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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

5章 モンスター図鑑

5章 モンスター図鑑

この図鑑は、ギネンベルナ王室が編纂した、全国に生息するモンスターの特徴、生態、戦う際の注意事項などを記したものである。これを読めば、読者諸君は危険なモンスターに対する最低限の知識を得る事が出来るだろう。ただし、留意しておいてほしい。ここに記されているのは、あくまでも多種多様なモンスターの一側面に過ぎない。諸君が実際に剣を握り、モンスターと相対する際には、必ずしも本に書かれた知識だけが全てでない事を忘れないで頂ければ幸いだ。

●“危険度”について 

そのモンスター一体のみに対して、人間が戦いを挑む場合の脅威の指針。

S……生物の頂点に位置する種族。人間が大軍を成したとしても、討伐は極めて困難。ドラゴン種などが該当。

A……非常に凶暴。人間単体では歯が立たず、屈強な戦士たちによる軍隊の形成が必要。オーガ、ゴーレムなどが該当。

B……危険だが、熟達した知識と技量があれば討伐可能。ただし一人では苦戦を強いられるであろう。ライカンスロープ、トロールなどが該当。

C……単体では弱く、一人前の戦士なら十分応戦可能。だがこのランクのモンスターは群れを成すことが多く、個としての弱さを補っているので注意されたし。オーク、ゴブリンなどが該当。

D……極めて脆弱、もしくは危険性のない生物群。

●モンスター詳細

・ヤタガラス
雀目 三又烏科 危険度Cー
三本足の大型のカラス。
とても知能が高く、集団で高度な戦術を用いて狩りをする。野生の個体にちょっかいを出すと、しつこく追いかけて来て報復をするが、こちらから手を出さない限りは、おとなしい生き物である。
山間部に住む、大鷲ほどの大きさのカラス。鳥類の中でもずば抜けて高い知能を持つ。それを物語るエピソードとして、普段は群れを作らないが、狩りの時だけ他のヤタガラスと即席でグループを組み、効率的に狩りをする姿が目撃されている。その賢さが好まれ、ペットとしても人気の他、伝書鳥としても活躍する。伝書鳩が五回に一回は宛先を間違えるのに対して、訓練したヤタガラスは誤配達をした記録がほとんどないほど優秀。ただし知能が高い分、愚鈍な者を嫌い、優れた者でなければ主人として認めない。故にヤタガラスを飼えるという事は、優秀さを示す証とされ、貴族を中心とした人気に拍車をかけている。

・カッパ
河童目 水受皿科 危険度Bー
水棲のモンスター。頭に皿状の鱗を持つ。
川や池の近くに生息し、近くを通った生物を引きずり込む。陸上での動きは緩慢だが、水中では機敏に動き、撃退は難しい。カッパの生息圏では水辺に近寄らない事だ。
頭に皿を持つ事は共通しているが、それ以外の姿は個体によって大きく異なる。これは、下記のカッパの繁殖法による為である。カッパのメスは交尾後、微粒子レベルの無数の“卵”を水中に放出する。卵は水の流れに乗って漂い、他の水棲生物の体内に取り込まれると、その生物をカッパへと変えてしまう。この時、健康な生物なら入り込んだ卵を排する事ができるが、弱っている個体はこれに抗う事が出来ず、一週間ほどで頭部に皿ができ、さらに二週間ほどで手足が生える、もしくは水掻きが生成され、完全にカッパへと転生する。通常は魚類や爬虫類、両生類がベースとなるが、稀に水辺で溺れた哺乳類が餌食になる事もある。報告例ではサルやカワウソの他、人間の子供のケースも確認されている。
食性は雑食。ウリ科の木の実を好むが、長期間餌にありつけない状態が続くと、動物を襲い、内臓を食べる。

・テュルソス
芹目 焔菊科 危険度D+
黄色い花を咲かせる一年草。
茎に油分を多く含む。発火性が高く、松明などの火を近づけると爆発することがある。
花に薬効があり、血行促進の効果があるが、服用しすぎると鼻血が止まらなくなる。また、山火事の主たる原因とも言われており(落雷による発火)、蔓延り過ぎると大変危険。群生地を見かけた場合は専門の駆除業者に連絡すること。

・オーク
獣人目 豚耳科 危険度C+
豚のような耳に、猪のような牙を持つ獣人。
単体ではそれほど脅威でもないが、常に数匹〜数十匹の群れをなす。洞窟などの閉所では不意打ちにも注意。
大きさは人間の子ども程度の小型の獣人。太陽や炎の明かりを嫌い、洞窟で生活する。夜になると地上に這い出し、野生の獣や近隣の村を襲う。
一匹のメスと複数のオスからなる社会性の群れを形成し、メスはもっぱら巣から出ず、オスが身の回りを管理する。
洞窟を根城にすることから、炭鉱や坑道に住み着くことが多く、炭鉱夫が襲われる事故が後を絶たない。ドワーフやホビットに最も嫌われるモンスターでもある。

