現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~

私は航空券A

冒険者の少女

「アンタ、誰よっ!」




 艶やかな金髪を、ポニーテルに結んだ少女が、その蒼い目で睨む。


 ダンジョンの入り口から、飛び出てきたのは向こうであって。
俺ではない。そのうえ、誰だと聞かれて何と答えれば良いのだろうか。




「ヤマダタケシです」




 とりあえず、本名などを答えてみる。




「クリスティーナです」




 リュックの隙間から、クリスティーナも続く。


 それを聞いて、ポニテ少女は少し思案顔だ。




「あまり見ない格好だけれど、もしかして冒険者かしら?」




  その辺、どうなんだろうな。


 まだ、経験は圧倒的に少ないが。
ダンジョンに潜ってるわけだから、冒険者と名乗っちゃってもいい気がする。


 まぁ、そう言ったほうが無難だろう。
フリーターですと、正直に言ったところで不信がられるだろうし。


 それに違う意味で、俺のHPも削られてしまう。




「まぁ、そんなところだ」




「その、従者ですっ」




 クリスティーナが、リュックの中から元気に答える。


 しかし、良く見ればポニテ少女も冒険者のそれだ。
シルバーで飾られた軽鎧に厚めのブーツ。腰には、細めの剣を携えている。




「わたしはローズよ。怒鳴ったりして、わるかったわ……しかし、ここはどこなのかしら。ダンジョンの中とは到底、思えないけど」




「ここは、ダンジョンではありませんよ」




 クリスティーナが、リュックからひょっこり顔をだして答えた。


 それを見た、ポニテ少女が腰の剣に手をおく、




「ス、スケルトンッ!」




 これは、ちょっとまずい雰囲気。




「待って、待ってっ」




 すかさず、間に入って説明をさせていただく。
かくかくシカジカ、まるまるウマウマ。


 とくに隠す必要性を感じなかったので、まるっと正直に。
その際に、「ぬおっ」と声をあげて一番驚いていたのは、クリスティーナだった。




「にわかには信じれない話ね……」




 当然だろ。俺が逆の立場だったら、異世界うんぬん言われたら。


 こいつ、ちょっとヤバイって思っちゃうもん。




「この際、そんな事はどうでもいいわ。あなた達、冒険者なら手を貸してもらえないかしら。お礼は、十分な額を用意するわ」




 ローズが話した内容によると、


 パーティーメンバーと共に、このダンジョンを探索途中、突如あらわれた冒険者崩れの無法者アウトローに襲われて、パーティーは半壊。


 それでも何とか、仲間達の手によって逃げだしたローズは、助けを呼ぶ為に必死に走っていると、


 気がつけば、ダンジョンの外に。


 つまり、ここ行き着いたというワケだ。


 そして、その手助けを俺たちに求めているらしい。


 さて、どうしたものか。


 相手は冒険者崩れの無法者アウトロー
一角豚やゴブリンなどと、比べても危険そうだ。


 しかし、助けを求める美少女に、まさか断るなんて出来るわけがない。
やっぱり、男なら女の子の前では、カッコつけたいよな。


 決めた、助けに行こう。




「クリスティーナ。助けに行こうと思うけど……」




「もちろんです、行きましょうっ!」




 言い終える前に、快諾を得られた。


 さすがは、元聖女様。
人助けと聞いて、迷いはないようだ。








「なにも見えないのだけれど、本当にダンジョンの入り口があるのかしら?」




 ダンジョンの入り口を前にして、ローズがつぶやく。




 あれ、そうなのか? 


 俺とクリスティーナには見えてるのに、ローズにはコレが見えていないようだ。
この違いって、なんだろう。


 だけど、今はそんなことを考えている場合ではないな。
アイテムパックから、『始まりの剣』という名のバッドを取りだして、


 準備はオーケーだ。




「よし、いこう!」




 ダンジョンの中へと、足を踏み入れる。






 ピッ。




『【境界の回廊】の攻略が開始されました。』




 ピッ。




『攻略終了までの残り時間: 120:00:00』




 先ほどまでいた公園から一転して、景色がぐにゃりと変る。


 そこに広がっていたのは、神殿を思わせる遺跡群。
それは、白い石材で造られおり、所々朽ち落ちた跡が見られる。


 俺達が立つ、石畳が中央の一際大きい建物へと続く。
石畳の両脇に等間隔で並ぶ、モンスターを象った石像が印象的だった。


 時間があれば、じっくり鑑賞したい逸品だ。




「本当にダンジョンに繋がっていたのね……」




 その変化に、驚きを隠せないローズ。


 しかし、今は時間が惜しい。
せっかく助けると決めたのだから、間に合わせたい。


 着いたら全滅してましたとか、最高に目覚めがわるいだろ。




「パーティーメンバーのところまで、案内を頼む」




 そう言うと、ローズは頷き、




「あの中央の神殿から中に入るわ。ついてきて」




「ああ、わかった」




 それを合図に、俺達はダンジョンに向けて走りだす――

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