現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~
送還
それにもめげず、回復魔法を施すクリスティーナさん。
マジ、聖女。
そして、倒れた獣人の少女。
見たところ、十代半といった感じ。
青色の髪が顔を隠して、よくわからないが、美形を思わせる雰囲気だ。
身に着けている装備は、冒険者のそれだけど。
ローズ達が身に着けていた物に比べると、お世辞にも上等な物だとは思えない。
どういった経緯で、この少女がトレインを引き起こしたかはわからないが。
まぁ、起きてから聞いてみればわかるだろう。
しかし、このファイアーウォールは、いつ消えるんだろうな。
かれこれ、数分はゴウゴウと燃え続けている。
あげた手も、そろそろダルくなってきたので、地面に座り消えるのを待っている状態だ。
「んっ……」
「ご、ご主人様、意識が戻ったようですっ」
さすが、聖女様印の回復魔法である、その効果は抜群のようだ。
「ここは……はっ、トレインは、トレインはどうなったニャ」
あたりを忙しなく、キョロキョロと見わたす獣人の少女。
語尾からして、彼女はきっと猫系の獣人なのだろう。
もし、これで犬の獣人だったりしたら、やるせない気持ちで一杯になってしまう。
「もう大丈夫ですよ、トレインは、ご主人様の魔法で防ぎましたから、案心してください」
と、優しく微笑んで語りかけるクリスティーナ。
骸骨に表情なんてないんだけれど、きっと微笑んでいるはず。
「ひっ、ひっ……スケルトン!?」
クリスティーナを見た、少女の顔が真っ青に染まる。
「だ、大丈夫だ。クリスティーナ……いや、このスケルトンは良いスケルトンだからっ」
クリスティーナ、ごめん。
出会って当初は、「良いスケルトン」を、バカにしてしまったけれど。
俺もついに、使ってしまったよ。
良いスケルトンだからって。
「ほ、本当かニャ? 襲ったりしないかニャ?」
「ええ、襲ったりしませんよ」
優しく答える、クリスティーナ。
「これは、油断させる罠かニャ? 後で、奴隷商に売り渡す気じゃないかニャ?」
「いいえ、罠ではありませんし。それに売ったりもしないから、大丈夫ですよ」
「……わかったニャ」
少しの不安を残しつつも、納得した様子の少女。
「良いスケルトン」で、納得してしまったのだろうか。
自分で言っておいてアレなんだけど。
初対面で信じてしまうのは、それはそれで、どうなのよと思わなくもない。
「助けてくれて、ありがとうニャ。わたしは、エルザニャ」
「俺はヤマダで、こっちはクリスティーナだ」
「よろしくね、エルザさん」
「しかし、アレはなんニャ?」
エルザが、ファイアーウォールを指さす。
「あんな魔法、初めて見たニャ。ずっと、燃えてるけど大丈夫かニャ?」
どうなんだろうね、いつ消えるのか俺も知りたい。
というか、そろそろ消えてほしい。
そして、ファイアーウォールを見つめること数分。
ようやく、その炎は勢いを弱め、徐々に消え始めた。
あれだけいた魔物は見る影もなく、残っているものがあるとすれば消し炭だけだ。
「それにしても、何でトレインなんか起こしたんだ?」
俺の質問に、エルザは今までピンと、立たせていた耳を前に倒す。
「それは聞くも涙、語るも涙の話ニャ……」
エルザの話を、簡単にまとめるとこうだ。
仲間とダンジョンを探索している途中、誤ってゴブリンの巣に入ってしまったエリザ一行は、その場から逃げだしたはいいが、大量のゴブリンに追われることになった。
そこからは良くある話。
仲間から見捨てられたエルザは、追ってくる大量のゴブリンから一人逃げることに。
結果、あのトレイン騒ぎとなったわけだ。
聞けば、ゴブリンの巣に入った原因はエルザにあったらしい。
なんとなく情景が思い浮かぶのは、なんでだろうな。
「でも、本当に助かったニャ。わたしが死なずに済んだのも、ヤマダ達のおかげニャ」
「旅は道ずれ世は情けって言うし、気にするな」
「よくわからニャいが、猫人族は、受けた必ず恩は返すニャ。迷宮都市に泊まるなら、ウチの宿に泊まるといいニャ」
「宿?」
「そうニャ、『猫のマタタビ亭』は迷宮都市でも一番の宿屋ニャッ! 自慢の料理、猫マンマを味わってほしいニャ」
「そうだな、泊まらせてもらうか……」
と、言いかけたときだった。
ふいに、ログが流れだす――
『残り時間がなくなりました。これより、送還を開始します――』
『3……2……1……』
ピッ。
意識は暗転し、気がつけば元の世界、あの公園の隅に戻っていた。
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