現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~

私は航空券A

ダンジョン攻略4

 隙間から救出したスケルトンは、元聖女様だった。


 元聖女様が、その対極に位置するスケルトンになってしまった背景には、様々なドラマがあったであろうことは容易に想像できる。


 当初の印象は完全に逆転し、このスケルトンも苦労してきたのだなと。
同情的な気持ちになってしまった。


 そのせいか、俺に仕えたいという申し出も。
「無害であればいっか」、とばかりに承諾してしまった次第である。




「しかし、まぁ、何であんなところに挟まっていたんだ?」




 庭園さながらの階層をスケルトンと二人、歩きながら問いかける。




「……実は、スケルトンになる前は、神職についていました」




 クリスティーナの話をまとめるとこうだ。


 クリスティーナのことを、良く思わない神官の謀略によって呪いをかけられてしまった。
その呪いは肉を溶かし骨だけの姿、つまり人をスケルトンにする禁術だったと。


 スケルトンになってしまったクリスティーナは、町を追われ、追っ手から身を隠すためにダンジョンに入ったはいいが、崩れだした石材に挟まって動けなくなったようだ。


 ちなみに、ダンジョンではモンスターに襲われなかったらしい。


 同じモンスターという括りなのだろうか。




「そうか……なんか、まぁ。元気だせよな」




 思っていたよりも、大変そうな人生を歩んでいた。
もっと、こう。未練があって、成仏できないとかポップな感じを想像してたわ。




「……はい。ありがとうございます」




 当時のことを思い出してか、心なしに落ち込んで見えた。
スケルトンの表情が読めるわけじゃないけど、あからさまに肩が落ちてるからな。




 しかし、この庭園みたいな階層はすごく広い。
東京ドーム、何個分って広さじゃない。


 歩けど、歩けど、出口が見当たらない。
一体、どれだけ広いんだってね。 


 すでに、通ってきた道もわからなくなってきた。
これは、もう完全に迷子である。


 28歳にして、迷子とか本格的にどうしよう。


 そうか、こういうときはマップを使えばいいのか。


 マップを表示させると、今まで通ってきた道が映しだされている。
帰り道はわかった、今、知りたいのは進むべき道。


 しかし、表示されている面積と、マスクされている未踏破部分を比較してみても。
未踏破部分は、その三倍以上はありそう。


 この中から奥へと続く、出口を見つけるとなると。
なかなかと、骨が折れそうだ。




「ご、ご主人様。そこにスライムがいますっ!」




 クリスティーナが指で示しながら叫ぶ。


 ご主人様って、俺のことか。
一瞬、誰のことかわからなかったわ。


 クリスティーナが指す先には、わらび餅のようなプヨプヨとしたモンスターが。


 大きさは、バレーボールくらいだ。


 目や口などなく、想像していたスライムとちょっと違う。
全体的に濁っていて、正直いって可愛らしさが足りない残念な感じだ。




「めずらしいですね。スライムなんて滅多に見つけることは、できないんですよ」




 そうなのか? こっちの世界ではめずらしいモンスターじゃない。
まぁ、それもゲームの中の話だけど。


 スライムはとくに動くことも、ましてや、襲ってくる気配もみせずに止まったまま。
これなら、簡単に倒せてしまいそうだ。


 おもむろに近づいて、バットでえいっ。


 プチッ、という感触がバット越しに伝わる。


 すると、いとも簡単に潰れ液状になるスライム。


 あれ、もう倒せちゃったのか?




『経験値取得にボーナスがつきます。500の経験値を獲得しました。』




 倒せてしまったようだ。


 それにしても、経験値すごくないか。
今まで倒してきたモンスターに比べると、十倍近い。


 もしかして、スライムさん。
ものすごく、経験値が美味しいモンスターのようだ。




「ご主人様。そこにもスライムがっ」




 クリスティーナが指す方へいって、えいっ。


  プチッ。




「そ、そこにもいますっ」




  えいっと、 プチッ。




『レベルアップ。スキルポイント5獲得しました。』




 よく見れば、あちらこちらにスライムさんが。


 ……マジか。


 これは時間を割いてでも、狩るしかないな。
おいしい狩場を前にして、ネットゲーマーの血が騒いでくる。



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