・ユニコーン
奇蹄目 一角科 危険度A
螺旋状の角を額に持つ馬。
高度な魔法を操る魔法生物。人語を理解し、無闇に人間を襲う事はないが、邪悪な心を持つ者には容赦しない。
人の感情を読み取る力があるとされる。ペガサスと同じく純真な人間を好むが、あちらほど選り好みは酷くなく、無邪気な子供であれば男女問わず心を開く。
ユニコーンの血には強力な呪いの効果があり、その血を体内に取り込んだ者は必ず悲劇的な最期を遂げる事になる。その代償として長寿と若さを得るが、呪いから逃れる事はどんなに権威のある聖職者でも不可能とされる。打ち捨てられた宮殿に彷徨うアンデッドの正体が、かつて死を恐れるあまり、ユニコーンの血に手を染めた権力者である事は、決して少ない事ではない。読者諸君が森の奥深くでユニコーンに出会した際、さらにそれが死の縁をさ迷うような危機的な状況だった際、諸君の心が僅かでも誘惑に駆られぬ様、ここに忠告するばかりである。
ユニコーンの呪いを受けて、最期までヒトでいられた者は一人もいないのだから。

・ファーヴニール
逆鱗目 毒蛇竜科 危険度S
ドラゴンの一種。手足がなく、翼は体にぴたりと張り付くように折り畳まれている。一見すると大蛇のようにも見えるが、紛れもないドラゴンの一尾。
猛毒のトキシックブレスを吐く。この毒は純銀製の鎧でなければ防ぐ事は出来ない。かつてこの竜が生息していた山は全ての土壌が毒で汚染され、魔の山と化してしまった。
洞窟や深い渓谷の奥地などの暗部にレア(巣)を作る。財宝に固執し、高価な品々を貯蔵する習性がある。
血中と骨髄にもブレスと同じ毒素(ただし非常に薄い)が含まれており、これを取り込んだ生物はファーヴニールの傀儡となってしまう。この毒は未解明の部分が多いものの、どうやら中毒性が極めて高いらしく、高濃度のものは急性中毒によって即死し、低濃度のものは慢性中毒によって竜に操られてしまうようだ。ファーヴニールのレアはこの毒によって操られた奴隷たちが、死ぬまで財宝の管理をさせられているとの噂である。

・ヒンキーパンク
死霊目 火玉科 危険度C–
鬼火の一種。主に墓場に出没する。
これといって悪さをするわけではないが、本種に気を取られた隙に起こる事故が多発しており、中には本種を積極的におとりとするモンスターも確認されている。墓場で本種を見つけたとしても、不用意に近づかないこと。
儚い青色の火の玉のような見た目をしている。墓地や生き埋め事故の現場など、死者が埋まる土地の上に現れることが多い。その正体は死者の残留思念が変容した存在であり、近づくとその無念の想いを聞くことができるが、大抵は支離滅裂で生きている我々には理解不能である。それ以外に害はないが、死者の眠る地に現れるという特徴ゆえか、ヒンキーパンクの光には生者を誘う働きがあるようだ。明かりに意識を裂くあまり、足元の谷川に気づかなかったり、待ち伏せしていたモンスターに襲われる事故が後を絶たない。他の要因が合わさって初めて危険となるモンスターと言えるだろう。

・アイアンゴーレム
可動無機物目 巨像科 鋼鉄巨像亜科 危険度A
ゴーレムの亜種であり、その中でも体が鉄や銀などの金属質の鉱物を中心に作成されたものを指す。
通常土や岩石などで体が構成されるゴーレムと違い、頑強な金属でできているのが最大の特徴。その堅牢な体には生半可な武器では傷一つ与えられず、高火力の魔術程度しか有効打がないという恐ろしい魔物。真っ向勝負ではほぼ勝ち目はないが、幸いにして旅先で出会すことは滅多にない。なぜなら金属は通常の岩石より魔術による扱いがはるかに難しく、このモンスターを召喚できる魔術師はそうそういないからだ。逆にもしも出会してしまった場合は、近くにそれほどの腕を持った(そして恐らく敵対的な)魔術師がいるということなので、どちらにしても助かる見込みは薄い。
どうしても戦わなければならない時には、金属製が故に風化魔法が一定の効力を発揮するので、試してみるのもいいだろう。

