現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~
聖女3
もう付き合ってらんねーわ。
やまださんは逃げるぞ。
こんな修羅場からは、とっと逃げてやるんだから。
といってもさすがに、パーティーメンバーを置いて一人で走りだす訳にはいかない。
さらに目の前には剣を抜いたイケメンどもが。それも、その切っ先は俺に向けている。
さすがに大蛇のお腹から出てきた彼は、剣を抜いてはいないようだけど。
しかし、この障害物を何とかしなければ、上手いこと抜け出せないのではないだろうか。
ここはひとつ、信頼のアイコンタクトでタイミングを合わせてヨーイ、ドンするしかないだろ。
(クリスティーナ、クリスティーナ……)
やまださんのつぶらな瞳を、ぐわんぐわんと動かせてアイコンタクトを送る。
おっ、気づいたようだ。
 クリスティーナは、俺のアイコンタクトに真剣な表情で頷きを返す。
続いて、ローズとクレアさんにも。
ぐわんぐわんと。
クリスティーナと同じように、真剣な表情で頷きを返すローズとクレアさん。
さすがは、パーティーメンバーである。
この短い期間でも確かな絆ってやつが、俺達の間にはちゃんと生まれていたらしい。
ややあって、クリスティーナが声を張る。
いやいや、張っちゃダメでしょ。
「控えなさいッ!! あなた達が剣を向けている相手は、この聖女クリスティーナが認めし、救いの御手です。今すぐその無粋な剣を降ろしなさい」
ダンジョンに響く、凛としたクリスティーナの声。
……おう。全然アイコンタクト通じてなかったわ。
「アッシュ?」
「俺も先ほど聞いたばかりだ。……とにかく剣を降ろせ」
その言葉で、イケメンどもが俺に向けていた剣を降ろす。
アッシュと呼ばれた王子様系イケメンはきっとパーティーリーダーなのだろう。
短いやりとりだったが、そういえるだけの雰囲気があった。
「聖女クリスティーナ、貴方がそう言うのであれば我々はそれに従いましょう」
「わかれば良いのです。敬虔な使徒アッシュ」
ニコリと微笑むクリスティーナの姿は、聖女のそれだ。
場所がダンジョンではなく、教会や聖堂などであったら神聖さを感じていたかもしれない。
「 しかし、そこの御手は灌頂を経てなったワケではありません」
「……何が言いたいのですか?」
「聖女クリスティーナ、我々も貴方の意思は尊重したい。
だからといって、清鎖……いえ、教会としてはハイそうですかと認める訳にはいきません。
ですから、この話は一度持ち帰り、報告をさせて頂きます」
どうやら荒事なく、お帰り頂けるようだ。
となれば逃げだす必要もなく、あとはイケメンどもを気持ちよく見送るばかりである。
さぁ、お帰りはあちらですよ。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよっ!」
と、ここでローズさんが吠える。
え、なんでだよ。せっかく、上手いこといきかけてたじゃん。
「……君は?」
アッシュがローズに向かって鋭い視線を送る。
しかし、そんな視線など意に介せず、とばかりに口を開くローズさん。
「わたしはグレース王国第一王女、シャーロット・グレースよっ!」
「……っ」
イケメンどもがざわめく。
「おいおい、マジかよ」「なんでダンジャンなんかに王女が?」「本物か?」
とかなんとか、そんな感じ。
ローズの後ろから前へ出たクレアさんが、その豊満に実った胸元から何かを取りだす。
プルンと揺れる双丘から姿を現わしたそれは、キラリと光る印ろ……ではなく、黄金製のブローチ。
楕円形に王家の紋章なのか、黒く光沢のある細かい細工、さらにその中心部には赤い大きな宝石が、太陽の陽を受けて輝きを放っていた。
「これが王族の証、ロイヤルワラントです」
と言うと、クレアさんはブローチを掲けてみせる。
それを受けて驚きの表情を浮かべるアッシュ。
「その魔結晶に紋章、確かにグレース王家の物……」
その言葉に満足したのか、一つ頷いてローズが口を開いた。
「ええ、そのグレース王国第一王女がこの彼を救いの御手と認めるわっ。それでもまだ文句があるのかしら? もし、これ以上彼を侮辱する気なら許さないわよ」
……マジかよ、やまださん侮辱されていたの。
衝撃の新事実だわ。
「シャーロット王女の言う通りです。あなた方の態度は御手に対するものとは到底思えません」
クリスティーナも続く。
どうやらやまださんは、本当に侮辱を受けていたらしい。
全然、気がつかなかったわ。
むしろ、お帰り頂ける事に喜びすら感じていたよ。
片や王女様、もう片方は聖女様ときて、俺はフリーターだ。
これが社会経験の差というやつなのか。
まさか、異世界に来てそれを感じるとは思ってもいなかったわ。
「確かにシャーロット王女、聖女クリスティーナが言われる通り、些か礼を欠いていました」
などと、言うが否や。
イケメンどもは、息を合わせたように膝を地につけ軽く頭を下げる。
その姿が優雅だなんのって。
やられた側であるやまださんが、ちょっと悔しくなってしまうのは何でだろうね。
これがイケメンの、アクティブスキルってやつなんだろう。
やっぱイケメンってズルいよな。
「しかし、我々も教会にその身を置く者。一存では判断しかねるのもまた事実……」
「まぁ、いいわ。帰って聖女の神託をこのシャーロット・グレーズが認めたと伝えなさいっ」
堂に入った王女様モードのローズがそう言い放つと。
