現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~

私は航空券A

笑顔と土下座

「……ほ、本当にダンジョンの壁を壊してしまったわ」




 ローズが驚きとも、感嘆とも取れる声をあげる。




『 経験値取得にボーナスがつきます。19000ポイントの経験値を獲得しました。 』




『 レベルアップ。スキルポイント15獲得しました。 』




 自分でやっておいてアレなんだけれど。ダンジョンの壁って壊れるんだな。


 そして、経験値貰えちゃうんだなって。


 本当、これタダの壁なのだろうかという疑問さえ湧いてきちゃうわ。
いや、ダメだ。深く考えたら負けのような気さえする。


 本当であれば、壁を壊して最短ルートを行けばいいのだけれど。


 しかし、ごっそりと抜けたMPと疲労感。
これは何度もできるような代物じゃないようだ。




「さすがです、さすが私のご主人様ですっ。まさか、ダンジョンの壁を壊してしまうなんて凄すぎますっ!!」




 いつもよりも、ヨイショ度がお高いクリスティーナさん。
もしかして、先程の救世の御手とかなんとかの一件を気にしているのだろうか。


 ちょっとわかりやすぎる反応が可愛いじゃない。
童貞の心をピンポイントで刺激してくるこの感じ、わるくないですぞクリスティーナさん。


 さてと。先程ダンジョンの壁に開けた穴は、人が三人並んで通れるほどの大きさだ。
俺達はそれをくぐって、向く側の通路へ移動する。


 これで来た道を引き返すこと考えれば、半日以上の節約になったはずだ。




「……ねぇ、アレを見て」




 ローズが声をあげた先。今まさに、くぐったばかりの穴へと振り返る。


 すると、どうだろうか。


 開いた穴の縁が少しづつ土が盛り上がり、穴を塞いでいく。
しばらくすると、盛り上がった土は石材のように固まって、壁の他の部分と見分けがつかないほどに同化していった。


 ついてた傷や年月を感じさせる風化具合も同じなのだから。見ているコッチとしては疑問が残るばかりだ。




「ダンジョンって壊れたら直るものなのですね」




 ダンジョンが直っていく様を見ながら呟くと、




「壊れるなんて話は今まで聞いたことがないから、わからないわ……」




 ローズさんから、もっともなお答えを頂く。


 そりゃそうだ。


 今回は結果オーライだったが、普通に考えればこの巨大な壁に穴を開けようとは思わない。
思ったとしても、今まで見てきた冒険者のレベルであれば難しいのではないだろうか。


 それをやらかした自身がそう考えるのも、どうかと思わなくもないけど。




「き、きっとですね、ご主人様の無意識のパワーというか……ま、魔法が直してしまったのですよ! さすがですっ!!」




 褒めようとしてくれるのは嬉しいけれど、それはちょっと無理があると思うんだ。




「さすがにそれはちょっと……」




 ほら、ローズさんもこう言っているじゃない。




「クリスティーナさんやい」




「なっ、……何でしょうご主人様」




 明らかにキョドキョドとした姿で答えるクリスティーナ。




「もしかして、さっきの清鎖派との一件を気にしている?」




「っ……」




 ビクッと肩を震わせたかと思うと、猫が驚いた時に見せるジュンプ。
まさにそのような感じで飛んでみせるクリスティーナさん。


 空中で足は折り畳まれ、そのまま地面へストンと着地。
その際に両手は綺麗に前で揃えられ、頭は地に着かんばかりに下げられている。


 所謂、ジャンピング土下座というやつだ。




「もっ、も、申し訳ありませんっ!!」




「ど、土下座……!?」




 驚きの余り、思わず口に出てしまった。
後ろからは、ローズとクレアさんの驚きの声が聞こえる。




「はい、以前ご主人様の家で見たてれび・・・なる物でやっていました。これがあちらの世界での最高位の謝罪だと」




 それ、日本限定の話だけどな。


 いや、最近ではHARAKIRI、GEISHAと並んでDOGEZAとして海外にも伝わってるとも聞く。
だからと云って、外国人が謝罪でDOGEZAをするわけじゃないが。


 しかし、クリスティーナほどの美少女が土下座して見せる姿は破壊力が高い。
否応なしに罪悪感を抱いてしまうのは聖女様の持つオーラせいか、はたまた自身の小心さだろうか。


 それにこんな姿を清鎖派の連中に見られでもしたら、きっと教会の敵として問答無用で襲い掛かられる気がするわ。




「おうふ……わ、わかった! とりあえず土下座はいいから顔をあげてくれ」




「いいえ、そういう訳にはいきませんっ! 聖女の義務とはいえ、勝手にご主人様を『救世の御手』と宣言してしまったのですから……」




 確かにクリスティーナが言う通り、教会側である清鎖派に宣言した以上、遅かれ早かれ教会全体に伝わることは間違いないだろう。
それがどのような結果になるかはわからないが、聖女についた錆や聖女をさらったなどと因縁をつけられ、敵対するよりかは幾分かはマシなはずだ。


 それにあの状況では何かしら言い訳も必要だったはずだし、一概にクリスティーナ一人を責める訳にはいかない。


 まぁ、後ほど間違いだったと訂正でもすればきっと問題ないだろ。




「状況がアレなわけだし、その場をやり過ごす為に言ったのはわかっているからさ」




「……えっ?」




「え?」




 おう、どしたことか。やまださんが、可笑しな事を言ってしまったような空気が流れる。


 え、もしかして……もしかすると本気マジだったの?


 いや、まだだ。ちゃんと確認するまではわからない。




「ええっと、俺が本当にそのナントカのおてて……?」




「はいっ!」




 HAHAHA……やだもう、クリスティーナさんの笑顔がまぶしい。


 チョイチョイと肩を叩かれた感触に振り返ればローズさん。




「私も王女の名をもって宣言したのだから、もう逃げれないわよ?」





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