じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。
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「きゃあ!」「うわっ、なんだ?」
あ!城壁の上のほうで、炎が上がっている!まさか、ついに破られたのか?
「今の、魔法反応だ!」
ライラが大声で叫ぶ。魔法反応?ってことは、今の爆発は魔法を撃ったってことか。
『あ、そうでした!王家には、お抱えの魔術団がいるのです。その魔術師が、呪文でスパルトイを追い払ったのでしょう』
「おお!そっか、王様なんだから、魔法使いの家来だっているはずだよな」
俺はアニやウィル、ライラの頼もしい魔法の数々を思い出す。あれが何人もいるのだったら、うん万の怪物だってやっつけられるかもしれない。俺はいつの間にか王城の応援をしていることに驚きつつも、内心ほっとしていた。
「となれば、案外いい勝負になるかもしれないな。あの高い壁に魔法があれば、そうやすやすとは破れないだろ」
ここが長引くようなら、先に城下町の火事を食い止めたほうがいいかもしれない。さっきの兵士には悪いが、俺たちがここでできることもなさそうだし……俺がそう考えていた矢先、フランがまたしても、戦いのさなかに何かを見た。どうやら、敵側に動きがあったらしい。
「なんか、兵を下げてるみたいだよ。城壁からも、化け物が引いていく……」
え?ほんとだ、壁から一斉にスパルトイが下りていく。そのざわざわとした動きがアリの大群みたいで、俺は少し寒気がした。
「どうしたんだろう?魔術師には勝ち目がないと悟って、引きあげさせたのかな」
「わかんない。けど、ここにきてあっさり引き下がるかな。もしかしたら、攻め方を変えるつもりなのかも……」
俺たちの予想は、フランのほうが正解だった。少しすると、敵兵たちはなにやら、やぐらのようなものを組み始めた。破城槌か?いやいや、投石器じゃないか?魔法を撃つための発射台かもしれない……俺たちがいろいろ意見を交わしているうちに、やぐらは組みあがった。しかしそれだけで、その上に大砲が設置されるとかの動きはない。どうしたんだろうと首をかしげていたその時、俺は、フランがぎゅっと唇をかみしめていることに気付いた。
「フラン……?どうした?何か見えたのか?」
「……あれは、攻撃のための装置なんかじゃない」
「え?じゃあ、いったい」
「あれは、処刑台だ」
俺たちは、フランの言葉に凍り付いた。まさか。まさかあいつら……そういう攻撃をするつもりなのか?
「……今、一人目が柱に縛り付けられてる。よく見えるように、周りで火も焚いてるみたい……」
フランの言った通り、やぐらの周囲がにわかに明るくなった。それと同時に、敵のうちの一人が、城壁に向かって大声で呼びかけ始めた。びっくりするくらいの声量だ、ここまではっきりと聞こえてくるぞ。魔法か何かで拡張しているのかもしれない。
「王女、ロア・オウンシス・ギネンベルナに告ぐ!今すぐ、無駄な抵抗をやめて、投降せよ!これ以上の戦闘の遅延は、不必要な犠牲を生み出すだけである!」
城壁側からは、何の返答も返ってこない。そいつも返事は期待していなかったのか、変わらない声色で続けた。
「ここに、貴様のために身を捧げんとした、哀れな愚か者が、何人かいる!本来であれば万死に値するが、我々は慈悲深い!貴様が己の過ちを認め、おとなしく降伏するのであれば、この者たちの命は助けてやろう!」
城は、なおも静まり返ったままだ。でも、だとしたら、あの縛られた人質はどうなるんだ……?
「ぎゃあああああぁあぁあぁぁぁ!」
静寂を引き裂くような、壮絶な悲鳴があたりを震わせた。そのおぞましい悲鳴は、耳から入り込んで、脳を揺さぶるようだった。ウィルは小さく悲鳴を漏らし、ライラは耳をふさいで、ぎゅっと目をつむった。
「あああぁぁぁぁああっ……がっ……」
唐突に、悲鳴はやんだ。その不自然すぎる途切れ方は、安堵よりも恐怖を掻き立てる。
「……見よ!貴様が保身に走ったせいで、この者の未来は閉じられてしまった!なんたる卑怯!腑抜けたものだ!家臣に犠牲を強いる王など、王にあらず!」
なっ……自分たちが殺しておいて、言ってることがむちゃくちゃだ!城壁の上のほうからも、さすがに罵倒の声が聞こえてくる。卑怯なのはどちらだ!人でなし、汚いぞ!
