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現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~

私は航空券A

ダンジョンと集落2

 チュン、チュンと、スズメに似た何かの鳴声が朝を告げる。


 どうやら昨日は、飲み過ぎてしまったようだ。


 頭に走る、この頭痛が何よりの証拠。
間違いなく、あのお酒のせいだろう。


 シュワ、シュワとした発泡性に琥珀色。


 ビールのように、グイグイといってしまったのが、いけなかったらしい。
似ているのは喉越しと味だけで、思いほかアルコール度数が高かったようだ。


 やけに酔いが早いなと、思ったところまでは覚えているが。
いかせん、その先がまったく記憶にない。


 どうやって、この宿に帰ってきたかも覚えていない始末だ。


 兎にも角にも、この頭痛を治めることが今一番に必要とされているところ。
先日、初めて使用した回復魔法を使ってみることに。


 頭に手を当てて、「とふぁっあ」と一つ。


 前回と同様、柔らかな光が頭部全体を包み込む。
すると、あっという間に頭痛は遥か彼方。頭痛薬も真っ青な効果だ。


 『アイテムパック』から、スマホを取り出して時間を確認してみれば、午前八時頃。
飲みすぎたとはいえ、盛大に寝坊はしてない様子に一安心といったところだ。




「ん……」




 ベットにかかる掛け布団、その右側から聞こえてきた自分のではない人の声。
よく見てみれば、掛け布団にふっくらとした盛り上がりが見てとれる。


 およそ、人が一人分が寝転べば、出来上がるであろうその膨らみ。


 おそるおそる、掛け布団をめくってみれば。


 艶やかな金髪がパラリと揺れ、その姿を覗かせる。


 お布団の中からあらわれたのは、すやすやと気持ち良さげに寝息を立てたローズさん。


 完全に思考がフーリーズすること数分。


 とりあえず、捲りあげた掛け布団を元の位置へと戻す。
しかし、それで元には戻らないのが今の現状。


 ……おう、マジか。マジなのか。
ついに、俺も大人の階段を登ってしまったのか。


 いや、そんなまさか。


 自身の過去を振り返ってみて。
そんな大それたことが出来ないのは、自分自身が一番わかっている。


 伊達に、信頼と実績の童貞じるしを掲げてはいない。


 だからと言って、絶対にないとは言い切れないのが、お酒の怖いところ。
グルグルと堂々巡りのような思考が続くこと、更に数分。


 モゾモゾと、お布団から顔をだすローズさん。


 ついに、お目覚めのご様子。


 心の準備などつくはずもない。童貞野朗としては最高にあたふた。
しかし、外面だけはどうにか取り繕って、ローズさんを黙って見つめるばかり。


 ここで声などでもかけようものなら、上擦ってしまうこと必至。
今できる最高の虚勢と、いったところだろう。


 そして、当のローズさんといえば。


 寝ぼけ眼で、部屋の中をキョロキョロと見回して視線が合えば、スッと逸らされた。




「……ローズさん?」




 勇気をだして、若干上擦りながらも、ローズさんへお声がけ。




「っ……」




 ビクリと、震える華奢な肩。


 そのお顔は端から見てわかるくらいに、真っ赤だ。


 気まずい沈黙に抗えるはずもなく、流されるまま幾ばくか。


 俯いていたローズさんが、スッと立ちあがる。




「……やっ、や、やどの……や、宿の前で待ってるわっ」




 と、言い終えるかいなや、クルリと踵を返してドアの外へ走りだした。


 それに伴って、ローズのスカートがふわり舞いあがる。
しかし、今の俺には中身を確認する余裕などなく……いや、やめておこう。


 見てしまった自分に、ウソはつけない。


 本日のパンツは、フリルのついた薄いピンク。


 繰り返す、本日は薄いピンクであります。




















 裏井戸で手早く身支度を済ませて、宿の前へと向かう。
向こう数日間は部屋をとっている都合、部屋を引き払う必要もなく、そのまま出てきた形だ。


 ローズから指定された宿屋の前で待つこと、10分と三十秒。


 どうやら、向こうも準備が終わったらしい。




「あ、あの……そ、その、待たせたわねっ」




 やや、緊張を思わせるその面持ち。




「そ、そんなことないアルよ。お、れも今来たところだからっ」




 それ以上に緊張していたのは、この俺。
 一体、何人だよって、心の中で自身に一人突っ込みをいれる。


 した・・のか、して・・いないのか。
真実は失われた記憶と共に、全ては闇の中へ。


 さすがの回復魔法も、失われた記憶までは回復してくれなかったようだ。




「……と、とりあえずダンジョンへ向かいましょうか?」




「そ、そうねっ。それがいいわっ」




 今はアレだ、アリナリーゼから頂戴した課題に集中しよう。


 そうだ、それがいい。


 ダンジョンに潜って、魔物を狩って、お宝を探そう。


 もしかしたら、冒険という刺激がよくわからないナントカ神経を刺激して、お酒と一緒に消え去った記憶も戻るかもしれない。


 刺激療法げんじつとうひ一縷いちるの望みを託し、ダンジョンへと歩を進めようとした時だった。




「ご、ご主人様ぁっ!」




 声がする方へ、振り返ってみれば。


 そこに見えたものは、迷宮都市でお留守番しているはずのクリスティーナだった。





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