・ヴァンパイア
死霊目 吸血鬼科 危険度A
吸血鬼。人の変容するモンスターの中では最も高貴とされ、アンデッドの王とも呼ばれる。
不死性に加え、様々な特殊能力を持つ。この能力は個体によってばらつきが激しく、決まった対処法が存在しない。最も効果的なのは聖職者によるターニング(浄化)であり、剣士の諸君がヴァンパイアに遭遇した際には、命をかけてでもプリーストを守ることになるだろう。
主に人間を襲い、血を吸い殺す。個体数は少ないものの、その凶悪な能力ゆえに討伐は極めて困難であり、地域によっては生贄を差し出す事で、ヴァンパイアとの共存を図っている町もある。一部では神格化されて信仰の対象にまでされており、それはモンスターの割には理性的で、話せば応じるヴァンパイアが多いことも理由の一つであろう。各国がヴァンパイア根絶に向けて討伐軍を指揮しているが、未だに絶滅には至っていない。
ヴァンパイアに血を吸われた者は、後にアンデッドモンスターとして復活することが多い。逆にヴァンパイアの牙から血を流し込まれると、その人間は新たなヴァンパイアになってしまうと言われている。

・リッチ
死霊目 冥府魔導科 危険度A
魔術師が邪悪な魔術を用いて、自らの魂を体外へと摘出した姿。命の根源が安全な限り、肉体的な死を迎える事はない。
リッチになるには非常に高度な魔術を行使する必要があり、それを行えるということは強い力を持つ魔術師であると同時に、多くの場合において倫理観が崩壊している可能性が高い。遭遇すれば危険な事は言うまでもないが、幸運にも取り出した魂を見つけて破壊する事ができれば、リッチを滅する事ができる。
アンデッドモンスターの中でも、ヴァンパイアと並んで特に危険とされる。同時にモンスターと判断する事が難しく、本種をアンデッドと分類する事は間違いだとする学説があるほどである。理由はリッチとなる条件にあり、魂を取り出す前後に外見的にも内面的にも変化が無いからだ。高名な魔術師はどこかしら精神面で不安定であり、リッチになったから狂ったのか、もともと狂っているのかが判別できず、逆にリッチになってからも最低限の理性を保っていた個体がいた記録もある。本種を人間とみなすか、モンスターと見做すかは長年論争の種になっている。

・プレータ
死霊目 餓鬼科 危険度C−
人型のアンデッド。腹部が異様に膨張している。
常に飢餓に苛まれており、その影響で非常に攻撃的だが、力はほどんど無いので、落ち着いて対処すれば問題無い。食べ物に敏感に反応するので、戦いたくなければそれらでやり過ごすことも可能。
かつて強い呪いを受けた人間がアンデッドとして復活した姿。飢餓の呪いをかけられており、常に飢えているが、アンデッドなので飢えが満たされる事はなく、食べ物は舌の上で灰に変わる。一説ではユニコーンの血を飲んだ人間が辿る末路だとも言われているが、詳細な発生理由は未だ究明されていない。

・ケンタウロス
獣人目 半人半馬科 危険度B+
上半身が人間、下半身が馬の姿の獣人。
気性が荒く、下半身を使った攻撃は強力。弓の扱いにも精通し、疾走しながらでも正確にこちらを射抜いてくる。雷を恐れるため、雨の日は遭遇する事は滅多にない。
獣人の中では人に近い部類で、対話が可能。ただし倫理観は我々とズレがあるのか、完璧な意思疎通は困難を極める。森の奥深くに生息しているが、決まった拠点を持たず、常に各地を移動し続けている。住処の森を隅から隅まで渡り歩くと、次の森を求めて大移動を行う。この時のみ森を出て荒野などにも出没し、滅多にはないが街道沿いにも現れる事がある。この時のケンタウロスは非常に神経質で気が立っているため、うかつに近付くと痛い目を見るだろう。

・マイコニド
人茸目 毒人茸科 危険度C
巨大な動くキノコ。手足が生えていて、人のように歩く。
動きは緩慢だが、カサの内側に毒性の胞子を隠し持つ。危険を察知するとこの胞子をばら撒くため、不用意に近付くと危険。遠くから火を放てば安全に処理する事ができる。
森の中の、特に陽のあたらないじめじめした場所を好む。一箇所に密集している事が多く、群生地ができている事もある。胞子の毒は個体によって異なり、幻覚、麻痺、中毒など様々。カサを乾燥させた粉末は特定の動物が嫌う匂いに変化する性質があり、旅人が使うモンスター避けとして重宝されている。

