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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

10-3

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「……そこまで言うなら、聞くけども。つまり、俺を殺そうとしたワケを教えてくれるってことだよな?」

「……言葉を選ばなければ、そういうことだ」

「けどあんた、言ってなかったか?俺を処刑するのは、俺が邪悪な死霊術ネクロマンスの能力を持っているからだって」

「それは、あくまで建前だ。死霊術は確かに魔法の中でも邪悪とされる術ではあるが、それは死霊術を用いようとする意図のこと指すのであって、術自体は魔法の一つに過ぎない」

「あ~……つまり邪悪かどうかは、ネクロマンスを使う人次第ってことか?」

「そういうことだ。しかし術の過程に死者を必要とする以上、どうしても術者は忌避されがちだ……その、我々がそなたにしたように」

「なるほど。けど、じゃあ一体なんで、あんたたちは俺をあんなにもしつこく殺そうとしてきたんだよ?」

「それは、この国で過去に起きた災厄が関わっているのだ。そなたも旅の途中で耳にしたのではないか?過去に存在した最悪の勇者の話を。目にしたのではないか、勇者を憎む人々を」

「あぁ……そりゃもう、さんざんな」

「そうであろう。では、その詳細な内容は知っているだろうか?」

「……まぁ、すこしだけ。女の人が、襲われた、とか」

フランのばあちゃんに聞いた話だ。そのせいでフランの故郷の村の人は、今でも勇者を強く、深く憎んでいる。

「うむ。強姦は、かつての災厄の中でも特に被害が目立ち、同時に目立たない悪行だった」

……?ロアは、不思議な言い回しをした。目立って、目立たない?

「あまり気持ちのいい話ではないが、そなたにすべてを説明するために、あえて詳細を語らせてもらう……かつてかの勇者が我が国にもたらした被害のうち、王城に記録として残っているものでは、暴行が一番多く三百二十五件だ。みな一様に特に理由のない、しいて言えばむかついたから程度の動機だったと記録されている。次に殺人、五十六件。暴行の結果被害者が死亡したケースが多かった。窃盗も多い、百三十六件だ。民家に押し入り、棚の中などを勝手に物色した。家具などの器物破損、三十七件。大きなものでは橋一つ破壊されている」

俺はぽかんと口を開けた。挙げられた数々の悪行もそうだが、それをロアがよどみなくすらすらと述べることに驚いたのだ。まるで記録ファイルがまるまる頭の中に入っているような……

「……そして、それらのなかでも特に被害が多く、同時に人々の記憶と心に深く爪痕を残したのが、婦女暴行、強姦だ。しかしこれは、被害記録としてはほとんど報告が上がってきていない。みな、自分が襲われたことを口外しなかったのだ」

……わかる気がした。そんなこと、誰だって他人に言ったりはしたくないだろ。

「城に記録として残っているのは、ほんの数十件程度だ。しかし、ほぼ確実に暴行が行われたであろう被害者は、ゆうに百人を超える。被害状況と照らし合わせた私の推測では、おそらくその数倍の被害者がいるはずだ」

「すっ、数百人ってことかよ……?」

信じられない。一日一人だとしても、ほぼ一年毎日だぞ……?う、やめよう。いい例えじゃなかった。

「なんで、そんなことになっちゃったんだよ?それだけ悪い勇者なら、あんたたちが黙ってないだろ?」

「しなかったのではない。できなかったのだ……」

ロアはいったん言葉を区切ると、ふうと小さく息をついた。エドガーが心配そうな顔でロア見つめている。

「その当時は、先代の女王、私の母上の時代だった。もう二十年以上も前になるか……時代は“三十三年戦争”の真っただ中だった。三の国が勇者召喚システムを完成させ、一の国がそれを使って最強の勇者、“ファースト”を呼び出し、魔王軍を破竹の勢いで倒していたころだ。我が二の国ギネンベルナも、一の国に後れを取らぬよう、積極的に勇者を召喚していた。幾人もの勇者が道半ばで力尽きる中、ある時ついに、ファーストにも引けを取らない強い力を持った勇者を呼び出すことに成功したのだ。その勇者こそが、“セカンド”。のちに我が国に史上最悪の災いをもたらすことになった、最強にして最低の勇者だ」

セカンド……ファーストに次ぐ、二番目ってことか。

「セカンドも、最初は従順であったと聞く。ファーストとともに、魔王軍の戦線を次々と撃破していったそうだ。母上を含む城の上役たちはすっかり機嫌を良くし、勇者セカンドに様々な褒美と、特権を認めた。だがそれが、セカンドが内に秘めていた暴力性を増長させてしまう形となった。その当時は、誰も気づいていなかったのだろう……セカンドがこの国の誰よりも強くなっていたということに」

誰よりも、強く……フランのばあちゃんも、そんなようなことを言っていた。誰より強いということは、だれにも止められないということ……

「セカンドは、少しずつその本性をあらわし始めた。初めのうちは些細なものだったらしい。ちょっと村人ともめ事になっただとか、多少素行が悪い程度だ。戦局もいよいよ大詰めに入り、王家は少しくらいのお痛は大目に見た。それが、ますますセカンドを図に乗らせた。そしてついに、最初の犠牲者が出た」

ごくり。俺は知らぬうちに、唾を飲み込んでいた。

「戦線の近くの、とある小さな村だった。そこの若い男女が被害にあった。男は死体で、女は衣服を身にまとわず、心神を喪失した状態で発見されたそうだ。現場の状況から察するに、女が襲われたことは明らかだった。男はそれを止めようとして殺されたのだろう。恋人だったのかもしれぬ……」

「う……そんなことって……」

「しかし当初は、それがセカンドのしわざだとはわからなかった。女はショックで記憶喪失になっていて、まともに事件のことを話すことができなかった。ことが明るみに出たのは、セカンドの被害がそうとうに広がってからだった」

「じゃあ、そこで止めていれば……ああ、くそっ。そういや、そいつは“最強”なんだっけか」

「その通りだ。さらに言えば、奴の戦力は三十三年戦争において、非常に大きかったのもある。王家は必死に奴の機嫌を取り、なだめすかすしかなかった」

「ちっ。最悪だな……」

「ああ……だがそのかいあって、戦況は終始われわれ人間軍が優勢だった。そしてついに三六六年に、魔王を討ち取ることに成功したのだ……一時的に」

ああ、これは前にアニから聞いたことだある。魔王を倒したと思ったら実は生きていて、最近になって復活したんだとか。あれ?でもそうすると、そのセカンドやファーストはどこ行っちゃったんだ?魔王はまだ生きているんだぞ。

「……ところでそなたは、終戦からしばらくの間、戦いが続いていたことを知っているだろうか?」

「へ?あ~……そういえば、そんなこと聞いたような」

確かアニが、似たようなことを言っていた気がする……でも、どうして戦いが続いたんだっけ?アニは、なんやかんやあってみたいな言い方しかしていなかった……

「続いたことは知ってるけど、その理由は知らないや」

「そうか。王家としては、あまり公にはしたくない事柄ではあるが……だが、それについても説明しなければなるまい。その出来事が、王家の勇者に対する姿勢を決定づけたといっても過言ではないのだから」

勇者への姿勢……つまり、呼びつけておいてぶっ殺すという、なかなかふざけた体制のことだな。しかし、これだけセカンドの悪行を聞くと、正直納得しかけている自分がいるが……


つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

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