イケメンどもは短く「わかりました」と返事を返して、ダンジョンの出口に向かって帰っていった。
これでようやく、ダンジョン攻略を進められそうだ。
やまださんは逃げるぞ。
こんな修羅場からは、とっと逃げてやるんだから。
といってもさすがに、パーティーメンバーを置いて一人で走りだす訳にはいかない。
さらに目の前には剣を抜いたイケメンどもが。それも、その切っ先は俺に向けている。
さすがに大蛇のお腹から出てきた彼は、剣を抜いてはいないようだけど。
しかし、この障害物を何とかしなければ、上手いこと抜け出せないのではないだろうか。
ここはひとつ、信頼のアイコンタクトでタイミングを合わせてヨーイ、ドンするしかないだろ。
(クリスティーナ、クリスティーナ……)
やまださんのつぶらな瞳を、ぐわんぐわんと動かせてアイコンタクトを送る。
おっ、気づいたようだ。
 クリスティーナは、俺のアイコンタクトに真剣な表情で頷きを返す。
続いて、ローズとクレアさんにも。
ぐわんぐわんと。
クリスティーナと同じように、真剣な表情で頷きを返すローズとクレアさん。
さすがは、パーティーメンバーである。
この短い期間でも確かな絆ってやつが、俺達の間にはちゃんと生まれていたらしい。
ややあって、クリスティーナが声を張る。
いやいや、張っちゃダメでしょ。
「控えなさいッ!! あなた達が剣を向けている相手は、この聖女クリスティーナが認めし、救いの御手です。今すぐその無粋な剣を降ろしなさい」
ダンジョンに響く、凛としたクリスティーナの声。
……おう。全然アイコンタクト通じてなかったわ。
「アッシュ?」
「俺も先ほど聞いたばかりだ。……とにかく剣を降ろせ」
その言葉で、イケメンどもが俺に向けていた剣を降ろす。
アッシュと呼ばれた王子様系イケメンはきっとパーティーリーダーなのだろう。
短いやりとりだったが、そういえるだけの雰囲気があった。
「聖女クリスティーナ、貴方がそう言うのであれば我々はそれに従いましょう」
「わかれば良いのです。敬虔な使徒アッシュ」
ニコリと微笑むクリスティーナの姿は、聖女のそれだ。
場所がダンジョンではなく、教会や聖堂などであったら神聖さを感じていたかもしれない。
「 しかし、そこの御手は灌頂を経てなったワケではありません」
「……何が言いたいのですか?」
「聖女クリスティーナ、我々も貴方の意思は尊重したい。
だからといって、清鎖……いえ、教会としてはハイそうですかと認める訳にはいきません。
ですから、この話は一度持ち帰り、報告をさせて頂きます」
どうやら荒事なく、お帰り頂けるようだ。
となれば逃げだす必要もなく、あとはイケメンどもを気持ちよく見送るばかりである。
さぁ、お帰りはあちらですよ。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよっ!」
と、ここでローズさんが吠える。
え、なんでだよ。せっかく、上手いこといきかけてたじゃん。
「……君は?」
アッシュがローズに向かって鋭い視線を送る。
しかし、そんな視線など意に介せず、とばかりに口を開くローズさん。
「わたしはグレース王国第一王女、シャーロット・グレースよっ!」
「……っ」
イケメンどもがざわめく。
「おいおい、マジかよ」「なんでダンジャンなんかに王女が?」「本物か?」
とかなんとか、そんな感じ。
ローズの後ろから前へ出たクレアさんが、その豊満に実った胸元から何かを取りだす。
プルンと揺れる双丘から姿を現わしたそれは、キラリと光る印ろ……ではなく、黄金製のブローチ。
楕円形に王家の紋章なのか、黒く光沢のある細かい細工、さらにその中心部には赤い大きな宝石が、太陽の陽を受けて輝きを放っていた。
「これが王族の証、ロイヤルワラントです」
と言うと、クレアさんはブローチを掲けてみせる。
それを受けて驚きの表情を浮かべるアッシュ。
「その魔結晶に紋章、確かにグレース王家の物……」
その言葉に満足したのか、一つ頷いてローズが口を開いた。
「ええ、そのグレース王国第一王女がこの彼を救いの御手と認めるわっ。それでもまだ文句があるのかしら? もし、これ以上彼を侮辱する気なら許さないわよ」
……マジかよ、やまださん侮辱されていたの。
衝撃の新事実だわ。
「シャーロット王女の言う通りです。あなた方の態度は御手に対するものとは到底思えません」
クリスティーナも続く。
どうやらやまださんは、本当に侮辱を受けていたらしい。
全然、気がつかなかったわ。
むしろ、お帰り頂ける事に喜びすら感じていたよ。
片や王女様、もう片方は聖女様ときて、俺はフリーターだ。
これが社会経験の差というやつなのか。
まさか、異世界に来てそれを感じるとは思ってもいなかったわ。
「確かにシャーロット王女、聖女クリスティーナが言われる通り、些か礼を欠いていました」
などと、言うが否や。
イケメンどもは、息を合わせたように膝を地につけ軽く頭を下げる。
その姿が優雅だなんのって。
やられた側であるやまださんが、ちょっと悔しくなってしまうのは何でだろうね。
これがイケメンの、アクティブスキルってやつなんだろう。
やっぱイケメンってズルいよな。
「しかし、我々も教会にその身を置く者。一存では判断しかねるのもまた事実……」
「まぁ、いいわ。帰って聖女の神託をこのシャーロット・グレーズが認めたと伝えなさいっ」
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