●既存のモンスター

・ゾンビ
死霊目 屍人科 危険度C
もっとも一般的なアンデッド(生きていない)モンスター。元が人間で、かつ完全には腐敗していないものが該当する。
人間だった頃の能力と理性をほとんど失ってしまっているため、非常に脆弱。ただし外傷では倒しづらく、攻撃の際は火で燃やすか、銀製もしくは聖水で清めた武器が有効。
アンデッドモンスターとは、死後誰からも弔いをされなかった死者が変容した存在である。生前の記憶に基づき、所縁ある地に巣食ったり、普段と同じ行動を取ろうとする。この時、生前の執着や後悔の念が強いほど、強力なアンデッドになりやすいという報告がある。ゾンビはベースが人間ということもあって、もっとも遭遇機会が多いアンデッドと言えるだろう。墓地が整備された市街地ならともかく、旅先で野ざらしの故人を見つけた場合は、ゾンビになる前にきちんと弔いすべし。
ちなみに、鳥や獣のゾンビの報告例はほとんどない。死者へ祈る習慣が獣には見られないことから、ゾンビ化には“後悔の念”が重要なのではないかとする説が挙げられている。

・ゴースト
死霊目 人魂科 危険度C
霊魂タイプのアンデッドの内、人間の思念が霊体化したもの。
レイスと違い明確な自我を持つ為、悪意を持って人間に害をなす個体もいる。実体はないため害は出にくいが、体に憑依されたり、呪いを受け続けたりすると命に関わる場合もある。対処する場合、死霊術に長けた者、あるいは動物はゴーストの姿を視認出来るが、普通の人間にはその姿は見えないため注意。呪いを発する際に邪悪な気を放つ為、そうなれば聖職者でも気配を察知、ターニングする事ができる。
人間の魂が変質したモンスター。自然死では発生しにくく、事故など突然の死によって生まれる事が多い。多くのゴーストは死を受け入れる事で成仏するが、稀に生前の執着が強い場合は、この世に留まり続けて無念を果たそうとする。しかし霊魂タイプのアンデッドの行き着く果てがレイスであるように、いずれ自我を失い、呪いを振り撒くだけの怨霊と化す。そうなる前に神殿に連絡し、荒ぶる魂を宥めてもらうのが得策だろう。また極めて稀に、自我を保ち続けてより上位のアンデッドに変質する場合がある。いずれもゴーストより対処が困難なので、そうなる前の浄化を心がけるべし。

・メイルレイス
死霊目 魂魄科 亡騎士亜科 危険度C
レイスが戦死者の鎧などに憑依した姿。
実体を持たないレイスと違い、剣などで武装している事が多い。中身は所詮レイスなので、慌てず落ち着いて対処されたし。
レイスは本来実体を持たないアンデッドであるが、稀に強い死の気配を帯びた物品に憑依する事がある。メイルレイスは、その中でも鎧や甲冑など、人型の武装に取り憑いた個体である。中身は入っていようがいまいが気にしないようだが、中身入りだとゾンビと見分けが付かず、紛らわしい。得物を持つことから通常のレイスよりは注意が必要だが、剣の技量などは到底再現出来ないので、そこまで脅威ではない。むしろ恐ろしいのは、戦死者の鎧が動き出す事で、あたかも死者が蘇ったように見える事である。ゾンビ同様、生前の姿を保ったまま動かれることは、我々生者に多大なる恐怖をもたらす。このモンスターに遭遇した際には、まず相手がモンスターであることをしっかりと認識することを心がけたい。

・グール
鬼人目 屍食鬼科 危険度C
屍食鬼。主に人間の屍肉を食う小鬼。
性格は臆病であり、人の前には滅多に姿を現さない。ただし、うっかり遭遇してしまうと、鋭い牙と爪で襲いかかってくるので注意。
夜中墓場に現れ、墓を掘り起こして死者の肉や骨を食べる厄介者。動物の屍肉なら何でも食べるが、特に人間のものを好む。その性質からよくアンデッドモンスターと誤解されるが、れっきとした生物であり、アンデッドではない。卵生であり、孵化したての個体は体色を自在に変える能力を持つ。その擬態能力の高さから、グールの幼体の捕獲例は未だかつて存在しない。だが唯一、浅葱色には体色を変えられないとされ、ネギがグール避けとして墓地の周りに植えられる事がある。

・ドラゴン
逆鱗目 危険度S
爬虫類のような鱗、強靭な四肢、皮膜の翼を持つ最強のモンスターの総称。体の何処かに一枚だけ、向きが逆さの鱗が生えている。
あらゆる環境に適応し、普通の生物が生息できない極圏や深海でも活動可能と言われている。その分類は多岐にわたり、種によって性質は大きく異なる。一貫しているのは、いずれも非常に凶暴であることと、比類なき知恵を持っていることである。個体数は非常に少ないが、もしも暴れたならば一国が滅びかねないほど危険な存在。

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