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じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

6-2

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兵士たちが一斉に剣を抜いた。門に並んでいた人たちからどよめきと悲鳴があがる。エラゼムは素早く背中の盾剣を外すと、大声で叫んだ。

「桜下殿、しんがりは吾輩が!駆けてくだされっ!」

「おう、まかせたっ!」

うおおお、走れーー!俺たちは一目散に門へ向かって走り出した。

「くそー!なんでこうなるんだ!」

「いいから、足止めないでよ!わたしが道を開く!」

フランが爪を抜くと、先頭に躍り出た。恐ろしい鉤爪を持った少女が向かってくるのを見て、門の前にいた人たちは悲鳴を上げてちりぢりになった。よし、これで残りは衛兵だけだ。

「やりすぎるなよ!」

「努力する!」

フランの突破力なら強引にでも門を抜けられる……はずだ。ていうか、もうそれしか道がない!結局強行突破じゃないかって?けっ、作戦なんて、くそくらえだ!

「逃がさぬ!そうやすやすと突破はさせぬぞ!」

怒声に振り向くと、あのリーダー兵士が一枚の巻物を取り出し、それの端っこを口にくわえていた。なんだ、ヤギの真似事か?と思った次の瞬間、兵士は巻物の端を握って、ビリリっと引き裂いてしまった。パアァー!

「うわっ」

兵士が破った巻物から、真っ赤な火の玉がピューンと打ちあがった。火の玉は空高く飛んでいくと、パーンと騒々しくはじけ飛んだ。後には赤い煙が、まるで目印のようにふわふわ浮かんでいる……

「まさか、信号弾か!?」

あれが勇者の居場所を教えるシグナルだとしたら、町中から兵士が集まってくるぞ。そして案の定、目の前の関所からは槍を構えた兵士たちがぞくぞくと飛び出してきた。

「け!それがどうした!援軍が来る前に蹴散らしちまえばいいだけだろ!」

門の前に立ちふさがる兵士はせいぜい十数人。それだけの数で、フランが止められるはずない。

「どけっ!」

フランは鉤爪を振りぬいて兵士たちに突っ込んでいく。と、そのときウィルが鋭く叫んだ。

「桜下さん!あれ!弓矢を持ってます!」

「なに……!」

槍を構えた兵士の後ろに、大きな弓矢を構えた弓兵が立ち並んでいる。あいつら、接近戦じゃ敵わないから、飛び道具で攻撃するつもりなんだ!

「フラン、気を付けろ!そいつら弓矢を……」

『……!主様!気を付けるのはあなたの方です!』

え?それってどういう……
ピュンピュンピュン!うわ、矢を撃ってきた!けど、矢じりはフランを狙っていない。狙われているのは、俺だ!

「っ!」

フランが強引に体をねじり、爪で矢を弾き飛ばす。だが捌き損ねた矢の一本が、俺に向かって真っすぐ飛んできた。やばい!

「南無三!」

俺はとっさに剣を引き抜き、やみくもに振り回した。剣は奇跡的に矢じりを弾き、矢はおかしな方向に飛んで行った。あ、危なかった。アニが警告してくれなければ、絶対反応できなかっただろう。

「こいつら……!」

フランは兵士に襲い掛かろうとしたが、再び弓を構えた姿を見て、ぐっと押しとどまった。兵士たちの目は、どう見てもフランではなく、俺を射抜こうとしている。

「ちぃ!」

フランは踵を返すと、俺のそばまで戻ってきた。俺が狙われているんじゃ、フランは自由に動き回れない。くそ、俺たちの足は完全に止まってしまった。そこに追いついたエラゼムが合流する。

