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現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~

私は航空券A

一角豚の串焼き

 ベースと呼ばれた広場よりも、さらに開けた空間。


 その上下、左右の四方向から中心へ伸びる通路を歩く。
石畳で造られた通路の両端には美しい彫刻が施されており、それは一つの物語が描かれているようだった。


 美しい女性に恋をした男が、その女性を守るため魔物と戦い、そして死ぬ。
そんな切ない物語。最後は、男の墓の前で恋した女性が涙を流す場面で終わっていた。


 繊細にそれでいて、ダイナミックに彫られた見事な彫刻。
まるで、魅入られたかのように目を離すことはできなかった。


 物語を綴った彫刻が切れた先にある、広場の中心部には二メートルほどの石碑が歴然とした姿でそこに鎮座している。


 陽の光に照らされてキラキラとした光沢のある表面には、象形文字のような物が彫ってあるのが見てとれた。


 が、しかし読むことはできなかった。


 つまりそれは、現在では使われてはいない文字か、極少数のみに使われているものなのだろう。


 公用語のように一般的なものなら、『ビギナー支援パック』で得たスキルで、読むことができる筈だからだ。




「ええっと、これは……」




 ここで声をあげたのは、クレアさん。


 アゴに人差し指を当てて、真剣に文字を見ているご様子。




「ここに、愛した男が……ここに眠る……ですかね」




 マジすか、クレアさん読めちゃうんっすか。
頭の良い女性って、とても魅力的だと思うの。




「私が読めるのはこの部分だけです」




 スキルで言語習得した立場のやまださんとしては尊敬せざるを得ない。


 そう、第二言語といえば、学校で習った英語だ。
しかし、六年間通して得た物はハローサンキュー程度の物。


 ゲームばかりやっていたせいか、使われるスラングだけは得意になったのだけれど。


 あいつら、自分たちが勝っているときはGGグットゲームとか、余裕ぶって言うくせに。
劣勢になった途端に罵ってくるのな、沸点低いわ。


 お里が知れるっていうのだぜ、まったく。




「すごいじゃないっ、クレア」




 ローズさんも同じ感想だったらしく、驚きの声をあげた。




「これは古代メメール文字ですね、前に少しだけ習ったことがあって」




 なるほど。古代メメール文字ね、さっぱりわからない。


 そもそも、ここがどこの国なのかさえ、未だにわかっていないやまださんとしては少しばかりレベルの高いお話だ。


 今更、聞いたところでドン引きされるだろうし。
なにかこう、自然に聞きだせればいいのだけれど。


 やぁ、ごきげんよう。ここは何て名前の国なんだい? みたいなアンニュイ。




「で、ここが目的の場所なのかしら?」




 おっと、いけない。


 このダンジョンへ来た、本来の目的を忘れかけていた。


 ここへ来た理由は、ローズ暗殺での証言を得るため、アリナリーゼさんから受けたお使いクエストを果たすためだ。


 そのお使いの内容とは、『アルカン中央部に届け物をしてほしい』とのこと。


 で、これが納品アイテム。


 迷宮都市にある屋台から買ってすぐに仕舞しまっておいた串焼きだ。
未だ湯気がのぼる姿は、その身に温かい肉汁をたっぷり蓄えており、かぶりつけばきっと滴り落ちることだろう。


 それもこれも、アイテムパックに収納していたおかげである。


 時空魔法が云々うんぬん。仕組みはまったくわからないが、入れたアイテムの時間を止めることが出来るらしい。


 なんて便利なアイテムパックさんだろうか。




 それを石碑の前にある、香炉にも似た台石に置いく。


 ちょっとしたお供え物をしている気分になった。




「これは一角ブタの串焼きかしら?」




「ええ、そうですローズさん。今回ここに来た理由は、これを届けてほしいと頼まれたからです」




「そう、変わった依頼もあったものね」




「はい、本当に変わった依頼ですね」




「まぁ、いいわ。依頼はなんであれ、冒険を楽しめたのだから私は満足よ! ねぇ、クレア?」




「はい、ローズ様。刺激的な経験で、思わず昔の血が騒いでしまいました」




 クレアさんの昔の血ってなんだろう、すごく気になる。


 しかし、勝手についてきたとはいえ、喜んで貰えて何よりだ。
即席パーティーリーダのお役御免といったところだろうか。


 そして、このお使いクエスト。


 受けた当初はなぜ、そんなことを頼んだのかわからなかったが。


 今はちょこっとだけ理解できたような気がする。


 アリナリーゼはこの彫刻された女性に近い人物か、それとも本人なのか。
真相はわからないが、きっとこれは自分の代わりに墓参りしてくれということなのだろう。


 まさに、お使い・・・というわけだ。


 なんて、ちょっぴりセンチメンタルな想像をしてしまうのは、この絵画のような花々のせいに違いない。


 だって、アラサー童貞とセンチメンタルなんて最高に相性がわるいじゃんね。




「さて、無事に依頼は果たせました。迷宮都市へ戻りましょう」




「ええそうね! このダンジョンは、これで終わりなのだけれど。次は一体、どんな冒険に連れていってくれるのかしら? 本当に貴方といると退屈しないわ」




 そう、笑ったローズの笑顔はとても眩しく見えて。


 新しい冒険への期待を否が応にも、掻きたてられる物だった。





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