現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~

私は航空券A

ローズのお願い6

「ば、化け物かよ……」




 俺達を囲む傭兵団リーダー、ケロノアが驚愕の表情で言葉を漏らす。


 自身もまさか、空振りをした衝撃で、こんな溝が出来るとは思ってもいなかった。


 しかし、これは好機かもしれない。


 驚き固まったケロノアの腹部に向けて、戦斧の柄を打ち込む。


 隙だらけだったせいか、すんなりと命中する。


 ドゴッと、鈍い音を立ててケロノアは、錐揉みしながら吹き飛んでいった。


 10数メートルは、飛んでいったんじゃないだろうか。


 それを見た、他の団員が後ずさる。




 リーダーがいとも簡単に倒されるのを目の当たりにして。自分達では勝てないと、判断でもしたのだろうか。誰も彼もが、ひどく引き攣った顔だ。


 もう一押しと、いったところ。


 適当な方向へ向けて、もう一度、戦斧を振るう。
刃が風を斬り、その衝撃波が地面を大きく抉りとる。


 そして、先程と同じように、溝が地面に生まれた。




「実力の差は、明らかだっ! 退けば、手出しはしない。それでも、やると言うのであれば、容赦はしないぞ!」




 と、大声でハッタリを一つ。


 どうだ……、これで退いてくれないかな。


 チラリ、様子を伺えば団員同士、顔を見合わせている。


 すると、ここで声があがった。




「ひ、退くぞ! た、退却だっ」




 鶴の一声、誰かがそう叫ぶと、一斉に傭兵団は走りだす。


 かくして、傭兵団は脱兎のごとく、視界から消えていった。


 その様子を見て、ローズ達が俺の元へ近寄ってきた。




「さ、さすがは、私が見込んだ男ねっ!」




 と、ローズさん。


 一体いつ、見込まれてしまったのだろうか。




「ご主人様、ご無事ですか?」




「ああ、この通り何ともないよ、クリスティーナ」




「あれだけの人数をほぼ無傷で、撃退してしまうとは……さすがです、ヤマダ様」




 クレアさんからも、お褒めの言葉を頂戴してしまった。


 心なしか、見つめる目がキラキラとしている。
もしかして、好感度上昇のお知らせだろうか。




「ローズさん、これが言っていたあの・・?」




「ええ、間違いないわっ。お姉様からの刺客よ」




 やはり、姉からの刺客との事。
しかし、アレだ。毎度、撃退するにも限度がある。


 根本的に、解決するべきなのではないのかと思う。
異母とはいえ、血を分けた姉妹だ。その辺、話し合って円満解決できないのかな。




「話し合いで、解決しないものなのですか?」




「そんなのはムリよっ、だって証拠がないのだもの。問い詰めたところで、シラをきられるに決まっているわ」




 その様子をみるに、どうやら一筋縄ではいかない人物のようである。


 しかし、証拠ねぇ……証拠っと……、あったわ。




「証拠なら……、あそこに転がっていますよ」




 俺が指した先に、傭兵団リーダーが泡を吹いて転がっている。
どうやら、逃げる際に置いていかれたらしい。


 可哀想なケロノアさん、団員の人望はそこまで厚くなかったようだ。










 失神していたケロノアに、クリスティーナが回復魔法をかける。
もちろん、登山用ロープで簀巻きにすることを忘れない。




「へぇ、クリスティーナ。回復魔法使えたのね、すごいじゃない」




 その様子を見て、ローズがそんな事を言っていた。
もしかしたら、回復魔法を使える術者は少ないのだろうか。


 ややあって、ケロノアの意識が戻る。




「うっ……」




 さて、これから尋問をして証言を得なければいけない。


 相手は仮にも、傭兵団のリーダーだ。


 果たして、そう簡単に口を割ってくれるのだろうか。




「雇い主を答えなさい。素直に答えるなら、生かしておいてあげるわっ」




 目覚めて早々、ローズが問い詰める。


 おう、答えなきゃ殺しちゃうのかよ。


 ちょっと物騒ですよ、ローズさん。




「……答えたところで、どの道殺される」




 口封じってやつだな、きっと。
海外ドラマとか映画で、よく見るじゃんね。




「殺しはしないわっ、だって大事な証言者だもの」




 確かに、ケロノアは大事な証言者だ。
ここで、証言を得るのと、得ないのでは結果は大きく違ってくる。


 なにせ、村まるごと一つ使って、罠にはめようとしてくる相手だ。
証拠の一つでもなければ、相手にされないだろう。


 と、ここで。


 ある物が、目に映る。


 ケロノアのすぐ横に、キラッと光るコインのようだ。


 ポケットからでも、落としてしまったのだろうか。


 拾い上げてみると、金貨みたい。
だけど、俺が持っている大金貨よりも、一回り小さいな。


 しかし、そこに彫られた意匠は凝っていて、中々の一品だ。量産品の雰囲気ではない。


 俺が持つコインに気がついたのか、ローズが声をあげる。




「そ、それは……、ちょっと、見せてもらえるかしらっ?」




 コインを渡し、それを持ったローズが、




「っ……!」




 驚きの表情から、確信めいた表情へと変る。




「こ、これよ! これが証拠になるわっ」

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