「どうされたか、桜下殿!」

「厄介なことになった。どうにも、俺が狙われているみたいなんだ!」

「なんですと?」

「くそ、どうなってんだ!」

すると服の下から、アニが鋭くリンと鳴った。

『連中は、主様に特化した戦法を仕掛けてきています!主様の能力のことが、敵にも知れ渡っているんですよ!』

なに?俺の能力に特化しただって?動きの止まった俺たちは、あっという間に兵士たちに取り囲まれてしまった。フランとエラゼムが鋭く牽制しているので、一定以上は近づいてこないが……

「ちくしょう、大ピンチじゃないか……!」

「ふっははははは!とうとう追い詰めたぞ、この極悪勇者め!」

取り囲まれた俺たちを見て、兵士の一人が勝ち誇ったように笑った。立派な鎧を着た、あの見覚えあるリーダー兵士だ。

「私たちを見くびるなよ!貴様の能力はすでに対策済みだ!」

「なんだと?どういう意味だ!」

「ふはは。貴様の醜悪なネクロマンスは、邪悪がゆえに確かに強力だ。なにせ死を恐れぬ不死身の軍団を生み出せる能力だからな。まともに相手をしていたのでは、暖かな血の通った我らは苦戦を強いられるのも必至。が!それは屍に限った話だ!」

リーダー兵士はビシィ!と俺を指さした。

「死霊の傀儡を操る貴様!術者本人は、ただの人間に過ぎないということを!我々が見逃しているとでも思ったのか!」

む。その通り、それが俺の能力の弱点だ。フランと出会ったモンロービル村では、そこを突かれて危なくなったこともあった。

「死霊を少しでも自分から離してみろ。その瞬間、貴様自身を射抜いてやる!」

ち、今も弓矢で狙われているってことか。俺は視線を滑らせて、周囲の弓兵を探してみた。槍を構えた歩兵の後ろにはいない。なら、上か?思った通り、周囲の建物の屋根の上に、相当の数の弓兵がいた。伏兵だ。ちっ、あらかじめ兵を隠して忍ばせていたんだ。やられた、てっきり門だけだと思っていたな。

「……へー、そうかい。けど、忘れてやいないか?アンタたちは一度、俺を取り逃してるんだぜ?またあんた達をぶっ飛ばして、俺が逃げ出すことも考慮に入れるべきだ」

「なにぃ……?」

「ちょ、桜下さん!?」

不敵にわらった俺を見て、ウィルがすっとんきょうな声を上げる。リーダー兵士は、怒りに顔をゆがませた。

「貴様、我らを馬鹿にするか!そんなことが可能か、その身で確かめるがい、い!?」

い?リーダー兵士の声が急に裏返った。あれ、挑発に乗ってくれたと思ったのに。

「な、なにをするヘイズ!」

ヘイズと呼ばれた切れ目の兵士が、リーダー兵士の肩をつかんで後ろに引っ張っていた。

「エドガー隊長、そんな安い挑発に乗らないでください。奴の思うつぼですよ」

「な、なにぃ?」

「考えてもみてください。オレたちがここで突っ込む意味はないでしょ」

「むっ……た、確かにそうだな。危ないところだった」

リーダー兵士はうむ、とうなずくと、改めてこちらに向き直った。こいつの名前はエドガーっていうのか?

「ふははは、その手には乗らんぞ。私たちはお前を釘づけにしているだけでよいのだ。そのうちに全兵士がここに集まり、お前は逃げたくても逃げられなくなるのだからな」

く……バレたか。ここで勇み足になって突っ込んできてくれれば、返り討ちにできたのにな。混戦状態では矢も撃ち込めないだろうし

(けど、結構ヤバイな状況だな)

今は相手の数はそこそこだが、大軍と合流されてしまうとそうもいかなくなる。いくら百人力のフランとエラゼムだって、千に囲まれたらどうしようもないだろう。相手が千人もいるのかはわからないけど……

(あの切れ目のヤロウ、厄介だな。アイツがいなきゃ、うまくいってたのに……)

しかし、ぼやいてもしょうがない。仲間と合流される前に、この場を切り抜けなくては。



つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

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