現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~
手合わせ
たわわこと、ギルドのエース・マリエルさん。
成り行きとはいえ、手合わせする運びになってしまったやまださん。
どうにかこれを回避できないものかと、無い頭で考えてみるが。如何せんポンコツ仕様となっている為か、この短時間では良い方法が見つからない。
そんなこんなしている内に、
「急な呼び立てに応じてくれて感謝する、私はマリエル・ホワイトシープだ。宜しく頼む」
などと、挨拶されては、
「これはご丁寧に、私はヤマダ・タケシです。よろしくお願いします」
と、返すしかなかった。
「さて、お互い挨拶も済んだようだし、始めてもかまわないか?」
「ああ、かまわない」
「……はぁ、はい」
もうこれは完全に引き返せない雰囲気。
仕方ない、怪我だけはしないようにがんばろう。
渡されたのは、木剣が一つ。
それを持って、修練場の中心でお互いに構え合う。
なぜか、周囲には野次馬が集まっていてちょっとしたアウェー感。
そもそも、当然のように木剣をわたされたけれども。
やまださんが魔法使いとかソッチ系の人だったら、どうするつもりだったのだろうか。
なんて、思わなくもない。
しかし、渡された木剣を素直に構えてしまった以上今更だろう。
それに未だ、つなぎにバイク用プロテクターを愛用している自身の姿を鑑みるに、魔法使いにはとてもではないが見えそうもない。
どちらかといえば、現場作業員。そちらのほうが余程しっくりくる。
今まであまり気にはしていなかったが。
ちょっとは、服装に気を使ったほうがいいのだろうか。
異世界であっても、TPOって大事じゃんね。
「ではっ、参る!」
おっと、もう始まってしまった予感。
たわわさんの体が、残像を帯びたかのようにブレる。
そして、気がついたときには、もうすぐそばまで迫っていた。
なにこれ想像以上に速いぞ、このたわわさん。
慌ててその動きに意識を集中させる。
すると、速かった動きも途端にスローモーションに早変わり。
だからか、その動きも容易に捉えることができた。
振り上げられた木剣、弾むたわわ。
振り下ろされるであろう着地点を、やや避けてみせる。
この紙一重感、最高にカッコいい。
木剣は予想通りのルートで地面に叩きつけられる。
切っ先が地面を抉り、砂埃を巻き上げた。
周囲を取り囲む野次馬から、ワッと歓声があがる。
「くっ、全力の一撃を避けられるは。ならばっ、これでどうだっ」
次に放たれたのは、横からの薙ぎ払い。
それを後方に飛んで避ける。
やはり、ここも紙一重。ちょっと、クセになってしまいそう。
たわわさんのピンと、伸びきった右腕。
ここチャンスと睨んだやまださんは、一足距離を詰める。
左下からの切り上げ。残影が歪むほどの速度で振られた木剣が生みだす風圧は、たわわさんの顔を舐めた。
そして、切っ先はわずか1センチで急停止。
アニメやラノベであれば、これで勝負ありである。
見てきた物はそうだった、だからこの世界でも、きっとそう。
……大丈夫だよね?
「これで満足していただけましたか?」
ドヤ顔で言ってみたものの、ダメだったらどうしよう。
恥ずかしさ満載だ。
ややあって、
「……ああ、完敗だ。まさか、ここまで実力差があるとは思ってもいなかった」
たわわさんが負けを宣言したことで、野次馬からさらに大きな歓声があがった。
ところ変わって、ギルド会館の一室。
その執務室と呼ばれた部屋が、やまださん一行に与えられた現住所。
執務机の前に置かれた一対のソファー。
中心にやまださん、左はローズ、右はクレアさんこんな塩梅だ。
向かってたわわさんと、その他一名。
ゆらゆらと湯気を立てたお茶を前にして、その他一名が開口一番、
「すまなかったっ! お前さんを試すような真似をして」
と、額をテーブルにをつけんばかりの勢いで頭を下げて見せた。
当初、頭突きでもするのかと心配になったほどだ。
「私からも謝らせてくれ。マスターに無理を言って、あの場を作ってもらったのだから」
続いて、たわわさん。
「いえ、謝罪には及びません。こちらも良い経験をさせて頂きましたので」
「そうか、そう言って貰えて助かる」
などと、たわわさんとの会話を楽しんでいたところ、
横にいたローズさんがやまださんの肩を、人差し指でチョイチョイと。
「……なにか、いつもと対応が違うわね」
そんなまさか、顔に出してまったのだろうか。
おそるべし、たわわ。
「いつも通りですよ、ローズさん」
「ふーん、ならいいのだけれど」
ややって、
「コホン、謝罪ついでとは何だが、もうひとつ言わせてくれ」
と、ギルドマスターさん。
少しばかり、居心地がわるそうに口を開いた。
「ギルド会館占拠の件について、解決してくれた事をマスターとして感謝する」
ああ、ハゲマッチョのやつね。
完全に忘れかけていたわ。
「その礼として、このゴールドクラスの冒険者証を受け取ってほしい」
