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年下御曹司は白衣の花嫁と極夜の息子を今度こそ! 手放さない

ささゆき細雪

Chapter,1_09. たとえこの桜が散ったとしても

 カチャリ。
 ロビーで渡された鍵をつかって扉をあければ、目の前に清潔感のある白いシーツがピンと張られたおおきなベッドが置かれているのが見えた。
 そして、奥にははめ殺しの窓があり、分厚いガラスの向こうには学園都市一帯の夜景が顔をのぞかせている。

「でっかい窓だな……これ、昼間だったら大学のようすが丸見えだ」
「これからの季節は森の緑で隠れるから問題ないんじゃない? ほら見て、桜並木も上からだともこもこしてて面白いよ」

 淑乃に言われて視線を落とせば、ふたりで歩いていた桜並木のある場所が見える。
 演劇が行われていた小ホールの周囲はすでに照明が消えていた。それでも月が煌々と照っているからか、色素の薄い桜の花だけは夜闇でも映えていて、どこか妖艶な雰囲気がある。

「そういえばはじめて逢った夜も、桜がたくさん咲いてたね。八重桜だったけど」
「あ、ああ……結局のところ、彼氏云々ってのは嘘なんだろ?」
「ふふ。サクくんがお人好しで良かったー」
「こたえになってない」
「もう十二年もまえのことなんか忘れたわ」
「よしのっ」
「――すきだよ、サクくん」

 突然真面目な顔に戻って、淑乃は朔を翻弄させる。

「結婚なんて望まない。ただ、この桜が散ったあとも、傍で見守ってくれるだけでいいの」

 たとえこの桜が散っても、自分たちの関係を変えることはないと、淑乃は朔を改めて牽制する。

「でも……俺はよしのと結婚したい。いまの暮らしを壊したくないって気持ちもわかるけど……」
「あたしとサクくんが結婚するには多くの障壁が存在してる。まずはトーヤを説得させないといけないし、そっちだって、会社の後継者問題があ……」
「俺はよしのの気持ちをきいている」
「!」

 煩わしいことは後回しだと言いたげに、朔は淑乃をベッドのうえに押し倒す。両腕で彼女の華奢な身体を押さえつけながら、深いキスを与えれば、彼女は観念したかのように舌を絡めてゆく。

「んっ……サク、く」
「我慢できないよ、よしの」

 くたりと身体をしならせて、淑乃が朔の名を懇願するように呼ぶ。
 久々の情事を前に、頬を真っ赤にして、瞳を潤ませる彼女に、朔が勝ち誇ったように微笑を浮かべる。

「たとえこの桜が散ったとしても、俺の気持ちはもう、変えられないから」

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