現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~
陽の差すダンジョン・アルカン2
屋根など天井を塞ぐものは存在せず、その中に入って見上げれば空が望むことだろう。
文字通り、陽の差すダンジョンというわけだ。
じゃあ、ご丁寧に通路を通らなくても石材の上を行けば、最深部までショートカット出来るのではないか?
と、一瞬邪な考えが浮かんだが、それはすぐさま消え去った。
なにせ、目の前の壁は優に百メートルを超える高さだ。
そんなのをよじ登って、ダンジョンの最深部に当たる中心地へと向かうことは、到底出来そうに思えない。
見上げてみるに、その頂上部は薄っすらと霞がかっている。
例え世界的なロッククライマーであっても、これを登るのは無理ではないだろうか。
もし、飛行魔法なんて物があれば、可能かもしれないが。
今は無い物ねだりをしていても仕方がない。
ここは正攻法で踏破していくしかないのだろう。
それに俺は高所恐怖症だ。できれば足を地につけて進んで行きたい。
あんな高い所ではきっと、ヘッピリ腰のうえ、生まれたての子鹿のようにプルプルと震えてしまうこと間違いなし。
「ほぇ……ご主人様、大きいですね」
ダンジョンを覆う壁を見上げて、クリスティーナが言葉を漏らす。
「ああ、真近で見ると迫力が違うな」
確かに、クリスティーナが言った通り大きい。
いや、大きすぎる。とてもじゃないが、人の手で造られた物とは思えないほどだ。
現代日本の技術力を持ってすれば、やって出来ないこともないと思うが。
それでも、国の総力を挙げた一大プロジェクトとなるだろう。
それを日本よりも遅れた文明レベルのこの世界で、作り上げるのは絶対に無理だ。
いや、魔法なんてファンタジー満載なものがあるのだから、不可能とは言いきれないのか。
しかし、これは人の手ではなく、もっとこう……より大きな存在の影を感じてしまうのは。
この迫力に飲まれてしまっているからだろうか。
「このダンジョンは、太古の昔に巨人族が造りだしたと言われているわ」
と、ここでダンジョンを見上げている俺達にローズさんからのお声がけ。
まるで、心を読まれたかのようなナイスタイミング。
なにその中二心をくすぐるワードは。
ファンタジー世界では、ドラゴン、エルフに並ぶパワーワードだろう。
そんなのを聞いてしまったら、遠い昔に封印された漆黒のナニヤラが復活してしまっちゃうよ。
「巨人族ですか、それは一度見てみたいですね」
滾る心を抑えながら、冷静に返す。
「それはムリよ。だって、巨人族はとうの昔に絶滅したと聞いているわ」
えっ……まじで。
全滅か……そっか、全滅しちゃったのか。
幼少頃からの夢だった、巨人族の肩に乗ってキャッキャウフフは露と消えてしまった。
が、しかし、ここはファンタジー溢れる世界である。
巨人族以外にも、まだ見ぬパワーワードがきっとあるはずだ。
もしかしたら、他に思い描いた夢は叶うかもしれない。
よし、やる気がでてきたぞ。
山田さん頑張って、ダンジョン攻略しちゃうわ。
「さぁ、ダンジョンに潜ろう!」
クリスティーナ、ローズ、クレアさんに呼びかける。
「はいっ」
「もちろんよっ」
「準備はできています」
三者三様の返事だってけど、元気よく返してくれた。
それと同時に、俺たちはダンジョンの入り口へ向かう。
迷宮都市と同じように、二人の衛兵が立っているあの場所がそうだろう。
確かあれは、ダンジョン内への立ち入りを防ぐものではなく、内部から魔物を出ないようにするものだったな。
しかし、まぁ。二人程度の衛兵で大丈夫なものなのだろうか。
などと、考えつつ。
ダンジョンの入り口へその歩を進めていると、
周りにいる冒険者の中でも、一際目立ったパーティーが近づいてきた。
人数は五人、その全員が白銀の軽甲冑を見に纏っている。
パーティー名をつけるなら、きっと、『シルバーソード』とかナントカ。
見るからにキラキラと輝いていて、とてもお高そう。
その装備一つで、誰かの人生が簡単に買えてしまうそんな予感。
先頭を歩くのは、長髪に金髪の王子様系イケメン。
背景に咲くお花が見えてしまうのは、西洋系イケメンの成せる業。
対して俺の背景には……やめておこう。
わざわざ、自らダメージを負いにいく必要はない。
しかし、生まれ持ったデバフの解除ってどうやるんだろうな。
当の王子様系イケメンは、俺達の前まで来て止まると。
じっと目線を向ける。
最初は絡まれるかと思っていたが、どうやらそうではないようだ。
俺のことなどアウト・オブ・眼中。その目線の先にはクリスティーナが捉えられていた。
この王子様系イケメンとクリスティーナは知り合いなのか?
目線を向けられた方のクリスティーナといえば、きょとんとした様子。
そして、王子様系イケメンが口を開く――
「こんな場所でまさかと思っていましたが、やはり貴方は聖女クリスティーナ様ですね」
「現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
異世界の物流は俺に任せろ
-
56
-
-
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
-
127
-
-
ダンジョン・ニート・ダンジョン ~ダンジョン攻略でお金が稼げるようになったニートは有り余る時間でダンジョンに潜る~
-
22
-
-
外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜
-
101
-
-
見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
-
71
-
-
テイマーと錬金術の職業で冒険したい!
-
26
-
-
異世界でもプログラム
-
59
-
-
元病弱少年の領地開拓
-
44
-
-
公爵の長男に転生したけど、職業スキルがスライム従魔師だったので、王太女との婚約を破棄され追放されてしまった。
-
20
-
-
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
-
109
-
-
エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
-
56
-
-
魔眼使いは冒険者に憧れる
-
86
-
-
痴漢されている美少女を助けたら一緒に登下校するようになりました
-
30
-
-
異世界なう―No freedom,not a human―
-
75
-
-
俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。
-
5
-
-
元勇者だけど可愛くない後輩に振り回されてます。
-
6
-
-
ロマン兵器ヲ愛シ者、彼方ナル世界ヘト転生ス
-
2
-
-
転生少女は自由に生きたい
-
1
-
-
能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜
-
83
-
-
超絶コミュ力の妹と陰キャの俺、そんな妹に突然告白され、俺の高校生活がとんでもない事になった。
-
3
-
コメント