「もう一度言う!王女よ、投降しろ!ひとりだけで、我々のもとへ出てくるのだ!貴様の首一つで、ここにいる全員の命が助かるのだぞ!何を迷うことがある!」
当然、城門が開いて、王女が姿を現すことはなかった。やはり織り込み済みなのか、そいつはかまわず続ける。
「ここに、砂時計がある!この砂が、この者たちの命の残量だ!砂が落ちきるたびに、一人処刑する!一人でも多く救いたいのであれば、お早くすることだ!」
砂時計……ここからじゃ見えない。その砂が落ちきるのにかかる時間はどれくらいだろうか?一時間か、三十分か、十分か……
「っ!あいつらを止めないと!」
俺はかっとなって、思わず駆けだそうとした。だが、フランが俺の肩をぎゅっと押さえつける。
「待って!今言っても、むざむざやられに行くだけだ!」
「でも、早くしないと!」
「だからって、あなたが死んでいいわけないでしょ!敵の数があまりにも多すぎる。考えなしに突っ込んでも、つぶされるのが関の山だよ」
く……フランの言っていることは、正しい。俺たち五人だけじゃ、できることなんてたかが知れている。あの大軍を突破して、捕らわれた人たちを助け出すなんてことは……
「……待てよ。五人だけ……?」
そのとき俺の脳裏に、閃光のような閃きが走った。
「……なあ。もしかしたら、この状況を打開することができるかもしれない」
「え?」
フランが怪訝そうな顔をする。無理もない、俺だって、正直半信半疑だ。うまくいくかの保証なんてないし、実践ありきの出たとこ勝負になるだろう。でも。
「今日俺たちがここに来たのは、人を、命を死なせないためだ。一人でも救える命があるんなら、俺はそいつを見捨てたくない」
俺は不安な気持ちを蹴っ飛ばして、一気に言い切った。その俺の気持ちが伝わったらしい。仲間たちも、覚悟を決めた表情になった。
「して、桜下殿。どのような策をお考えで?」
エラゼムの問いかけに、俺は自分の考えを話して聞かせた。確証はないけど、自信はある。俺たちは作戦を実行に移すべく、水面下で行動を開始したのだった。
つづく
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新年になりまして、物語も佳境です!
もっとお楽しみいただけるよう、しばらくの間、小説の更新を毎日二回、
【夜0時】と【お昼12時】にさせていただきます。
寒い冬の夜のお供に、どうぞよろしくお願いします!
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あ!城壁の上のほうで、炎が上がっている!まさか、ついに破られたのか?
「今の、魔法反応だ!」
ライラが大声で叫ぶ。魔法反応?ってことは、今の爆発は魔法を撃ったってことか。
『あ、そうでした!王家には、お抱えの魔術団がいるのです。その魔術師が、呪文でスパルトイを追い払ったのでしょう』
「おお!そっか、王様なんだから、魔法使いの家来だっているはずだよな」
俺はアニやウィル、ライラの頼もしい魔法の数々を思い出す。あれが何人もいるのだったら、うん万の怪物だってやっつけられるかもしれない。俺はいつの間にか王城の応援をしていることに驚きつつも、内心ほっとしていた。
「となれば、案外いい勝負になるかもしれないな。あの高い壁に魔法があれば、そうやすやすとは破れないだろ」
ここが長引くようなら、先に城下町の火事を食い止めたほうがいいかもしれない。さっきの兵士には悪いが、俺たちがここでできることもなさそうだし……俺がそう考えていた矢先、フランがまたしても、戦いのさなかに何かを見た。どうやら、敵側に動きがあったらしい。
「なんか、兵を下げてるみたいだよ。城壁からも、化け物が引いていく……」
え?ほんとだ、壁から一斉にスパルトイが下りていく。そのざわざわとした動きがアリの大群みたいで、俺は少し寒気がした。
「どうしたんだろう?魔術師には勝ち目がないと悟って、引きあげさせたのかな」
「わかんない。けど、ここにきてあっさり引き下がるかな。もしかしたら、攻め方を変えるつもりなのかも……」
俺たちの予想は、フランのほうが正解だった。少しすると、敵兵たちはなにやら、やぐらのようなものを組み始めた。破城槌か?いやいや、投石器じゃないか?魔法を撃つための発射台かもしれない……俺たちがいろいろ意見を交わしているうちに、やぐらは組みあがった。しかしそれだけで、その上に大砲が設置されるとかの動きはない。どうしたんだろうと首をかしげていたその時、俺は、フランがぎゅっと唇をかみしめていることに気付いた。
「フラン……?どうした?何か見えたのか?」
「……あれは、攻撃のための装置なんかじゃない」
「え?じゃあ、いったい」
「あれは、処刑台だ」
俺たちは、フランの言葉に凍り付いた。まさか。まさかあいつら……そういう攻撃をするつもりなのか?
