現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~
ギルドマスター
やだ、この凶悪な笑顔を浮かべている人ギルドマスターだってさ。
絶対に傭兵の方が似合っているって。
「……パードゥン?」
「ぱっ、ぱーどん?」
「いえ、何でもないです。忘れてください」
「おう、そうか……」
「それでギルドマスターさんが、私に何か御用ですか?」
そう言うと、傭兵こと、ギルドマスターの歯列が太陽の陽を受けてキラリ。
やまださんに熱い視線を向ける目は、愉快なものを見たとばかりに細くなった。
もしかして、ソッチの気があるのだろうか。
いや、それはちょっと困る。
女性方面ですら新品未開封の自分としては、余りにも未知の世界だと思うの。
「驚いた。これだけ肩を掴む手に、力を入れているのに、顔色ひとつ変えないとはな……」
確かにしっかりと肩を掴まれてはいるけど。
それはどちらかというと、肩を揉んでいる時のような心地良い感じだ。
だから、傭兵さんが言っていることが、いまいちピンとこない。
「はっははは、さすがは超大型ルーキーだ! さぁ、いこうか」
パンッと一度、背を叩き腕を肩にまわす傭兵さん。
これはもう、完全にマブダチの雰囲気。
ウェーイですか、ウェーイしちゃうんですか。
しかし、流されるまま行った先にめんどくさいことが、待ち受けているのは目に見えている。
ここはひとつ、ノーと言える日本人にならなくては。
「すみません。この都市に帰ってきたばかりで、まだ済まさなくてはいけない用事が残っていて……」
「ああ、わかっている。なぜなら、帰ってくるまでずっと張っていたのだからなっ」
まじかよ、完全にロックオンされているわ。
一体、どこで身バレてしまったのだろうか。
ダンジョンを踏破した時点で、『レコード』と呼ばれている石碑にその名前が刻まれるのらしいので、その辺りは仕方ないとしても。
この迷宮都市に、やまださんの名前と顔を一致させることの出来る知人など、片手で数えるほどだ。
などと、考えていたら。
「に、にゃーは干物なんかに負けてないにゃーっ……」
半分だけ開いたドアから顔だけ覗かせて、震える声をあげるエルザさん。
どうしよう。この子、アホな子かもしれない。
犯人が判明したことで、一気に脱力感が襲う。
もういいや、素直について行ってさっさと済ませてしまおう。
と、思ってしまうほどに毒気が抜かれてしまった。
「ま、そういうことだ。なぁーに、ギルドマスターと懇意にして損はあるまいよ」
「ま、待ってっ! 私達も行くわ!」
という事になった。
半ば連行される形で歩くこと、十数分。
どうやら目的地はギルド会館であったらしく、現在その前に立っている。
大通りに面した木造二階建て、それがこの迷宮都市のギルド会館だ。
その扉を傭兵さんこと、ギルドマスターが両手で勢いよく開くと.
観音開きの扉が、ギイィと木を軋ませた。
昼間だというのに、ギルド会館の中には想像よりも多くの人間がいる。
格好を見れば冒険者なのだろうが。
こんな昼間からギルドで、ウロウロしていていいのかと思わなくもない。
といっても、昼間からウロウロしているやまださんが、言えた義理ではないのだけれど。
「バカどもが噂を聞きつけて、集まってやがる」
さすがギルドマスター、こんな強面の方々をバカ呼ばわりである。
ちょっと、やまださんは真似出来そうにない。
レベル的には上なのかもしれないけれど、そういう問題ではなく精神的に宜しくないのだ。
「……噂ですか、それは一体どんな噂ですか?」
「ああっ? お前さんのことだよ」
ギルドマスター曰く、噂の渦中はやまださんらしい。
どうしよう、一気に有名人の予感。
サインの書き方とか、練習したほうがいいのだろうか。
いや、待て。良い噂ばかりとは限らない、もし、悪い噂だったらどうしよう。
そう考えると、ギルド内に皆様方の視線が痛い。
ちょっと、胃がキリキリする。
ここはひとつ、フリーター生活で培った営業スマイルでやり過ごすしかないな。
「……ほう。これだけの視線を受けて身動ぎしないとはな」
ああ、これね。営業スマイルっていうのですよ。
現代日本人の固有スキルってやつです。
「アレが噂の超大型ルーキーか」 「見てみろよ、これだけの人数に見られてるというのに、えらく堂々としてやがるぜ」 「ばかやろう、あの境界の回廊を踏破せしめた冒険者だ。それぐらいの度胸は持ち合わせているだろうよ」
 「しかし、ここらで見ない顔だな」 「どうにも、遠方の大陸出身らしいぞ」「どうりで顔が平たいはずだ」「んだ、んだ」
などなど、そのどれもが好印象な感じ。
一部、どこで流れたのかわからないもの迄あるけれど。
「ねぇ、貴方。有名人じゃない」
ローズさんが耳元で囁く。
ちょっと語気が荒いのは、自身が冒険者に只ならぬ憧れがあるからだろうか。
「ええ、そのようですね」
だからか、そんなローズさんに言われてちょっとだけ嬉しい。
さて、ギルドマスターの後をついて歩くことしばらく。
向かった先は、ホールを過ぎて別館。修練場と、呼ばれる所らしい。
野外球場を一回り小さくして、木人などを設置すればドンピシャな感じだ。
「実はお前さんに、手合わせをしてほしい相手がいるんだが」
マスターが親指を指した先、一人の人物が見えた。
美しい赤髪をポニーテールに結んだ美人さんだ。
強い意志を秘めた瞳、豊穣の神から祝福を受けたとしか思えないたわわをお持ちである。
思わず二度見を決めてしまうほどの、実りに実った、たわわだった。
「もしかして、銀狼のリーダー、じゃないかしら?」
「有名な方なんですか、ローズさん」
「ええ、実物ははじめて見るけれど、間違いないと思うわ。彼女、この都市ではトップクラスの実力者じゃないかしら」
「たわっ……、それは凄い方なんですね」
思わず、たわわと言いそうになるのを寸でのところで堪える。
危ない、危ない。もう少しで、言ってしまうところだった。
たわわは、ひとまずたわわに置いておいて。
目の前の相手に集中しなくては、情報通のローズさん曰く。
この都市では相当な実力者とのこと、そんな相手に失礼があってはマズいだろう。
ややあって、ギルドマスターが口を開く、
「さて、コイツを紹介しよう。マリエル・ホワイトシープ、ウチのエースだ」
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