現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~

私は航空券A

ダンジョン攻略5

「そ、それ……ゴーレムです」




 ゴーレムって、アレだよね。


 動く石像。知ってるよ、ゲームで見たことがあるもん。


 この物知りスケルトンさんめ。




 そういう事は、もっと早く言って……ぇぐおおおおおあああああああああっ。




 突如、動きだした右側のゴーレムは、


 外見ではおよそ、予想できない速さで俺を殴りつけた。


 その拳を全身で受け止めた俺は、ピンボールごとく吹き飛ぶ。




「ご、ご主人様あああっ!」




 クリスティーナの声が響く。


 全身粉砕骨折しても、おかしくない衝撃だった。


 俺がまだ小学生だった時分、軽トラに跳ねられたときの衝撃に似てる。


 地面に打ちつけられた俺は、二度ほど跳ねてようやく止った。


 残りHPは、どうだっ? 


 すばやく、自身のHPを表示させる。




 【HP:725/750】




 よし、まだ全然いけるぞ。
手足を動かして確認。大丈夫だ、どこも折れていない。




種族:ゴーレム
性別:男
レベル:12
HP:190
MP:0
STR:98
VIT:155
INT:0
DEX:35
AGI:57




 ゴーレムのステータスを表示させてみれば、
スライムさんがくれた経験値がなければ、一度退却も考えなければいけないレベル。


 しかし、大幅にレベルアップを遂げたレベルは今や37。
戦闘経験に乏しい俺でも、十分に圧倒できるハズだ。




「ご主人様っ、大丈夫ですか!?」




 心配そうな声をあげて、駆けつけようとするクリスティーナ。




「俺一人で、大丈夫だ。ここは、任せてくれ!」




 手でクリスティーナを制して叫ぶ。




「ご、ご主人様っ……」




 今のセリフは、決まった気がする。
ずっと、言ってみたかったセリフの一つだ。


 惜しむべくは、言った相手がスケルトンだということ。


 できれば、美少女がよかった。


 しかし、今は余計なことを考えている暇はない。


 目の前のゴーレムに集中しなければ。


 立ち上がり、転がったバット拾う。


 バットを構えながら、ゴーレムにゆっくりと近づく。
距離をとって、わかったことがある。


 このゴーレムは、近づかなければ攻撃をしてこないようだ。
もちろん近づかなければ、当然その先にある出口は通れない。




 結果は同じだが。射程範囲からはなれてしまえば、追撃がない分マシか。


 幸い動くのは、右側の一体・・だけだ。


 油断さえしなければ、きっと大丈夫。


 バットを握る手に力を込める。


 その時だった、


 左側に立つ、ゴーレムの目が赤く光る。


 ……マジかよっ。


 咄嗟に、ジャンプして回避。


 そこで俺は思った。人間が飛んだところで、たかが知れていると。
人の胴以上はあろう、ゴーレムの拳を避けれるものかと。


 しかし、結果はその予想を裏切って高く飛びあがった。


 どのくらいの高さというと、軽く三メートルは越えている。


 これが、レベル37の実力か。


 標的を失った、ゴーレムの動きが止まる。


 これならっ。


 落下しながら、バットを振り上げて。


 右側ゴーレムの頭に目がけて、振り落とす。


 バットがゴーレムの頭を捉えた。


 『フルスイング』を発動させて、そのまま、打ち抜く。


 手に伝わる感触は、石を打ち抜いたような硬いものではなく。
まるで雪を砕いたような、柔らかなものだった。


 頭部を粉々にされたゴーレムは、そのまま動かなくなる。


 どうやら、頭部が弱点のようだ。


 アレ、なんて言ってけ……ゴーレムの頭部かどこだかにある文字を、一字消してとかいうやつだろう。


 残ったゴーレムに向き合う。


 すでに射程範囲内に入っていたのか、ゴーレムの予備動作は完了していた。
繰りだされる拳に向かって、俺も『フルスイング』を発動させたバットを振る。


 バットにぶつかった、ゴーレムの拳が砕けた。


 足を踏ん張り、今度は頭だっ。


 レベルアップで生まれたMPの余力で、三度目の『フルスイング』を発動。


 拳を砕かれ、バランスを崩したゴーレムの頭部を砕く。




『経験値取得にボーナスがつきます。270の経験値を獲得しました。』


 ふう、無事に倒せたようだ。
レベルアップで得た力がこれほどのものとは、正直思わなかった。




「ごっ、 ご主人様あああっ。ご無事ですかあっ!」




 クリスティーナが抱きつく。


 その図は、さながら襲ってくるモンスター。


 完全に腰が引けてしまった。




「あ、ありがとう……」




「ご無事でなによりです。う、うううっ……」




 涙声を聞くに、本当に心配してくれていたようだ。
しかし、突然スケルトンに抱きつかれて、ビビッてしまうのは仕方ないよな。




 ゴーレムが守っていた門を通り、階段を下ると、


 その先に待っていたものは、真っ白な空間だった。


 唯一あるものは、中央に置かれた石碑だけだ。


 その石碑が光を宿す――




『始まりの洞窟ダンジョンRE、最深部へようこそ。』



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