「……今、一人目が柱に縛り付けられてる。よく見えるように、周りで火も焚いてるみたい……」
フランの言った通り、やぐらの周囲がにわかに明るくなった。それと同時に、敵のうちの一人が、城壁に向かって大声で呼びかけ始めた。びっくりするくらいの声量だ、ここまではっきりと聞こえてくるぞ。魔法か何かで拡張しているのかもしれない。
「王女、ロア・オウンシス・ギネンベルナに告ぐ!今すぐ、無駄な抵抗をやめて、投降せよ!これ以上の戦闘の遅延は、不必要な犠牲を生み出すだけである!」
城壁側からは、何の返答も返ってこない。そいつも返事は期待していなかったのか、変わらない声色で続けた。
「ここに、貴様のために身を捧げんとした、哀れな愚か者が、何人かいる!本来であれば万死に値するが、我々は慈悲深い!貴様が己の過ちを認め、おとなしく降伏するのであれば、この者たちの命は助けてやろう!」
城は、なおも静まり返ったままだ。でも、だとしたら、あの縛られた人質はどうなるんだ……?
「ぎゃあああああぁあぁあぁぁぁ!」
静寂を引き裂くような、壮絶な悲鳴があたりを震わせた。そのおぞましい悲鳴は、耳から入り込んで、脳を揺さぶるようだった。ウィルは小さく悲鳴を漏らし、ライラは耳をふさいで、ぎゅっと目をつむった。
「あああぁぁぁぁああっ……がっ……」
唐突に、悲鳴はやんだ。その不自然すぎる途切れ方は、安堵よりも恐怖を掻き立てる。
「……見よ!貴様が保身に走ったせいで、この者の未来は閉じられてしまった!なんたる卑怯!腑抜けたものだ!家臣に犠牲を強いる王など、王にあらず!」
なっ……自分たちが殺しておいて、言ってることがむちゃくちゃだ!城壁の上のほうからも、さすがに罵倒の声が聞こえてくる。卑怯なのはどちらだ!人でなし、汚いぞ!
「もう一度言う!王女よ、投降しろ!ひとりだけで、我々のもとへ出てくるのだ!貴様の首一つで、ここにいる全員の命が助かるのだぞ!何を迷うことがある!」
当然、城門が開いて、王女が姿を現すことはなかった。やはり織り込み済みなのか、そいつはかまわず続ける。
「ここに、砂時計がある!この砂が、この者たちの命の残量だ!砂が落ちきるたびに、一人処刑する!一人でも多く救いたいのであれば、お早くすることだ!」
砂時計……ここからじゃ見えない。その砂が落ちきるのにかかる時間はどれくらいだろうか?一時間か、三十分か、十分か……
「っ!あいつらを止めないと!」
俺はかっとなって、思わず駆けだそうとした。だが、フランが俺の肩をぎゅっと押さえつける。
「待って!今言っても、むざむざやられに行くだけだ!」
「でも、早くしないと!」
「だからって、あなたが死んでいいわけないでしょ!敵の数があまりにも多すぎる。考えなしに突っ込んでも、つぶされるのが関の山だよ」
く……フランの言っていることは、正しい。俺たち五人だけじゃ、できることなんてたかが知れている。あの大軍を突破して、捕らわれた人たちを助け出すなんてことは……
「……待てよ。五人だけ……?」
そのとき俺の脳裏に、閃光のような閃きが走った。
「……なあ。もしかしたら、この状況を打開することができるかもしれない」
「え?」
フランが怪訝そうな顔をする。無理もない、俺だって、正直半信半疑だ。うまくいくかの保証なんてないし、実践ありきの出たとこ勝負になるだろう。でも。
「今日俺たちがここに来たのは、人を、命を死なせないためだ。一人でも救える命があるんなら、俺はそいつを見捨てたくない」
俺は不安な気持ちを蹴っ飛ばして、一気に言い切った。その俺の気持ちが伝わったらしい。仲間たちも、覚悟を決めた表情になった。
「して、桜下殿。どのような策をお考えで?」
エラゼムの問いかけに、俺は自分の考えを話して聞かせた。確証はないけど、自信はある。俺たちは作戦を実行に移すべく、水面下で行動を開始したのだった。
つづく
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新年になりまして、物語も佳境です!
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