成り行きとはいえ、手合わせする運びになってしまったやまださん。
どうにかこれを回避できないものかと、無い頭で考えてみるが。如何せんポンコツ仕様となっている為か、この短時間では良い方法が見つからない。
そんなこんなしている内に、
「急な呼び立てに応じてくれて感謝する、私はマリエル・ホワイトシープだ。宜しく頼む」
などと、挨拶されては、
「これはご丁寧に、私はヤマダ・タケシです。よろしくお願いします」
と、返すしかなかった。
「さて、お互い挨拶も済んだようだし、始めてもかまわないか?」
「ああ、かまわない」
「……はぁ、はい」
もうこれは完全に引き返せない雰囲気。
仕方ない、怪我だけはしないようにがんばろう。
渡されたのは、木剣が一つ。
それを持って、修練場の中心でお互いに構え合う。
なぜか、周囲には野次馬が集まっていてちょっとしたアウェー感。
そもそも、当然のように木剣をわたされたけれども。
やまださんが魔法使いとかソッチ系の人だったら、どうするつもりだったのだろうか。
なんて、思わなくもない。
しかし、渡された木剣を素直に構えてしまった以上今更だろう。
それに未だ、つなぎにバイク用プロテクターを愛用している自身の姿を鑑みるに、魔法使いにはとてもではないが見えそうもない。
どちらかといえば、現場作業員。そちらのほうが余程しっくりくる。
今まであまり気にはしていなかったが。
ちょっとは、服装に気を使ったほうがいいのだろうか。
異世界であっても、TPOって大事じゃんね。
「ではっ、参る!」
おっと、もう始まってしまった予感。
たわわさんの体が、残像を帯びたかのようにブレる。
そして、気がついたときには、もうすぐそばまで迫っていた。
なにこれ想像以上に速いぞ、このたわわさん。
慌ててその動きに意識を集中させる。
すると、速かった動きも途端にスローモーションに早変わり。
だからか、その動きも容易に捉えることができた。
振り上げられた木剣、弾むたわわ。
振り下ろされるであろう着地点を、やや避けてみせる。
この紙一重感、最高にカッコいい。
木剣は予想通りのルートで地面に叩きつけられる。
切っ先が地面を抉り、砂埃を巻き上げた。
周囲を取り囲む野次馬から、ワッと歓声があがる。
「くっ、全力の一撃を避けられるは。ならばっ、これでどうだっ」
次に放たれたのは、横からの薙ぎ払い。
それを後方に飛んで避ける。
やはり、ここも紙一重。ちょっと、クセになってしまいそう。
たわわさんのピンと、伸びきった右腕。
ここチャンスと睨んだやまださんは、一足距離を詰める。
左下からの切り上げ。残影が歪むほどの速度で振られた木剣が生みだす風圧は、たわわさんの顔を舐めた。
そして、切っ先はわずか1センチで急停止。
アニメやラノベであれば、これで勝負ありである。
見てきた物はそうだった、だからこの世界でも、きっとそう。
……大丈夫だよね?
「これで満足していただけましたか?」
ドヤ顔で言ってみたものの、ダメだったらどうしよう。
恥ずかしさ満載だ。
ややあって、
「……ああ、完敗だ。まさか、ここまで実力差があるとは思ってもいなかった」
たわわさんが負けを宣言したことで、野次馬からさらに大きな歓声があがった。
ところ変わって、ギルド会館の一室。
その執務室と呼ばれた部屋が、やまださん一行に与えられた現住所。
執務机の前に置かれた一対のソファー。
中心にやまださん、左はローズ、右はクレアさんこんな塩梅だ。
向かってたわわさんと、その他一名。
ゆらゆらと湯気を立てたお茶を前にして、その他一名が開口一番、
「すまなかったっ! お前さんを試すような真似をして」
と、額をテーブルにをつけんばかりの勢いで頭を下げて見せた。
当初、頭突きでもするのかと心配になったほどだ。
「私からも謝らせてくれ。マスターに無理を言って、あの場を作ってもらったのだから」
続いて、たわわさん。
「いえ、謝罪には及びません。こちらも良い経験をさせて頂きましたので」
「そうか、そう言って貰えて助かる」
などと、たわわさんとの会話を楽しんでいたところ、
横にいたローズさんがやまださんの肩を、人差し指でチョイチョイと。
「……なにか、いつもと対応が違うわね」
そんなまさか、顔に出してまったのだろうか。
おそるべし、たわわ。
「いつも通りですよ、ローズさん」
「ふーん、ならいいのだけれど」
ややって、
「コホン、謝罪ついでとは何だが、もうひとつ言わせてくれ」
と、ギルドマスターさん。
少しばかり、居心地がわるそうに口を開いた。
「ギルド会館占拠の件について、解決してくれた事をマスターとして感謝する」
ああ、ハゲマッチョのやつね。
完全に忘れかけていたわ。
「その礼として、このゴールドクラスの冒険者証を受け取ってほしい」
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