けど、そういや前にも言ってたな。セイラムロットの酒場で出た酒が美味そうだったって」
「ああ、よく覚えてますね。でも、別にそこまでってほどじゃ」
「いや、けどいいんじゃないか?酒場で乾杯なんて、いかにも打ち上げっぽいだろ。ついでに飯も食えるし……あ、でもそれだと、みんなが楽しめないか」
俺は、ご飯が食べられない系アンデッドの、フランとエラゼムの方を見た。
「吾輩は、一向に構いません」
エラゼムは胸に手を当てると、礼をするように頭を下げた。
「吾輩にとっては、今日この日を迎えられたことこそが、最大の褒章でございます。吾輩の剣のために、皆さまに尽力をしていただいた事、感謝の念に堪えません。これ以上に望むものなど、ありませぬ」
実にエラゼムらしい、真面目な回答だった。そしてフランもまた、こくりとうなずいた。
「わたしも別に。そんなに大変でもなかったし」
「そうなのか?」
「うん。それに、いっぱい……」
「……いっぱい、なんだ?」
「……なんでもない」
フランはふいっと視線を逸らすと、ガントレットのはまった手で自分の髪を撫でつけた。なんなんだろう?
「まぁいいや。それじゃ、とっとと買い物済ませちゃおうぜ」
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