現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~

私は航空券A

ローズのお願い4

「待ってたわっ!」




 着いて早々、元気なローズさん。


 それに引き換え、クレアさんのなんと、優しげなことだろう。




「おはようございます、ヤマダ様にクリティーナさん」




 何故、クレアさんが、俺だけつけなのかはわからない。


 しかし、今は、こんな美少女にお金を払わずにして、様つけで呼んでもらえることの悦に浸ろうと思う。


 きっと、歌舞伎町であれば諭吉さんが、かかると思うんだ。




「おはようございます、お待たせしちゃいましたか?」




「おはようございますっ、ローズさん、クレアさん」




 クリスティーナも挨拶を交わしたところで、




「いいのよっ、私たちが、ちょっとだけ早く来てしまっただけだからっ」




「と、言っていますが。夜も明けきらぬ、前からローズ様が出発すると騒ぐもので……」




 と、クレアさんが突っ込む。


 よく見てみれば、ローズの目が少し赤い。
もしかすると、昨日はあんまり、寝ていないんじゃないだろうか。




「ク、クレアッ、余計なこと言わないのっ!」




 すごく、慌ててるローズ。その姿を見るに、図星を突かれてしまったのだろう。
しかし、ローズとクレアさんって、どんな関係か気になってしまうな。


 仮にも、ローズは王女なワケだし。


 どこの国の王女かは、わからないけどさ……。


 そもそも、ここがどこの国かわかってないのは、さすがにマズイ気がしてきた。
今日日、迷子だって自分のいる国くらいわかっている。


 もし、ここはどこの国ですか? 


 なんて聞こうものなら、もれなく可哀想な子を見る目で見られちゃうだろ。




「ど、どうしたの? そんなに深刻そうな顔をして……」




「いえ、お気になさらずに」




 おふう、顔にでちゃってたか。




「乗り合い馬車停で待ち合わせは聞いていましたが、これに乗ってどこへ向かうのですか?」




「ポロロ村よ、馬車で半日といったところねっ」




 それから、詳しくローズが指名依頼されたと言う、内容を教えてもらう。
どうやら、その村ではゴブリンによる被害が相次いでおり、ホトホト困り果てているようだ。


 今回は、その駆除が依頼内容だという。


 内容がわかったところで、馬車が到着。


 他に乗客はいないらしく、貸切状態だ。
後ろの幌車に乗り込んで、馬車は目的のポロロ村へ向かって走りだす。


 カタカタと揺れるものの、想像していたよりも乗り心地はわるくない。




「あの、ローズさんとクレアさんはどういった関係なのですか?」




 気になっていたところをドンピシャ、質問するクリスティーナ。


 ローズは御者の方をチラリ、伺って話しだす。




「私の事は以前、話したわね。クレアは、近衛所属の護衛よ」




「それにしては、仲がよろしいようですが?」




 と、クリスティーナ。




「ええ、クレアとは幼少の時からの仲よ。俗に言う、幼馴染と言うのかしらね」




 なるほど、道理で仲が良いわけか。




「そ、そちらの、かっ、関係はどうなのかしらっ?」




「俺と、クリスティーナですか? どんな関係もなにも、大事なパーティーメンバーですよ」




 大事な・・・と言った部分に反応してか、クリスティーナがモジモジと俯く。


 心なしか、顔が赤い。


 もしかして、クリスティーナさん。お友達が少ないのだろうか。


 大丈夫、俺も少ないから。




「そ、そ、それならいいのだけれどっ」




 なにがいいのかサッパリだけど、本人がいいのなら、いいのだろう。


 こんなこんなで、パカパカと馬車は進む。


 途中、何度か休憩を挟みながら。


 お日様が真上にあがったお昼頃、目的の場所であるポロロ村に着いた。


 20世帯ほどの大きさだろうか、さっそく依頼主である村長の元へ向かう。




「ようこそ、ポポロ村へ」




 笑顔で迎えてくれたのは50代と思わしき男性。
背はあまり高くはないが、農作業で鍛えられた筋肉が印象的だ。




「さっそくだけど、現場を案内してもらえるかしら?」




 挨拶もそこそこに、開口一番、ローズが案内を村長へ頼む。
その姿は、やる気がみなぎて思える。




「さすがは冒険者の方々、その勤勉さに敬服いたします。ええ、わかりました。こちらです」




 着いて早々、村長の案内で、ゴブリンが出没するという現場へ。


 村か外れ、20分くらい歩いた先に、その場所はあった。


 なんの変哲もない草原、馬車で走ってきた道と大差ない場所だった。


 こんな所に、ゴブリンが出没するのだろうか。




「本当に、ここで合っているのかしら?」




 ローズが、疑問を口にする。


 どうやら、そう思っていたのは、俺だけじゃないらしい。




「……わ、悪いが、これも全て村の為なんだ」




 そう言った、村長が突然、走りだす。


 呆気にとられその姿を見ていると、鎧が擦れる音と共に、武器を持った男達があらわれた。


 数にして30人くらいだろうか、俺達を取り囲むように立ち並ぶ。


 ゴロツキと言うよりは、どこぞの傭兵団のような格好だ。




「ハメられたわねっ」




 と、言うとローズは腰にかけた剣に手を伸ばす。




「ええ、そのようです」




 なんて答えたけど、まさか村ぐるみとは思わなかった。


 色々と、大事な予感がする。




「シャーロット王女。アンタには恨みはねぇが、ここで死んでもらうぜ」




 そう言った、リーダーらしき男が、腰の剣を引き抜く――。



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